47 / 249
魔術師団編
25の1.それは年齢詐欺だろっ!
しおりを挟む
この国の文字はひらがなを少しアレンジしたような造りになっているようだった。発音も基本の母音があり、子音と母音の組み合わせになっており、私なりに、かなり覚えやすい。
そういえば、昨日のレストランや学校のカフェもそうだったけど、妙に日本っぽいんだよね。味も海外旅行した時のような、食べ慣れないものを予想していたが、ずいぶんと日本に近い味付けになっていたりもする。
ファンタジーのお約束、と纏めればそれまでなのだが、周りの環境がわざわざ私に合わせてくれてるような、そんな錯覚を覚えたりもする。まあ、暮らす分には馴染みやすい環境に感謝して、妙な引っかかりは敢えて無視することにした。
「なかなか結構。読み書きに関しては覚えがいいな、優秀な生徒で助かる」
「この沙羅様にかかれば、勉強なんてすぐにこなせるわ。なんでも持って来なさいな」
ちょっと鼻高に自慢してみせた。なんてったって、形の区別さえつけられれば、ひらがなに当てはめて読み書きができるもの、楽勝だわ。
腰に手を当て胸を張って、私は出来る子アピールをしてみた。
それをみたラッセルは、少し安心したように次の課題を持ってきた。
「これであれば、社交の場でのお披露目も、そう遠くない時期にできそうだな。次はダンスだ。合間で貴族銘鑑を頭に叩き込んでいく」
はい? ダンス? 貴族銘鑑?
御セレブー様な響きが混じってるんですけど……
キョトンとした顔で固まっていたら、ため息まじりに説教された。
「カシアス様が望まれれば、第三王子妃として王宮で生活することも考えられる。そのための教養は完璧に身につけておかなければならない。君を後見する私の面子もあるしな」
すっかり忘れてたけど、ハルってば王子様とか言ってた気がする。妃ってお嫁さんだよね……は? 結婚? いやいや、ハルは十八、私二十四。無理無理、年の差ありすぎだから!
「あのー、私の年齢わかってます? しかもハルって弟的存在だったし、恋人とか旦那様とかに今更考えろって言われても……困る」
「何をためらう。王族に迎えいれてもらえる、ということは名誉でもあるのだ。普通は喜ぶものだ」
理解できないような表情で話しながら、それに、と言って言葉を繋げる。
「君に拒否権はない。王族と王の望みは絶対だ。見た目だけだと二十歳、いや十六、七歳でも通じる、そこは任せろ、調整する」
任せろって何をやねん。年齢誤魔化して公式の場にでたら犯罪だろうに。
「君を知る者はほとんどいない。君が言わなければそれまでの物事も多い。年齢もその一つ。出自や経歴も私が後見していれば、詮索する者もほぼいないはずだ」
自信たっぷりに言い切ってる姿をみてると、反論する気も失せてきて、ボソッと呟いた。
「三十オーバーのアンタにゃ分からないわよ。このくらいの年頃の一年、二年は海よりも深ーい深ーい隔たりがあるのよっ。まして六歳差よ? バレた後に周りのオンナにババア呼ばわりされる覚悟なんて、まだないわ」
私はお手上げのポーズをして、さらに伝えた。
「それに、王族とか貴族に対抗するくらいの技量を身につけても、所詮私よ? ボロが出れば笑われると思わないの? アンタも恥をかくわよ」
ラッセルは意外そうな顔をして私に問いかける。
「おや? 珍しく弱気だな。このくらいの障害、君なら乗り越えられると思っていたが。挑戦もしないで諦めるとは……私が後見する人物はそんなヤワな女性だったか……ふむ、期待はずれか」
そういえば、昨日のレストランや学校のカフェもそうだったけど、妙に日本っぽいんだよね。味も海外旅行した時のような、食べ慣れないものを予想していたが、ずいぶんと日本に近い味付けになっていたりもする。
ファンタジーのお約束、と纏めればそれまでなのだが、周りの環境がわざわざ私に合わせてくれてるような、そんな錯覚を覚えたりもする。まあ、暮らす分には馴染みやすい環境に感謝して、妙な引っかかりは敢えて無視することにした。
「なかなか結構。読み書きに関しては覚えがいいな、優秀な生徒で助かる」
「この沙羅様にかかれば、勉強なんてすぐにこなせるわ。なんでも持って来なさいな」
ちょっと鼻高に自慢してみせた。なんてったって、形の区別さえつけられれば、ひらがなに当てはめて読み書きができるもの、楽勝だわ。
腰に手を当て胸を張って、私は出来る子アピールをしてみた。
それをみたラッセルは、少し安心したように次の課題を持ってきた。
「これであれば、社交の場でのお披露目も、そう遠くない時期にできそうだな。次はダンスだ。合間で貴族銘鑑を頭に叩き込んでいく」
はい? ダンス? 貴族銘鑑?
御セレブー様な響きが混じってるんですけど……
キョトンとした顔で固まっていたら、ため息まじりに説教された。
「カシアス様が望まれれば、第三王子妃として王宮で生活することも考えられる。そのための教養は完璧に身につけておかなければならない。君を後見する私の面子もあるしな」
すっかり忘れてたけど、ハルってば王子様とか言ってた気がする。妃ってお嫁さんだよね……は? 結婚? いやいや、ハルは十八、私二十四。無理無理、年の差ありすぎだから!
「あのー、私の年齢わかってます? しかもハルって弟的存在だったし、恋人とか旦那様とかに今更考えろって言われても……困る」
「何をためらう。王族に迎えいれてもらえる、ということは名誉でもあるのだ。普通は喜ぶものだ」
理解できないような表情で話しながら、それに、と言って言葉を繋げる。
「君に拒否権はない。王族と王の望みは絶対だ。見た目だけだと二十歳、いや十六、七歳でも通じる、そこは任せろ、調整する」
任せろって何をやねん。年齢誤魔化して公式の場にでたら犯罪だろうに。
「君を知る者はほとんどいない。君が言わなければそれまでの物事も多い。年齢もその一つ。出自や経歴も私が後見していれば、詮索する者もほぼいないはずだ」
自信たっぷりに言い切ってる姿をみてると、反論する気も失せてきて、ボソッと呟いた。
「三十オーバーのアンタにゃ分からないわよ。このくらいの年頃の一年、二年は海よりも深ーい深ーい隔たりがあるのよっ。まして六歳差よ? バレた後に周りのオンナにババア呼ばわりされる覚悟なんて、まだないわ」
私はお手上げのポーズをして、さらに伝えた。
「それに、王族とか貴族に対抗するくらいの技量を身につけても、所詮私よ? ボロが出れば笑われると思わないの? アンタも恥をかくわよ」
ラッセルは意外そうな顔をして私に問いかける。
「おや? 珍しく弱気だな。このくらいの障害、君なら乗り越えられると思っていたが。挑戦もしないで諦めるとは……私が後見する人物はそんなヤワな女性だったか……ふむ、期待はずれか」
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~
千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる