道路の七不思議

トウリン

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 中央分離帯ってさぁ、いったい、何を分けてるんだろう、とか、思うことないか? ……別にラリッてなんかねぇよ。

 え? 車の流れだって?
 まあ、そりゃそうなんだけどさ。
 あんなふうに「同じ方向に走れ!」とか言われると、何となく、逆らいたくなるんだよな。お前はならねぇ? あ、そう。

 何となくさ、夜中で、他に誰も走ってなかったら、やれそうな気がしてくるけどなぁ。
 まあ、時々、年寄りとか、酔っ払いとか、変なハーブキメたのとかがうっかりやっちゃう時もあるけどよ。

 今日、4月9日はオレの誕生日でさ。ダチどもに『お祝い』してもらって、最後のシメでドライブに行こうかっていうことになったんだよな。家を出たのは、夜中の1時を過ぎたくらいだったかな。

 しばらく走って、街中を抜けて、真っ直ぐで見通しのいい二車線になって。
 ま、見通し良くってもこんな時間じゃ先なんて見えねぇけどな。

 正直言うと、運転してるヤツも、ちょっとばかし酒が入ってた。いや、そんな、酔ってるってほどじゃねぇって。だって、そいつはほんのちょっとしか飲んでなかったし。ビールをコップに三杯くらい? な? たいしたことねぇだろ?
 そんなの、殆ど素面だって。……いや、まあ、ちっとくらいは、酔ってたかもしれねぇけどさ。気付いたら、いつの間にか、反対車線を逆走してたし。どのくらいそうなってたのか知らんけど、対向車が一台も来なくて、マジでラッキーだったよな。

 多分、そんなに長い時間じゃないと思うよ。5分かそこら?
 眠ぃなぁって思って外を見て、「あれ、逆走してるじゃん」って、気付いたから、運転してるヤツに言ったんだ。「反対走ってるぞ」って。で、すぐに戻った。

 でさぁ、それから、結構、長い間走ってると思うんだよな。
 携帯で時間見たら2時ちょうどだったんだけど、さっきもそうだったような気がする。
 ま、気のせいだよな。
 腕時計とかならともかく、携帯の時計が狂うわけないしな。
 まだ酔ってんだよな、きっと。

 しっかし、酔うとこんなに時間の感覚狂っちまうもんなのかな。
 なんか、もう5~6時間は走ってる気がするよ。
 でも、それならそろそろ夜が明けてくるはずだしな。こんなに暗いはずがないよな。

 だいぶ山の方に来ちまったらしくて、街灯一本もなくて、外は真っ暗だよ。さっぱり外が見えねぇや。
 オレも結構ドライブする方だけど、こんな道は走ったことがねぇなぁ。
 一時間かそこら走ったくらいで、こんな山奥に来るもんだっけか? よっぽど田舎なのか、カーナビも圏外になっちまってるしよ。
 それになんか、タイヤの走りも変なんだよな。砂利道ってわけじゃなくて、なんていうか、妙に柔らかい感じっていうか……

 ぅおッ!?

 はぁビビった。
 なんか今車にぶつかってきたぞ。
 鳥――ってことはないか。
 こんな暗い中を飛べるはずがないよな。
 うぅわ、死骸がサイドガラスにべっとりこびりついてるよ。

 キモッ! 

 風のせいかな、微妙に動いているように見える。
 でも、普通、後ろに流れるように動くよな。雨の時とか、そうじゃん? でも、どういう風向きになってんのか判らんけど、これは段々上に行ってんな。なんかそのうち上の隙間から入ってきちまいそうだよ。
 えぇっと、道の外に生えてんの――木でいいんだよな。たまに枝がこっちに伸びてくるように見えるの、風のせいだよな……?

 それにしても、何もねぇな。
 道も、いつの間にか一車線になっちまってるし。
 対向車来たら、マジでヤバくね?

 ホント、どこ走ってるんだろ。

 ……どこに向かってるんだろ。
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