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第一章 開幕
初体験
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あの地獄の幕開けから約一か月の五月の第二月曜日。
ついに俺は……あの生活を抜け出すことができた!と、いうわけでその日の放課後。俺はついに体育館で練習をすることになった。そして今は体育館の中にいる。
うちの学校の体育館は割と広く、バレー部やバスケ部が声を上げて懸命に練習をしている。しかし卓球部がとれるスペースは他の部活に比べて少なく、卓球台は2,3台置けるのがやっとのスペースである。バトミントン部との共用スペースなので、部活同士で話し合って決めたスケジュールにそってこの場所を使っている。そのため使わない日はトレーニングに充てるか部を休みにしている。
そうなったのも部の成績のせいでもあるらしい。まあスペース取りのために頑張ろうとは思わないけど。
「原。早速練習を始めるぞ」
「おう!」
俺はケースからラケット、球を取り出し近藤のいる卓球台に向かった。ほかの部員はいつもやっている練習メニューをこなしている。あの元気ボーイの宮崎も練習に集中している。以外だな。
「それじゃあまずは基礎中の基礎。ラケットの持ち方な。前にも教えたけど一応な」
ラケットの持ち方はトレーニング二日目に教えてもらった。玉突きの練習をするためだ。玉突きは家でも練習ができる基礎練で上達すると球のコントロールがうまくなるらしい。その日から家で毎日やるようになった。
「………うん。ちゃんとできてるな。玉突きもやってくれ」
「ほいよ」
まずは普通の玉突き。それからフォアとバックで一回ずつ交互にやるもの。回転をかけるもの。近藤に人と通り教えてもらったやり方をとりあえずやってみた。
「…………おまえほんとに卓球やったことなかったの?」
「やったことない。……なんだその疑う目は。あのトレーニング初日を思い出せ。やったことあるならちゃんとこなしてるよ」
「そりゃそうだな」
いまいち納得できていなさそうな近藤。そんなに変か?
「まあとりあえず、ちゃんと練習はしているようでよかった。これからも続けてくれ。……じゃあ、次は姿勢だな」
こうして俺は前傾姿勢、打つ時のフォームを教えられ、実際に少しだけ打ってみたりもした。家である程度知識はいれたつもりだが実際にやってみると難しかった。
そんなこんなで今日の練習は終わり今は部室にて着替えをしている。
「っあ~疲れたー」
体の感覚で覚えるのも一苦労な俺は精神的にも肉体的にも疲れている。早く感覚をつかみたいものだ。前傾姿勢も今までやったことがないから維持するのが大変。
とそんな感じで振り返りながら着替え終わると卓球部のおちゃらけめがねの宮崎が木村を連れて俺のところに来た。
「お疲れ~っス!原先輩!」
「お、お疲れ様です先輩」
「お疲れ~二人とも」
今までの一か月で俺は卓球部の人たちとある程度親しくなり例の人見知りもまだましになっていた。ので今は近藤レベルとまではいかないがまだ話はできる。
「あの、今から飯行こうと思ってるんですけど良かったら先輩も行かないっスか?」
「その、先輩ともっと話したいと言いますか、トレーニングの時ぐらいしか話してなかった、ので」
「ふむ、なるほど。いいよ。俺も君たちから色々教えてもらいたいしね」
「よっしゃ!それじゃ早速行くっスよ先輩!」
と、こうして後輩二人と食事に行くことになった。
……そのはずだったのだが。
「いや~まさかこうしてみんなと食事を共にするなんてね~。僕はうれしいよ~」
「……帰りたい。」
清水と西村先輩そして、
「まさか、原がこんな大人数で食事に行くことができたなんて……成長したな!」
近藤までが食事に参加することになった。経緯は………めんどくさいから想像に任せるとしよう。
