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王宮編
94の1.何とかしたいっ!
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「うおりゃあっ!」
ルディがソンの懐に入って剣を突きつける。
ギーンーー鈍い鋼の音が響いて、剣を合わせた後、お互いの腕を伸ばしても届かないくらいの距離で睨み合う。
「クッソ重てぇなぁ、お前の剣。ヘヘッ、倒し甲斐があるじゃねえか」
「貴様に倒されるほど我は弱くない。ハエのように動き回る貴様には我の同胞が応対しよう」
ソンが左手を振り下ろし、彼の後ろに控えていた何匹かのトカゲが前に出てくる。その数ざっと四匹。
ノソリと近づくヤツらは、戦闘に入る前の布陣を敷くかのように、ジリジリと間合いを詰めて整列する。
チロチロと出る舌は、毒を被るかもしれないという恐怖を煽るように常に動いている。
四匹が一斉にルディに飛びかかれば、避ける隙もなく毒を被ってしまうだろう。
ルディばかりではなく、私たち全員に緊張が走る。
「やれ」
短く命令するソンの声には、何の感情も含まれていない。その場にある荷物を右から左に移すくらいの、そんな当たり前のことをしてのけるかのような声色だ。
合図と共に四匹のトカゲたちが動き出そうと体を沈ませる。
次の瞬間、なぜか右の二匹、左の二匹が互いにぶつかり合って絡まり合うように転倒していた。
「え? どうしたの? 何が起きたの?」
焦って尋ねる私に、ミリィちゃんが目を凝らして状況を説明してくれる。
「一瞬のことで私もビックリしましたが、ヒューズ様の両手の甲から光の縄みたいなのが出て、それがトカゲたちを縛りあげています。あっ、あぶな……」
四匹を一度に捕まえているせいか、ルディの方が力負けして態勢が崩れたようだ。
危ない、と思った瞬間、少しだけ縄が緩んだらしい。
左側のトカゲのうちの一匹が身をよじって戒めから逃れようと激しく暴れる。トカゲの体が器用に縄をすり抜けて、呪縛から離れようとしたその時、再び縄がググッと締まり、ギリギリのところで後ろ脚をしっかりと絡めてとった。
ドドンと倒れこむトカゲに引きずられ、またもや態勢が左側に大きく傾く。
しかし、ここが踏ん張りどころだと実感しているのだろう、必死に堪えて膝をつきながらも縄を引き絞り続けている。
肩で息をしながらも不敵に笑い、一度大きく息を吸って呼吸を整える。
「はぁぁぁっ……っしゃあっ!」
気合いを溜めてから一気に力を流しいれたのか、光の縄がカァッと輝きを増した。
ビギャアァァァ……
トカゲたちの鳴き声が聞こえ、その体が真っ二つに千切れ飛ぶ。光の縄がググッと締まり、トカゲの体を引きちぎって絶命させたようだった。
「やったあっ! ルディ、カッコいいっ!」
「すごいですね、あんな術式を手の甲に忍ばせていたなんて……」
小躍りして喜ぶ私と、感心して頬が上気しているミリィちゃん。それを呆れて見るハルが、油断するなと注意する。
「おいおい、手放しで喜ぶのはまだ早い。まだ一匹残ってるんだ。ヒューズはまだ危険なままだ」
そうだ、さっき緩んだ縄のせいで、一匹だけは完全に捕縛されているわけではなかった。脚に絡みついているだけなので、千切れ飛ぶのは脚の部分だけだ。
案の定、脚からドス黒い液体を撒き散らし、暴れ回っているトカゲが一匹いる。その目がギラリと凶悪な光を放ったかと思ったら、ルディ目がけて転がりながら襲おうとしていた。
ルディはと言えば、強力な魔力を放出したせいなのか、膝をついてゼイゼイと荒い息を繰り返し、俯きっぱなし。
今襲われたら、トカゲの毒で倒されるのは火を見るよりも明らかだ。
「いやぁ、ルディっ! 危ないから逃げて」
私の叫び声が届いたのか、顔を上げて震える手で剣を構えようとしているのがわかった。
