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アサヒ

飢えを満たす

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 アサヒは肌に触れている唇でシイナがビクリと身を震わせるのを、視界の片隅で未だシイナを拘束しているツキヤの手に力が籠められるのを確認した。
 もう一度、微かに舌に感じ始めたシイナの胸の蕾をクチュリと吸ってから、顔を上げる。

「ちょっとツキヤ、ぼんやりしてないで」
「え?」
「シイナに教えてあげなさいよ、あんたがどれほど想ってるかって。あんただって、別に自分が唯一無二じゃなくたって構わないでしょ?」
 軽く首をかしげてそう問えば、彼は一つ二つ目を瞬かせ、そして頷いた。

「ああ、構わない。俺のことを好きなら、それで。俺が触れてもいいのなら……」
 ツキヤが熱を帯び始めた目をシイナに注ぐ。それを受ける彼女の目の中には、狼狽があった。

「わたし、は」
 口ごもったシイナに、アサヒは畳みかける。彼女にじっくり考える余裕を与えずに。
「あら、嫌なの? シイナはツキヤに触られるのも嫌なんだ? だってさ、ツキヤ。まぁ、そりゃそうかもねぇ」
「違、わたし、嫌だなんて言って――」
 反論しかけたシイナは、自分が何を暴露してしまったのか悟って慌てて口をつぐむ。

 だが、遅かった。
 ツキヤがジッとシイナを見つめる。彼は捉えていたシイナの手を放し、代わりに、目を逸らしている彼女の顔を両手で包み込んだ。頑なに目を逸らしているシイナの顔を正面に向けさせ、覗き込むようにして視線を絡める。

「君、は、俺を赦してくれるのか……? 無理やり君を抱いた俺を……?」
「わたし……」
 それきり言葉を紡げずにいるシイナに、アサヒはやれやれとため息をついた。

「シイナは、まだ受け入れられないのよね、私たち二人ともを好きだってこと。でも、そんなに自分を責めなくてもいいんじゃないの? 二人とも好きだって構わないって、私たちの方が言ってるんだから」
「でも、だって――」
「い、い、の!」
 まだ抵抗を続けようとするシイナの手を取り、アサヒは手首の皮膚の薄いところに口付ける。ヒクンと彼女が身をすくませたところで、ツキヤに目配せをした。

 弟の目によぎった迷いはほんの一瞬閃いただけで消え失せる。
 ツキヤはシイナの顔から両手を離し、彼女の足元の方へと下がった。シイナの膝の辺りで止まり、彼女のジーンズのボタンに手を伸ばす。

「待って、ツキ――」
 慌てて起き上がろうとしたシイナをソファに押し戻し、アサヒは拒否の言葉をキスで封じた。柔らかな彼女の舌を絡め取り、揉み解すようにやわやわとこすり合わせる。舌の根元から裏側に回って滑らかなところを舌先でくすぐると、シイナの喉の奥で仔猫が甘えるような声が漏れた。

 彼女のこんな声を耳にする瞬間を、どれほど待ち望んできたことか。
 まさに感無量だ。

 アサヒは丹念に彼女の中を探り、今まで触れたくて触れたくてたまらなかったところを思いきり堪能する。シイナは、そんな彼女の舌による愛撫をこれ以上ないほど従順に受け入れてくれた。
 それがまた、アサヒの悦びを何倍にも増幅する。

 解放してからもシイナの唇は薄っすらと開かれたままで、まるで再び奪われることを待ちわびているかのようだった。焦点の定まらない目はトロンと呆けている。いつの間にか身にまとうもの全てを取り払われてしまっていることにも、どうやら気付いていないらしい。

「可愛い」
 くすりと笑って、アサヒは膨らみの真ん中で震えている蕾を指先でくすぐった。
「ッ!」
 息を呑んだシイナは一瞬正気に戻りかけたけれども、軽く捻るように指の間でそれを転がしてやると、再び快感の波に飲み込まれていくのが見て取れた。

「ヒ、ぁ」
 甘い声で啼くシイナの胸を弄びながら、アサヒは彼女のわき腹についばむだけのキスを落としていく。そのたびにシイナの華奢な身体がヒクつくのが、愛おしくてならない。柔らかな肌は砂糖のように甘く、時折、齧りつきたくなるのを堪えなければならなかった。

 そうやってアサヒがシイナを楽しむ横で、ツキヤが軽々と彼女の脚を持ち上げ、その間に自分の身を置いた。弟はシイナの腿を押し開き、正気では決して見せてくれないだろう秘密の場所を露わにする。

 ツキヤの頭が下がり、チュゥ、と、何かを吸う音がした。途端に、シイナの全身が跳ねる。
「や、ぁぅ!?」
 チュクチュクと続く水音の中に、高い声が響き渡る。
「ぁ、あ……ぅ、ふぁぅ」
 腿はツキヤの両手でがっちり固定されているけれど、膝から下は自由だ。悲鳴じみた声が上がるたび、可愛らしいつま先が幾度も宙を蹴る。

 アサヒは右手を伸ばしてツキヤが楽しんでいる場所の下に触れてみた。とろりとした蜜が彼女の指を濡らす。

 ゾクリとした。

「あなたの中に触れさせてね?」
 シイナの耳元で囁くと、彼女は呆けた眼差しで見返してくる。

「え……?」
 アサヒはひっそりと微笑んでかすめるようにシイナの唇にキスを落とし、とめどなく蜜を溢れさせるその源泉にゆっくりと指を沈めていく。

「ふ、ぁ」
 シイナの背が反り、柔らかく潤う粘膜がアサヒの指をキュッと締め付ける。その感触を楽しみながらもう一本挿し入れ、アサヒは少しざらつく浅い部分をマッサージするようにやんわりと揉みしだいた。

「やぁ、あ……あぅ、ぁ、ぁあ!」
 ハッと目を見開いたシイナが、嬌声を上げながら身悶えする。けれど、ツキヤの手に捉えられているから、逃げられない。

 シイナは絶え間なく啼き続け、視線を彷徨わせる。ふとアサヒと目が合うと、助けを求めるように両手を差し伸べてきた。
「せん、ぱい、アサ、ヒ、せんぱ、い……」
 喘ぎながら懸命に名を呼ぶシイナに、息苦しさを覚えるほどに胸が締め付けられる。
 アサヒは小さな両手を捉えてついばむようにキスをする。そうすると、ホッとしたようにシイナの顔が微かに和らいだ。そうなるともう我慢ができなくて、アサヒは身を乗り出して飢えたようにシイナの唇を貪った。

 ひとしきりシイナを味わってからゆっくりと離れると、彼女はトロンとした目で追いかけてきた。

 快楽に溺れる彼女の火照った顔は、たまらなく愛らしい。頭をもたげたツキヤも、うっとりと魅入っている。

 ずっと、この手で彼女に触れたかった。
 この手でぐずぐずに蕩けさせて、感じきって我を忘れる彼女を見たくてたまらなかった。

 ギリギリまでシイナの悦楽を引き出しつつも、女の身体を知り尽くしたアサヒは微妙な力加減で一線は越えさせない。多分、シイナは、イク直前の快感に襲われ続けているはずだ。

「イキたい?」
 引くつき始めた下腹を撫でながら耳元で囁くと、シイナは涙をにじませながらかぶりを振った。
「いや、いやぁ」

「嘘つき」
 アサヒはくすりと笑って真っ赤に染まった耳たぶを甘噛みした。そうして、指の動きを強くする。

 シイナの中が、ムニュムニュとアサヒの指をしゃぶるように――あるいは、より奥へと引き込もうとするようにうごめき始めるのが感じられた。

「やぁ、や、あ、あ――ふ、ぅ、ん、ん」
 不意にギュゥッとシイナの中が収縮し、身体はビクンビクンと痙攣する。天井に向けられた眼差しは茫洋と宙を彷徨い、四肢は力なく投げ出された。

 息を切らしているシイナのふっくらした唇をそっとついばみ、アサヒは囁く。
「可愛かった」

 そうして、彼女はシイナに見惚れるツキヤに目を向けた。
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