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招かれざる客⑤
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マクシミリアンは、まるでクリスティーナから逃げようとするかのように足早に遠ざかっていく。
その姿が庭木の陰に消えて行った後も、クリスティーナはもしかしたら彼が戻ってくるのではないかと思って、同じ方向を見つめ続けた。
規則正しく白い息が揺蕩い、消える。
それを三十ほど数えて、もうマクシミリアンが戻ることはないだろうと確信した。
よほど、彼は混乱していたのだろう。
クリスティーナをこんなふうに置き去りにしたことこそ、マクシミリアンがいつもの彼ではない証拠だった。
明日の朝、彼は「酔っていたから」とでも言うのだろうか。
そう、申し訳なさそうに微笑んで、クリスティーナのことを気遣うのだろう――きっと。
その時彼が浮かべる笑顔さえ、簡単に想像できる。
クリスティーナは小さく息をつき、次いでブルリと身を震わせた。
独りきりになって、急に寒さを実感する。
「戻りましょう」
誰にともなくつぶやいて、クリスティーナは歩き出した――歩き出そうとした。
「!?」
一歩を踏み出そうと足を上げたところで彼女は突然腕を掴まれ、後ろに引かれる。
よろけたクリスティーナは倒れ込みそうになり、背後にそびえ立つ何かに助けられた。
その何かが、彼女の耳元で囁く。
「よう、久しぶり」
パッと飛びのきざまに振り返り、そこに佇む者に、クリスティーナは目を丸くした。
「……お、兄さま……?」
ずいぶんと崩れた格好をしているけれども、間違えようがない。
確かに、アランだ。
「うちにいた時よりも元気そうじゃないか、ええ?」
彼は掴んでいたクリスティーナの二の腕を放すと、彼女の頭の天辺からドレスの裾までじろじろと眺め回した。
そういうアランは酒の匂いをプンプンとさせていて、衣服の乱れもひどい。上着にもズボンにもところどころに何かの染みが付いていて、数日、着替えていないのではないだろうかとさえ思わせた。
異母兄の不躾な視線に怯みつつ、おずおずと、クリスティーナは言う。
「お越しになるとは、思っていませんでした」
父と一緒にアランにも招待状を送ったけれどコデルロスが招きを断ったのだから、当然アランもそうだと思っていた。
「ふん。来ない方が良かった、の間違いだろう?」
「いいえ、そのようなことは……来てくださって、うれしいです」
クリスティーナがかぶりを振ると、アランは鼻で嗤った。
「お前はいつでもそうだな。相手の耳に心地良いことしか口にしない」
嘲る口調でそう言って、アランはヨロりとふら付いた。息の臭いからも明らかだけれども、すでにずいぶんと酔っ払っているらしい。もしかすると、ストレイフ家に入る前からかなりの酒を過ごしていたのかもしれない。
一歩下がって一人で立つ彼は、ふらふらと揺れ続けている。クリスティーナが指先で突いたら、すぐさまその場にへたり込んでしまいそう。
以前からアランは酒や賭博に弱かったけれども、ここまで荒んだ様子を見せるのは初めてだ。
「お兄さま……少し、お酒をお控えになった方が良いのでは……」
「はあ?」
赤く充血した目が、ギラリと光ってクリスティーナに向く。
「今、なんて?」
かつてのクリスティーナなら、ここで押し黙っていた。けれど、今の彼女はマクシミリアンの妻だ。このストレイフの屋敷の中で、兄に遠慮してその醜態を見過ごすわけにはいかない。
小さく息を吸い、さっきよりもはっきりと告げる。
「お酒が、過ぎるのではないかと申し上げました」
「ずいぶんと偉そうだな、ええ?」
アランの手が伸びてきて、再びクリスティーナの腕を掴む。今度はただ捉えるだけでなく、彼女を懲らしめようとするかのように必要以上の力が込められていた。
きつく締め付けられて、指先が痺れそうだ。
けれどもクリスティーナは、顎を上げて異母兄を見上げた。
「今のわたくしはお兄さまの妹ではなく、ストレイフの妻です。彼のために為すべきことを為さねばなりません。お兄さまが他のお客さまに不快な思いをさせる前に、お引き取り願います」
きっぱりとそう言い切ると、ギリ、とアランの指の力が増した。
きっと、痣になる。
けれど、引くわけにはいかない。
気弱なはずの異母妹の予想外の抵抗に、アランは怯むと同時に腹を立てたようだ。
「えらく威勢がいいな――金で売られた女のくせに」
毒々しい声で、彼が吐き捨てた。
脅しつけるその声音に怯えるよりも先に、クリスティーナはその言葉の中身に眉をひそめる。
「え……?」
(お金で、売られた?)
