18 / 29
第三章 再挑戦
二人そろえば百人力
しおりを挟む
「次は俺たちの出番……やってやるっス!」
「僕だって……やるときはやるんだ……!」
次はダブルス。宮崎と木村の出番だ。宮崎と木村は今までの先輩たちの試合の影響を受けているのか、いままで見たことのないぐらい熱くなっていた。
「けどな~……」
そう、個人戦で彼らは一回戦敗退を繰り返している。それを踏まえて考えると、俺は心配になってくる。
「安心しろ原」
近藤が俺の考えを呼んだかのようにそう言ってきた。
「ダブルスの時のあいつらは一味も二味も違う」
そして自身満々でそう宣言した。
それからしばらくして、一回戦第三試合、ダブルス戦が始まった。
「「よろしくお願いします!」」
四人は挨拶を交わし、台に構える。そしてサーブ権を取った宮崎、木村ペアは宮崎からサーブをするらしい。宮崎がフォア側に構え、台の下で手を使ってサインをだす。
ダブルスでは当然だが二人で戦わないといけないので、どんなサーブを出すのかをペア間で知っておく必要があるのだ。その時に使うのが、手を使ったサイン。
例えば人差し指を出せば下回転、ピースサインの時は横回転、というように回転を決めてからその他のしぐさで長さを伝える。それぞれのサインは事前にペアと相談して決める。そのため、サインには様々なパターンややり方が存在する。卓球の面白い所の一つかもしれない。
そしてダブルスのサーブのルールはシングルのルールに加え、もう一つルールが施される。
サーブのコースが対角線上。つまり自陣のフォア側から相手のフォア側に出さないといけない、というものだ。それが示すことは、レシーバーが有利になるということなのである。実力者になれば、長いサーブを出すだけでドライブを浴びされて終わりだ。
「…………ん!」
宮崎がトスを上げ、短いサーブを出した。そして宮崎はすぐ素早く時計回りで後ろに移動する。回転は、出し方からして下回転だろう。
それを素早く判断した相手選手はバック側に上回転のフリックを打つ。こうした二球目から攻撃をするのは珍しいことではなく、三球目攻撃をさせないための対処としてはメジャーな方である。それがダブルスにおいてのレシーバーの強みでもある。
しかし、この時の選択はあの二人には通じなかった。
「ん!」
バックに来たフリックを木村はバック面の粒高で短くカットし、そのボールが相手のフォア側側に短く返った。
粒高ラバーというのは、普通のラバーとは違ってその名の通りラバーに粒のような突起が細かく張り巡らされたラバーだ。その性質は簡単に言うと「出した回転が反対になる」という不思議なもの。
普通のラバーとは違い、回転がかけられるような引っ掛かりがないので、やってきたボールを受け流すような事になって相手からすると回転が反対になってしまう。
そんなラバーだからこそ、使っている人間は嫌われやすい。チートでもないのに。
そして木村はフォア側に返したがこれも誰でも分かる明確な理由が存在する。
卓球界隈では「ダブルスでは打ったやつを狙え」という聞いただけでは某サッカーゲームの残虐な必殺技を思わせる言葉がある。もちろん乱暴なことはしないが、これは[打った選手とその後に交代する選手が重なることが起きるため交代する選手を打ちにくくする]というちゃんとした理由があるからだ。
相手選手は慌てて直覚気味にラケットの角度を合わせて返球するも、下回転がかかっていたためにそのボールはネット前に落ちてしまった。
「ワンラブ」
相手の学校の審判選手はそう宣言し、点数板をめくる。
その後も粒高を交えたプレーに相手選手達は惑わせ続け、あっという間に第一ゲームを取った。
「すごいな……」
俺は気づけばそう口にしていた。
「あいつらの本領はダブルスで発揮されるんだ。これはあいつらだからこそできることなんだ」
俺のつぶやきに対し、近藤は誇るようにそう言った。
一年の二人は一度俺たちのところに戻り、二人で次のゲームの作戦を練っているようだ。そこには二人以外誰も介入していない。
「……なあ近藤。俺たちも何か言うべきか?」
「ああ。あいつらには言わなくてもいい、というか言うべきじゃないと思うぞ」
「?どういうこと………」
俺は近藤の発言に疑問を持ち、一年二人に視線を向けると………二人はとても楽しそうにしていた。もちろん会話の中身は次のゲームの作戦についてだ。ここからでも少し聞こえてくる。
「つまり、そういうことだ」
「……なるほど」
要するに、二人にとってこの試合は遊びに近いものだと思う。そのには純粋な気持ちがあった。
作戦がきまった。狙ったコースに打てた。ここが惜しかった。卓球をやっていれば当たり前のように持っているこれらを、二人はただ純粋にそのまま楽しんでいるのだ。
俺にはそれが少し、羨ましい。
「さあ、やるっすよ!木村っチ!」
「うん!いこう、宮崎君!」
時間になり、二人は挑戦的な笑みを浮かべて再び台の前に立った。
そして二人は第一ゲームの勢いのまま、時には攻め、時には惑わせてひたすら相手を混乱させた。その時の二人は俺の目には魔術師に見えた。
そのマジックショーを見続けているうちに――――――気が付けば3-0と宮崎、木村ペアが大金星をあげていた。
「僕だって……やるときはやるんだ……!」
次はダブルス。宮崎と木村の出番だ。宮崎と木村は今までの先輩たちの試合の影響を受けているのか、いままで見たことのないぐらい熱くなっていた。