そんな感じで俺たちは仲良くファミレスで食事をしていた。
「ところで先輩。今日の練習でちらっと見てたんですけど、玉突きうまいっスね!初めてとは思わなかっスよ!」
「ぼ、僕もそう思いました」
「確かにね~。未経験、とは言っていたけど本当はやっていたんじゃないの~?」
俺はゆっくりパスタを食べているところに急に後輩二人と西村先輩に迫られた。何怖い。俺は食べる手を止め、質問に答える。
「いやいややってないですよ。ただ家で練習していただけで」
「え~マジっスか……!」
「す、すごい」
「だとしたら結構器用だね~。原君、君結構うまくなると思うよ。これからもがんばって~」
「は、はい。頑張ります」
うまくなるとかって玉突きを見ればわかるものなのか?と疑問に思いながら俺は再びパスタを食べ始めた。
「……どうせ今成長が速いだけで、すぐにスランプに陥る。そういうタイプはこの世界にたくさんいる」
「………」
まったくもってそのとうりだと思った。俺は勉強もゲームも最初は成長は速い方だった。けど、時が来れば成長が芳しくなくなりスランプに陥る。今回もそうなるだろうが、どうするべきかね。
「清水。それは今言うべきことか。楽しい席なのに空気を濁すようなことを」
「褒められて調子に乗りそうになる今だからこそですよ。………慢心して練習をさぼられては困りますから」
近藤が注意すると清水が淡々とそう答えた。
「気遣いありがとう清水」
「気遣いじゃない。こちらが困るから言っただけだ」
本人は仏頂面なままそう答えた。が、言動だけ見ればすごいツンデレっぽくて思わずにやにやしてしまいそうになる。
「はいはーい真面目な話ばっかしないでもっと楽しい話、するっスよー!」
宮崎がそう声を上げるとそれを合図に俺たちは色々話をしながら食事をした。
思えば近藤が最初に言っていたが、俺は複数人の家族以外の人間と食事に行ったことがなくこれが初めてなのだ。しかし思いのほか楽しく、いつからだったか忘れたが他のメンバーにも、近藤といるときの調子で話せるようになっていたのだった。
ついに俺は……あの生活を抜け出すことができた!と、いうわけでその日の放課後。俺はついに体育館で練習をすることになった。そして今は体育館の中にいる。
うちの学校の体育館は割と広く、バレー部やバスケ部が声を上げて懸命に練習をしている。しかし卓球部がとれるスペースは他の部活に比べて少なく、卓球台は2,3台置けるのがやっとのスペースである。バトミントン部との共用スペースなので、部活同士で話し合って決めたスケジュールにそってこの場所を使っている。そのため使わない日はトレーニングに充てるか部を休みにしている。
そうなったのも部の成績のせいでもあるらしい。まあスペース取りのために頑張ろうとは思わないけど。
「原。早速練習を始めるぞ」
「おう!」
俺はケースからラケット、球を取り出し近藤のいる卓球台に向かった。ほかの部員はいつもやっている練習メニューをこなしている。あの元気ボーイの宮崎も練習に集中している。以外だな。
「それじゃあまずは基礎中の基礎。ラケットの持ち方な。前にも教えたけど一応な」
ラケットの持ち方はトレーニング二日目に教えてもらった。玉突きの練習をするためだ。玉突きは家でも練習ができる基礎練で上達すると球のコントロールがうまくなるらしい。その日から家で毎日やるようになった。
「………うん。ちゃんとできてるな。玉突きもやってくれ」
「ほいよ」
まずは普通の玉突き。それからフォアとバックで一回ずつ交互にやるもの。回転をかけるもの。近藤に人と通り教えてもらったやり方をとりあえずやってみた。
「…………おまえほんとに卓球やったことなかったの?」
「やったことない。……なんだその疑う目は。あのトレーニング初日を思い出せ。やったことあるならちゃんとこなしてるよ」
「そりゃそうだな」
いまいち納得できていなさそうな近藤。そんなに変か?