心許なく眼差しを揺らしたクリスティーナに、アランが一気に勢いづく。
「なんだよ、知らなかったのか? お前を買おうって奴は、六人はいたんだよ。ストレイフを含めてな」
「それは、どういうことですか?」
確かに、この婚姻は父とマクシミリアンとの事業上の取引も含んでいる筈だ。それはクリスティーナも承知している。
けれど、彼女のことを『買う』というのは、どういう意味なのだろう。
それでは、まるでコデルロスが一方的に利益を得たように聞こえる。
ジワリと不安が滲み始めたクリスティーナの目を、アランが愉快そうに覗き込んだ。
「オレの借金がちょっと嵩んじまってな。親父も自分の金を出すのが嫌になったみたいで、元手なく売り出せるもんを競売にかけたってわけだ。前から、お前を寄越せってヒヒオヤジどもがせっつき始めてたんだよ。お前もまあボチボチいい年頃だしな」
そこでアランが数名の名前を挙げる。
三人は四十歳を軽く超えていて、残る二人はまだ三十代だけれどもクリスティーナに会うたび何とも嫌な視線を投げかけてきた男性だ。
どの男性も、マクシミリアンの足元にも及ばない――並べる気にもならない人たちばかりだ。
その人たちが、自分の夫候補だった。
父は、借金の肩代わりに自分を売りに出した。
今になってそう聞かされて、クリスティーナはその場にへたり込みそうになる。それを支えているのは、皮肉にも、アランの両手だった。
愕然としているクリスティーナに、アランが得々と続ける。
「最初は、ストレイフは入っていなかったんだよ。別に広告出したわけじゃないってのに、どこかから聞き付けたらしいぜ? だいぶ遅れての参戦だったがな、奴が一番高値を付けた。それもバカみたいな値段をな。オレの借金返してまだ余る。一発であいつに決まったよ」
「でも、お父さまとマクシミリアンさまは、お仕事で――」
「ああ? 仕事? あの強欲親父が誰かと手を組むわけがないだろ」
バカにしたように、アランが言い放った。
(では、この結婚は、マクシミリアンさまには何の益もないものだったの――?)
その後もアランは何か言い続けていたけれども、呆然としたクリスティーナの耳を右から左へと通り抜けていく。
父に『売りに出されたこと』はクリスティーナの心を打ちのめした。
けれど、それ以上に、マクシミリアンのことで頭がいっぱいになる。
(あの方にとって利益に――いいえ、損ばかりなら、どうしてわたくしを娶られたの?)
マクシミリアンほどの人物なら、結婚相手は引く手数多だったはず。
いくらでも選びようがあったのに、よりにもよりにもよって、何故、自分を選んだのか。
(もしかして、わたくしに同情されたの?)
それなら、有り得る。それしか、思いつかない。
マクシミリアンは、他人に手を差し伸べずにはいられない人だ。
クリスティーナが競売に出されたことが噂か何かで耳に入って、きっと、彼は黙っていられなくなったのだ。
頭の中が真っ白で何も考えることができないクリスティーナだったけれども、興に乗ったアランが得々と口にした言葉に、目をしばたたかせた。
その姿が庭木の陰に消えて行った後も、クリスティーナはもしかしたら彼が戻ってくるのではないかと思って、同じ方向を見つめ続けた。
規則正しく白い息が揺蕩い、消える。
それを三十ほど数えて、もうマクシミリアンが戻ることはないだろうと確信した。
よほど、彼は混乱していたのだろう。
クリスティーナをこんなふうに置き去りにしたことこそ、マクシミリアンがいつもの彼ではない証拠だった。
明日の朝、彼は「酔っていたから」とでも言うのだろうか。
そう、申し訳なさそうに微笑んで、クリスティーナのことを気遣うのだろう――きっと。
その時彼が浮かべる笑顔さえ、簡単に想像できる。
クリスティーナは小さく息をつき、次いでブルリと身を震わせた。
独りきりになって、急に寒さを実感する。
「戻りましょう」
誰にともなくつぶやいて、クリスティーナは歩き出した――歩き出そうとした。
「!?」
一歩を踏み出そうと足を上げたところで彼女は突然腕を掴まれ、後ろに引かれる。
よろけたクリスティーナは倒れ込みそうになり、背後にそびえ立つ何かに助けられた。
その何かが、彼女の耳元で囁く。
「よう、久しぶり」
パッと飛びのきざまに振り返り、そこに佇む者に、クリスティーナは目を丸くした。
「……お、兄さま……?」
ずいぶんと崩れた格好をしているけれども、間違えようがない。
確かに、アランだ。
「うちにいた時よりも元気そうじゃないか、ええ?」
彼は掴んでいたクリスティーナの二の腕を放すと、彼女の頭の天辺からドレスの裾までじろじろと眺め回した。
そういうアランは酒の匂いをプンプンとさせていて、衣服の乱れもひどい。上着にもズボンにもところどころに何かの染みが付いていて、数日、着替えていないのではないだろうかとさえ思わせた。
異母兄の不躾な視線に怯みつつ、おずおずと、クリスティーナは言う。
「お越しになるとは、思っていませんでした」
父と一緒にアランにも招待状を送ったけれどコデルロスが招きを断ったのだから、当然アランもそうだと思っていた。
「ふん。来ない方が良かった、の間違いだろう?」
「いいえ、そのようなことは……来てくださって、うれしいです」
クリスティーナがかぶりを振ると、アランは鼻で嗤った。
「お前はいつでもそうだな。相手の耳に心地良いことしか口にしない」
嘲る口調でそう言って、アランはヨロりとふら付いた。息の臭いからも明らかだけれども、すでにずいぶんと酔っ払っているらしい。もしかすると、ストレイフ家に入る前からかなりの酒を過ごしていたのかもしれない。
一歩下がって一人で立つ彼は、ふらふらと揺れ続けている。クリスティーナが指先で突いたら、すぐさまその場にへたり込んでしまいそう。
以前からアランは酒や賭博に弱かったけれども、ここまで荒んだ様子を見せるのは初めてだ。
「お兄さま……少し、お酒をお控えになった方が良いのでは……」
「はあ?」
赤く充血した目が、ギラリと光ってクリスティーナに向く。
「今、なんて?」
かつてのクリスティーナなら、ここで押し黙っていた。けれど、今の彼女はマクシミリアンの妻だ。このストレイフの屋敷の中で、兄に遠慮してその醜態を見過ごすわけにはいかない。
小さく息を吸い、さっきよりもはっきりと告げる。
「お酒が、過ぎるのではないかと申し上げました」
「ずいぶんと偉そうだな、ええ?」
アランの手が伸びてきて、再びクリスティーナの腕を掴む。今度はただ捉えるだけでなく、彼女を懲らしめようとするかのように必要以上の力が込められていた。
きつく締め付けられて、指先が痺れそうだ。
けれどもクリスティーナは、顎を上げて異母兄を見上げた。
「今のわたくしはお兄さまの妹ではなく、ストレイフの妻です。彼のために為すべきことを為さねばなりません。お兄さまが他のお客さまに不快な思いをさせる前に、お引き取り願います」
きっぱりとそう言い切ると、ギリ、とアランの指の力が増した。
きっと、痣になる。
けれど、引くわけにはいかない。
気弱なはずの異母妹の予想外の抵抗に、アランは怯むと同時に腹を立てたようだ。
「えらく威勢がいいな――金で売られた女のくせに」
毒々しい声で、彼が吐き捨てた。
脅しつけるその声音に怯えるよりも先に、クリスティーナはその言葉の中身に眉をひそめる。
「え……?」
(お金で、売られた?)
心許なく眼差しを揺らしたクリスティーナに、アランが一気に勢いづく。
「なんだよ、知らなかったのか? お前を買おうって奴は、六人はいたんだよ。ストレイフを含めてな」
「それは、どういうことですか?」
確かに、この婚姻は父とマクシミリアンとの事業上の取引も含んでいる筈だ。それはクリスティーナも承知している。
けれど、彼女のことを『買う』というのは、どういう意味なのだろう。
それでは、まるでコデルロスが一方的に利益を得たように聞こえる。
ジワリと不安が滲み始めたクリスティーナの目を、アランが愉快そうに覗き込んだ。
「オレの借金がちょっと嵩んじまってな。親父も自分の金を出すのが嫌になったみたいで、元手なく売り出せるもんを競売にかけたってわけだ。前から、お前を寄越せってヒヒオヤジどもがせっつき始めてたんだよ。お前もまあボチボチいい年頃だしな」
そこでアランが数名の名前を挙げる。
三人は四十歳を軽く超えていて、残る二人はまだ三十代だけれどもクリスティーナに会うたび何とも嫌な視線を投げかけてきた男性だ。
どの男性も、マクシミリアンの足元にも及ばない――並べる気にもならない人たちばかりだ。
その人たちが、自分の夫候補だった。
父は、借金の肩代わりに自分を売りに出した。
今になってそう聞かされて、クリスティーナはその場にへたり込みそうになる。それを支えているのは、皮肉にも、アランの両手だった。
愕然としているクリスティーナに、アランが得々と続ける。
「最初は、ストレイフは入っていなかったんだよ。別に広告出したわけじゃないってのに、どこかから聞き付けたらしいぜ? だいぶ遅れての参戦だったがな、奴が一番高値を付けた。それもバカみたいな値段をな。オレの借金返してまだ余る。一発であいつに決まったよ」
「でも、お父さまとマクシミリアンさまは、お仕事で――」
「ああ? 仕事? あの強欲親父が誰かと手を組むわけがないだろ」
バカにしたように、アランが言い放った。
(では、この結婚は、マクシミリアンさまには何の益もないものだったの――?)
その後もアランは何か言い続けていたけれども、呆然としたクリスティーナの耳を右から左へと通り抜けていく。
父に『売りに出されたこと』はクリスティーナの心を打ちのめした。
けれど、それ以上に、マクシミリアンのことで頭がいっぱいになる。
(あの方にとって利益に――いいえ、損ばかりなら、どうしてわたくしを娶られたの?)
マクシミリアンほどの人物なら、結婚相手は引く手数多だったはず。
いくらでも選びようがあったのに、よりにもよりにもよって、何故、自分を選んだのか。
(もしかして、わたくしに同情されたの?)
それなら、有り得る。それしか、思いつかない。
マクシミリアンは、他人に手を差し伸べずにはいられない人だ。
クリスティーナが競売に出されたことが噂か何かで耳に入って、きっと、彼は黙っていられなくなったのだ。
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