「けどな~……」
そう、個人戦で彼らは一回戦敗退を繰り返している。それを踏まえて考えると、俺は心配になってくる。
「安心しろ原」
近藤が俺の考えを呼んだかのようにそう言ってきた。
「ダブルスの時のあいつらは一味も二味も違う」
そして自身満々でそう宣言した。
それからしばらくして、一回戦第三試合、ダブルス戦が始まった。
「「よろしくお願いします!」」
四人は挨拶を交わし、台に構える。そしてサーブ権を取った宮崎、木村ペアは宮崎からサーブをするらしい。宮崎がフォア側に構え、台の下で手を使ってサインをだす。
ダブルスでは当然だが二人で戦わないといけないので、どんなサーブを出すのかをペア間で知っておく必要があるのだ。その時に使うのが、手を使ったサイン。
例えば人差し指を出せば下回転、ピースサインの時は横回転、というように回転を決めてからその他のしぐさで長さを伝える。それぞれのサインは事前にペアと相談して決める。そのため、サインには様々なパターンややり方が存在する。卓球の面白い所の一つかもしれない。
そしてダブルスのサーブのルールはシングルのルールに加え、もう一つルールが施される。
サーブのコースが対角線上。つまり自陣のフォア側から相手のフォア側に出さないといけない、というものだ。それが示すことは、レシーバーが有利になるということなのである。実力者になれば、長いサーブを出すだけでドライブを浴びされて終わりだ。
「…………ん!」
宮崎がトスを上げ、短いサーブを出した。そして宮崎はすぐ素早く時計回りで後ろに移動する。回転は、出し方からして下回転だろう。
それを素早く判断した相手選手はバック側に上回転のフリックを打つ。こうした二球目から攻撃をするのは珍しいことではなく、三球目攻撃をさせないための対処としてはメジャーな方である。それがダブルスにおいてのレシーバーの強みでもある。
しかし、この時の選択はあの二人には通じなかった。
「ん!」
バックに来たフリックを木村はバック面の粒高で短くカットし、そのボールが相手のフォア側側に短く返った。
粒高ラバーというのは、普通のラバーとは違ってその名の通りラバーに粒のような突起が細かく張り巡らされたラバーだ。その性質は簡単に言うと「出した回転が反対になる」という不思議なもの。
普通のラバーとは違い、回転がかけられるような引っ掛かりがないので、やってきたボールを受け流すような事になって相手からすると回転が反対になってしまう。
そんなラバーだからこそ、使っている人間は嫌われやすい。チートでもないのに。
そして木村はフォア側に返したがこれも誰でも分かる明確な理由が存在する。
卓球界隈では「ダブルスでは打ったやつを狙え」という聞いただけでは某サッカーゲームの残虐な必殺技を思わせる言葉がある。もちろん乱暴なことはしないが、これは[打った選手とその後に交代する選手が重なることが起きるため交代する選手を打ちにくくする]というちゃんとした理由があるからだ。
相手選手は慌てて直覚気味にラケットの角度を合わせて返球するも、下回転がかかっていたためにそのボールはネット前に落ちてしまった。
「ワンラブ」
相手の学校の審判選手はそう宣言し、点数板をめくる。
その後も粒高を交えたプレーに相手選手達は惑わせ続け、あっという間に第一ゲームを取った。
「すごいな……」
俺は気づけばそう口にしていた。
「あいつらの本領はダブルスで発揮されるんだ。これはあいつらだからこそできることなんだ」
俺のつぶやきに対し、近藤は誇るようにそう言った。
一年の二人は一度俺たちのところに戻り、二人で次のゲームの作戦を練っているようだ。そこには二人以外誰も介入していない。
「……なあ近藤。俺たちも何か言うべきか?」
「ああ。あいつらには言わなくてもいい、というか言うべきじゃないと思うぞ」
「?どういうこと………」
俺は近藤の発言に疑問を持ち、一年二人に視線を向けると………二人はとても楽しそうにしていた。もちろん会話の中身は次のゲームの作戦についてだ。ここからでも少し聞こえてくる。
「つまり、そういうことだ」
「……なるほど」
要するに、二人にとってこの試合は遊びに近いものだと思う。そのには純粋な気持ちがあった。
作戦がきまった。狙ったコースに打てた。ここが惜しかった。卓球をやっていれば当たり前のように持っているこれらを、二人はただ純粋にそのまま楽しんでいるのだ。
俺にはそれが少し、羨ましい。
「さあ、やるっすよ!木村っチ!」
「うん!いこう、宮崎君!」
時間になり、二人は挑戦的な笑みを浮かべて再び台の前に立った。
そして二人は第一ゲームの勢いのまま、時には攻め、時には惑わせてひたすら相手を混乱させた。その時の二人は俺の目には魔術師に見えた。
そのマジックショーを見続けているうちに――――――気が付けば3-0と宮崎、木村ペアが大金星をあげていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜
赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。
これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。
友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる