上 下
67 / 249
魔術師団編

34の2.そりゃ荒れるわ!

しおりを挟む
 もう一人の不満の対象は、第四部隊のロイズ隊長らしい。

 今日の会議では会えなかったが、王宮での王族警護が通常任務なんだそうだ。
 彼は警護よりも王宮勤めの侍女のナンパがメインか、というくらいのチャラ男らしい。

 しかしながら、王族や女性、貴族への対応は非の打ち所がなく、王宮関係の者の信頼は厚いという。

「ああ、ダメ男とクズ男に囲まれているわけね。なら必然的に頼りになるのは第一隊長のコークス様になるわねぇ」
「だろ?   ただ、副師団長は姐さんのこと同僚としては認めてるけど、女としては見てないんだよねぇ。てか、女に興味ないんじゃないかって感じだし……いくら姐さんがモーションかけても普段と変わらずなんだとさ」

 はあ、なるほどね。
 ダメ男とクズ男に嫌気がさして、コークスさんに救いを求めるも、アッサリ玉砕ってパターンか。そりゃすさむだろ、あんだけ魅力的な女性だ。出来る男をパートナーに選びたいと考えるのは自然の流れなんだろう。

「あれ?   ならラッセルにも声はかけてるんでしょ?   恋人になってって」
「聞くところによれば、声かける前に対象外だって判断したらしい。自分の手には余るってボヤいてたって話し」

 手のひらを上に向け、肩をすくめながらお手上げっていう感じのポーズを私に見せる。

 まあ言われてみれば、ラッセルって冷徹な感じだったモンね。ありゃ恋人やパートナー以前に、人間として付き合えるかどうかって状態だったろうし。

「でもさ、隊長クラスがダメでも副隊長クラスとかの人たちなら対象になるんじゃない?」
「それがさぁ、姐さんもあの性格だからな。豪快過ぎてみんな萎縮しちまうんだよ。その気風の良さに惚れ込むのは姐さんの部下たちだけさ」

 ああ、確かに。変な期待を男性に求めるよりも、頼りになるお姉様の方が人気になるのもわかるよ。
 例えるなら、宝塚の男役に熱をあげるようなモンだよね。なにせ周りの男性より男らしいもの、惚れこむのもわかるわぁ。

「噂じゃあ、第三部隊では毎晩、男にはわからない、女性ならではの耽美な世界が繰り広げられているとか……」
「ええっ?   女同士……それは私、遠慮したいなぁ、ハハハ」

 男性とのお付き合いさえまだなのに、一番最初に付き合うのが女性ってのはどうよ。平凡な事務員さんにはハードル高いですって。

「あらぁ?   やっぱりロイズの部下ねえ。女の子に親しく話しかけて気心を知ってもらってから自分のものにするなんて手段。あなたの部隊じゃ女の口説き方まで訓練するのかしら?」

 私とルディの話しを聞きつけてなのか、レイニーさんが間に割って入ってきた。その後ろには、ミラーズさんがビクビクしながら控えている。

「い、いやぁ、俺は姐さんの気風の良さをコイツに自慢してただけで……決してウチの部隊の新人が常に姐さんの餌食になるだとか、取り巻きのみなさんから『オハライバコ』になった新人は必ず転属願い出すだとかは教えてませんから」

 おいおい、それはレイニーさんとその部下さん達を軽くディスってないか?
 あたしゃ知らんぞ、君がこれからどうなるかは想像できるが、それを止める手立てが思いつかないわい。

 私はルディに向かって軽く両手を合わせ、仏様を拝むポーズで俯いた。

『ルディよ、永遠なれ』

 頭の中ではチーン、と鈴がなる音を感じ、本日一番いい笑顔で見送ることにした。
 私にゃ無理だ、ミラーズさん、お願いします!

 眉間に青筋を立てるレイニーさんと顔面蒼白なルディ、それを止めたいが止められない、といった状態のミラーズさん。

 ああ、こんな状態じゃミラーズさんには手が余るかも……ルディ君、ピーンチっ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...