「まあとりあえず、ちゃんと練習はしているようでよかった。これからも続けてくれ。……じゃあ、次は姿勢だな」
こうして俺は前傾姿勢、打つ時のフォームを教えられ、実際に少しだけ打ってみたりもした。家である程度知識はいれたつもりだが実際にやってみると難しかった。
そんなこんなで今日の練習は終わり今は部室にて着替えをしている。
「っあ~疲れたー」
体の感覚で覚えるのも一苦労な俺は精神的にも肉体的にも疲れている。早く感覚をつかみたいものだ。前傾姿勢も今までやったことがないから維持するのが大変。
とそんな感じで振り返りながら着替え終わると卓球部のおちゃらけめがねの宮崎が木村を連れて俺のところに来た。
「お疲れ~っス!原先輩!」
「お、お疲れ様です先輩」
「お疲れ~二人とも」
今までの一か月で俺は卓球部の人たちとある程度親しくなり例の人見知りもまだましになっていた。ので今は近藤レベルとまではいかないがまだ話はできる。
「あの、今から飯行こうと思ってるんですけど良かったら先輩も行かないっスか?」
「その、先輩ともっと話したいと言いますか、トレーニングの時ぐらいしか話してなかった、ので」
「ふむ、なるほど。いいよ。俺も君たちから色々教えてもらいたいしね」
「よっしゃ!それじゃ早速行くっスよ先輩!」
と、こうして後輩二人と食事に行くことになった。
……そのはずだったのだが。
「いや~まさかこうしてみんなと食事を共にするなんてね~。僕はうれしいよ~」
「……帰りたい。」
清水と西村先輩そして、
「まさか、原がこんな大人数で食事に行くことができたなんて……成長したな!」
近藤までが食事に参加することになった。経緯は………めんどくさいから想像に任せるとしよう。
そんな感じで俺たちは仲良くファミレスで食事をしていた。
「ところで先輩。今日の練習でちらっと見てたんですけど、玉突きうまいっスね!初めてとは思わなかっスよ!」
「ぼ、僕もそう思いました」
「確かにね~。未経験、とは言っていたけど本当はやっていたんじゃないの~?」
俺はゆっくりパスタを食べているところに急に後輩二人と西村先輩に迫られた。何怖い。俺は食べる手を止め、質問に答える。
「いやいややってないですよ。ただ家で練習していただけで」
「え~マジっスか……!」
「す、すごい」
「だとしたら結構器用だね~。原君、君結構うまくなると思うよ。これからもがんばって~」
「は、はい。頑張ります」
うまくなるとかって玉突きを見ればわかるものなのか?と疑問に思いながら俺は再びパスタを食べ始めた。
「……どうせ今成長が速いだけで、すぐにスランプに陥る。そういうタイプはこの世界にたくさんいる」
「………」
まったくもってそのとうりだと思った。俺は勉強もゲームも最初は成長は速い方だった。けど、時が来れば成長が芳しくなくなりスランプに陥る。今回もそうなるだろうが、どうするべきかね。
「清水。それは今言うべきことか。楽しい席なのに空気を濁すようなことを」
「褒められて調子に乗りそうになる今だからこそですよ。………慢心して練習をさぼられては困りますから」
近藤が注意すると清水が淡々とそう答えた。
「気遣いありがとう清水」
「気遣いじゃない。こちらが困るから言っただけだ」
本人は仏頂面なままそう答えた。が、言動だけ見ればすごいツンデレっぽくて思わずにやにやしてしまいそうになる。
「はいはーい真面目な話ばっかしないでもっと楽しい話、するっスよー!」
宮崎がそう声を上げるとそれを合図に俺たちは色々話をしながら食事をした。
思えば近藤が最初に言っていたが、俺は複数人の家族以外の人間と食事に行ったことがなくこれが初めてなのだ。しかし思いのほか楽しく、いつからだったか忘れたが他のメンバーにも、近藤といるときの調子で話せるようになっていたのだった。
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