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世界編
昔語り その1.後編
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さて、どこまで話したかな? ああ、一族の役割についてか。
さっきも言ったように、役割を果たすには、圧倒的な魔力が必要なんだ。ほら、他の国に行ったら魔術に頼ることができなくなるでしょ? だから我々はモノを従えて、排除すべき人物に対応するんだ。
だって、いちいち他国に移動した時に加護の申請をし直して、排除した後にまた新しい国で加護の申請をやり直すなんてこと、時間もかかるし、すんごく面倒だもんね。だから、魔術に頼らない使役物を使うことにしてるんだ。
ホント合理的な考え方だと思わない?
モノとは、時に動物や植物であったりもするかな。一番従わせやすいのは、君たちが蟲と呼んでいるモノだね。
ケンに手を引かれて砂漠の国アーリンに行ったのは、僕に合う蟲を探すためだった。
不思議なもので、どの蟲を従わせたいのか、その時の雰囲気とかで、自然とわかっちゃうんだ。
僕の場合は、君たちも知っての通り、サソリだった。
衝撃だったよ。数多くある蟲たちの中で、あの子だけが光り輝いていたんだ。
他の蟲たちが群れを成したり、使役してくれと言わんばかりににじり寄ってくる中で、あの子だけは特別な存在だった。
媚びもせず、群れることもせず、従うことを是としない。そんな孤高を醸し出す特別なモノだった。
この生き物を従わせたい、共に歩みたい。
この子を支配下に置ける存在になること。
それが幼かった僕が『シン』として生きていく自信に繋がると思った。
何度も失敗を重ねて、ついにあの子を従わせることができた日、僕は誇らしげに両親に報告しに行ったんだよ。
「父上、母上。見てください。この子がこれから僕を支えてくれるモノです」
自慢のサソリを得意げに披露しようとした謁見の間は、次の瞬間、地獄へと早変わりした。
この凶暴なサソリを使役できちゃうんだ、という驕りと、ちっぽけな自尊心を悟られてしまったのか、完全に支配下に置けていると思っていたサソリが暴れ始めたんだ。
僕は慌てた。サソリは、従わせようとすればするほど、僕の支配下から逃れようとして余計に暴れ続ける。こんなに手がつけれなくなるなんてこと、考えたこともなくて。
呆然としている僕の横を通り抜け、両親の周りにいた人々を次々になぎ倒していった。
最悪なことに、その勢いは止まる気配もなく、両親へと矛先が移動した。慌てて警備を呼ぼうとしたけど、サソリは待っちゃくれなかった。
腕の一撃で父上を、振り返りざまの尻尾で母上を跳ね上げると、二人とも人形のようにパタリと倒れて動かなくなった。
部屋の中にはサソリと僕だけしか居なくなってしまった時、ようやくその暴走が静まったんだ。
突然の出来事に、僕の頭がついていかなくてね。両親が倒れているのを、ただ黙って見ていることしかできなかった。
どれだけ時間が経ったのか、それがほんの数秒後のことだったのか理解はできなかったけど、父上がピクリと動くのを見たんだよ。
ハッとして駆け寄ると、父上は微かな息をしながら薄っすらと目を開けて、ぎこちなく笑ってくれた。
「私がこの国を守る役目はここで終わる。これからはアレクがエンリィを支えろ。お前には私以上の責任を負わせることになるな。国と世界を守ることがアレクの使命だ。脅威は全て排除。できるな?」
これが父上の遺言だった。
母上はと振り返ってみると、既に事切れているようで、体や頭が変な角度で曲がっていた。苦しまずに済んだのがせめてもの救いだったかもね。
こうして僕は、五歳でエンリィの王になったんだ。
ただ、いきなり両親と重臣たちが居なくなってしまったから、今まで頭を押さえつけられてきた連中が黙っていなかった。
確かに五歳児の言うことなんて聞くわけないだろうし。面白いようにいい奴と悪い奴がわかったよ。
父上の遺言通り、脅威は全て排除しなければならない。
だから僕の王としての最初の仕事は、サソリを使って悪い奴の首を刎ねたこと。あまりに始末し過ぎて、最後の頃にはいかに綺麗に首を飛ばすかって考えちゃったし。
それからはケンが僕の後ろ盾になってくれた。
常に一緒に行動してくれたし、一族の拠点も一時的にエンリィに置いてくれたし、国の運営も一族のみんなが代わりにやってくれた。
拠点は、僕がある程度成長して国を動かせるようになってから砂漠に戻っちゃったんだよね。まあ、これはケンが亡くなってからしばらく経ってからのことだったけど。
僕は八卦一族に育てられたといっても過言ではないかも。だから、国や世界を守るためにはケンや一族の助言は重要だと思っているんだ。
さっきも言ったように、役割を果たすには、圧倒的な魔力が必要なんだ。ほら、他の国に行ったら魔術に頼ることができなくなるでしょ? だから我々はモノを従えて、排除すべき人物に対応するんだ。
だって、いちいち他国に移動した時に加護の申請をし直して、排除した後にまた新しい国で加護の申請をやり直すなんてこと、時間もかかるし、すんごく面倒だもんね。だから、魔術に頼らない使役物を使うことにしてるんだ。
ホント合理的な考え方だと思わない?
モノとは、時に動物や植物であったりもするかな。一番従わせやすいのは、君たちが蟲と呼んでいるモノだね。
ケンに手を引かれて砂漠の国アーリンに行ったのは、僕に合う蟲を探すためだった。
不思議なもので、どの蟲を従わせたいのか、その時の雰囲気とかで、自然とわかっちゃうんだ。
僕の場合は、君たちも知っての通り、サソリだった。
衝撃だったよ。数多くある蟲たちの中で、あの子だけが光り輝いていたんだ。
他の蟲たちが群れを成したり、使役してくれと言わんばかりににじり寄ってくる中で、あの子だけは特別な存在だった。
媚びもせず、群れることもせず、従うことを是としない。そんな孤高を醸し出す特別なモノだった。
この生き物を従わせたい、共に歩みたい。
この子を支配下に置ける存在になること。
それが幼かった僕が『シン』として生きていく自信に繋がると思った。
何度も失敗を重ねて、ついにあの子を従わせることができた日、僕は誇らしげに両親に報告しに行ったんだよ。
「父上、母上。見てください。この子がこれから僕を支えてくれるモノです」
自慢のサソリを得意げに披露しようとした謁見の間は、次の瞬間、地獄へと早変わりした。
この凶暴なサソリを使役できちゃうんだ、という驕りと、ちっぽけな自尊心を悟られてしまったのか、完全に支配下に置けていると思っていたサソリが暴れ始めたんだ。
僕は慌てた。サソリは、従わせようとすればするほど、僕の支配下から逃れようとして余計に暴れ続ける。こんなに手がつけれなくなるなんてこと、考えたこともなくて。
呆然としている僕の横を通り抜け、両親の周りにいた人々を次々になぎ倒していった。
最悪なことに、その勢いは止まる気配もなく、両親へと矛先が移動した。慌てて警備を呼ぼうとしたけど、サソリは待っちゃくれなかった。
腕の一撃で父上を、振り返りざまの尻尾で母上を跳ね上げると、二人とも人形のようにパタリと倒れて動かなくなった。
部屋の中にはサソリと僕だけしか居なくなってしまった時、ようやくその暴走が静まったんだ。
突然の出来事に、僕の頭がついていかなくてね。両親が倒れているのを、ただ黙って見ていることしかできなかった。
どれだけ時間が経ったのか、それがほんの数秒後のことだったのか理解はできなかったけど、父上がピクリと動くのを見たんだよ。
ハッとして駆け寄ると、父上は微かな息をしながら薄っすらと目を開けて、ぎこちなく笑ってくれた。
「私がこの国を守る役目はここで終わる。これからはアレクがエンリィを支えろ。お前には私以上の責任を負わせることになるな。国と世界を守ることがアレクの使命だ。脅威は全て排除。できるな?」
これが父上の遺言だった。
母上はと振り返ってみると、既に事切れているようで、体や頭が変な角度で曲がっていた。苦しまずに済んだのがせめてもの救いだったかもね。
こうして僕は、五歳でエンリィの王になったんだ。
ただ、いきなり両親と重臣たちが居なくなってしまったから、今まで頭を押さえつけられてきた連中が黙っていなかった。
確かに五歳児の言うことなんて聞くわけないだろうし。面白いようにいい奴と悪い奴がわかったよ。
父上の遺言通り、脅威は全て排除しなければならない。
だから僕の王としての最初の仕事は、サソリを使って悪い奴の首を刎ねたこと。あまりに始末し過ぎて、最後の頃にはいかに綺麗に首を飛ばすかって考えちゃったし。
それからはケンが僕の後ろ盾になってくれた。
常に一緒に行動してくれたし、一族の拠点も一時的にエンリィに置いてくれたし、国の運営も一族のみんなが代わりにやってくれた。
拠点は、僕がある程度成長して国を動かせるようになってから砂漠に戻っちゃったんだよね。まあ、これはケンが亡くなってからしばらく経ってからのことだったけど。
僕は八卦一族に育てられたといっても過言ではないかも。だから、国や世界を守るためにはケンや一族の助言は重要だと思っているんだ。
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