間に合わないかも。ルディが倒れる姿をみたくなくて、ギュッと目を瞑って両手で口元を覆い、必死で悲鳴を押し殺す。
ルディがソンの懐に入って剣を突きつける。
ギーンーー鈍い鋼の音が響いて、剣を合わせた後、お互いの腕を伸ばしても届かないくらいの距離で睨み合う。
「クッソ重てぇなぁ、お前の剣。ヘヘッ、倒し甲斐があるじゃねえか」
「貴様に倒されるほど我は弱くない。ハエのように動き回る貴様には我の同胞が応対しよう」
ソンが左手を振り下ろし、彼の後ろに控えていた何匹かのトカゲが前に出てくる。その数ざっと四匹。
ノソリと近づくヤツらは、戦闘に入る前の布陣を敷くかのように、ジリジリと間合いを詰めて整列する。
チロチロと出る舌は、毒を被るかもしれないという恐怖を煽るように常に動いている。
四匹が一斉にルディに飛びかかれば、避ける隙もなく毒を被ってしまうだろう。
ルディばかりではなく、私たち全員に緊張が走る。
「やれ」
短く命令するソンの声には、何の感情も含まれていない。その場にある荷物を右から左に移すくらいの、そんな当たり前のことをしてのけるかのような声色だ。
合図と共に四匹のトカゲたちが動き出そうと体を沈ませる。
次の瞬間、なぜか右の二匹、左の二匹が互いにぶつかり合って絡まり合うように転倒していた。
「え? どうしたの? 何が起きたの?」
焦って尋ねる私に、ミリィちゃんが目を凝らして状況を説明してくれる。
「一瞬のことで私もビックリしましたが、ヒューズ様の両手の甲から光の縄みたいなのが出て、それがトカゲたちを縛りあげています。あっ、あぶな……」
四匹を一度に捕まえているせいか、ルディの方が力負けして態勢が崩れたようだ。
危ない、と思った瞬間、少しだけ縄が緩んだらしい。
左側のトカゲのうちの一匹が身をよじって戒めから逃れようと激しく暴れる。トカゲの体が器用に縄をすり抜けて、呪縛から離れようとしたその時、再び縄がググッと締まり、ギリギリのところで後ろ脚をしっかりと絡めてとった。
ドドンと倒れこむトカゲに引きずられ、またもや態勢が左側に大きく傾く。
しかし、ここが踏ん張りどころだと実感しているのだろう、必死に堪えて膝をつきながらも縄を引き絞り続けている。
肩で息をしながらも不敵に笑い、一度大きく息を吸って呼吸を整える。
「はぁぁぁっ……っしゃあっ!」
気合いを溜めてから一気に力を流しいれたのか、光の縄がカァッと輝きを増した。
ビギャアァァァ……
トカゲたちの鳴き声が聞こえ、その体が真っ二つに千切れ飛ぶ。光の縄がググッと締まり、トカゲの体を引きちぎって絶命させたようだった。
「やったあっ! ルディ、カッコいいっ!」
「すごいですね、あんな術式を手の甲に忍ばせていたなんて……」
小躍りして喜ぶ私と、感心して頬が上気しているミリィちゃん。それを呆れて見るハルが、油断するなと注意する。
「おいおい、手放しで喜ぶのはまだ早い。まだ一匹残ってるんだ。ヒューズはまだ危険なままだ」
そうだ、さっき緩んだ縄のせいで、一匹だけは完全に捕縛されているわけではなかった。脚に絡みついているだけなので、千切れ飛ぶのは脚の部分だけだ。
案の定、脚からドス黒い液体を撒き散らし、暴れ回っているトカゲが一匹いる。その目がギラリと凶悪な光を放ったかと思ったら、ルディ目がけて転がりながら襲おうとしていた。
ルディはと言えば、強力な魔力を放出したせいなのか、膝をついてゼイゼイと荒い息を繰り返し、俯きっぱなし。
今襲われたら、トカゲの毒で倒されるのは火を見るよりも明らかだ。
「いやぁ、ルディっ! 危ないから逃げて」
私の叫び声が届いたのか、顔を上げて震える手で剣を構えようとしているのがわかった。
間に合わないかも。ルディが倒れる姿をみたくなくて、ギュッと目を瞑って両手で口元を覆い、必死で悲鳴を押し殺す。
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