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冬
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朝起きて、カーテンの間から見えるのが真っ白な世界だったら、すっごくワクワクしない? あたしはする。めちゃくちゃ、する。いつもなら寒くてなかなかおふとんから出られないのを、ピョンって飛び出しちゃうくらい。
今日が、そうだった。
「うわぁ、チィちゃん、起きて起きて!」
となりで寝ているチィちゃんを揺さぶると、眠そうに目をこすりながらモソモソって起き上がった。
「どうしたの、なっちゃん?」
いつもはチィちゃんの方が早起きなんだけどね。寝ぼけてる時のチィちゃんは、もう、転げまわりたくなるくらいに可愛くて、雪だけでも嬉しいのに、もっともっと得した気分になっちゃった。
「外、見てよ、ほら!」
「お外……?」
あたしの言うとおりに四つん這いになって身を乗り出したチィちゃんは、窓の外を見て、元から大きな目を、もっと大きくする。
「雪だぁ……」
「ね?」
ただの雪じゃなくて、たくさん積もった、雪。
「すごぉい。おひざくらいまで、あるかなぁ?」
「あるよ、絶対、ある。ね、早く行こうよ」
足踏みしながらチィちゃんの手をひっぱると、仕方がないなぁっていう顔で笑いながらベッドから下りてくる。
「寒いね」
そう言ってブルッてしたから、あたしはチィちゃんの手を握ってあげた。
「ふふ、なっちゃんの手ってあったかい。湯たんぽみたいだね」
あたしの手を握り返してきたチィちゃんは、ふんわりと笑う。その笑顔に、あたしのおなかはホットチョコレートを飲んだ時みたいに、ほっこりとあったかくなった。
*
朝ごはんを食べてから、あたしとチィちゃんはお外に飛び出した。
色々なものが光を弾いて、あちらこちらがキラキラしてる。
雪はやっぱりひざのちょっとしたくらいまで積もっていて、よっこいしょって足を上げながらじゃないと歩けなかった。あたしよりももうちょっと小さいチィちゃんはひざの上まで埋まっちゃって、もっと大変そう。
「かまくら、つくろっか。雪玉転がしたら、道もできるよ?」
あたしが言うと、少し息を切らしたチィちゃんも頷いた。
「そうだね」
始まりは、小さな雪玉。
それを転がすと、だんだん大きくなっていく。
あたしのおなかよりも少し高いくらいになったら、なかなか動かなくなった。
「チィちゃん、もう、このくらいにしようか。あとは、スコップで大きくしようよ」
「うん」
「じゃ、スコップ取ってくるから、チィちゃんはちょっと待ってて」
玄関のドアの横に置いておいた二つのスコップを取ると、引きずりながらチィちゃんのところに戻った。片方をチィちゃんに渡して、雪玉にどんどん雪をのせていく。
時々、スコップでトントンって叩いて、山を硬くして。入ってる時につぶれちゃったら、大変だからね。あたしの背丈よりも高くなったら木箱を持ってきて、その上にのって、また、トントン。
時間はかかったけど、けっこう大きな山ができあがった。
「このくらいでいいかな?」
あたしがそうきくと、チィちゃんは雪山をペタペタ触って確かめて、うなずく。
「だいじょうぶそう」
「じゃあ、中をくり抜こっか」
空のお日さまが一番高いところをちょっと過ぎた頃、かまくらはできあがった。あたしとチィちゃんが入ったら、それだけでいっぱいになっちゃうような、小さなかまくら。
でも、あたしは大満足だった。チィちゃんも、かまくらを見上げながら隣でニコニコしてる。しばらくそうしていたけれど、あたしのおなかがクルクルって、鳴き声を上げた。
「ふふ、なっちゃんのおなかって、正直だね。もうお昼ごはんの時間だよ。何か食べよう?」
「んー、じゃあ、この中で食べよっか?」
あたしがかまくらを指差すと、チィちゃんはちょっと考えて、首をかしげた。
「でも、せまいよ?」
「せっかく作ったんだもん、いいでしょ?」
両手を合わせて、おねだりしてみる。チィちゃんはまた少し迷ってたみたいだけど、うなずいてくれた。
「じゃあ、お外で食べられるものにしよ? サンドイッチとか」
「ありがとう!」
あたしがギュッてすると、チィちゃんはくすぐったそうに声をあげた。
*
かまくらの中は、あたしとチィちゃんでいっぱいいっぱいだった。ピッタリ身体をくっつけて、卵サラダのサンドイッチを食べて、カボチャのポタージュスープをすする。
かまくらの外は、いつの間にか、またサラサラの粉雪が落ちてきてた。
積もった雪が音を吸い込んで、とっても静か。
セーターごしにチィちゃんの温度が伝わってきて、あたしはそこからじんわりとあったかくなる。
他にはだぁれもいなくって、あたしとチィちゃんの二人きり。
そう思ったら、何となく、胸の中がキュゥンってなった。
あたしは、チィちゃんの頭に頬ずりする。
「なっちゃん?」
あたしは返事をしなかった。
チィちゃんはちょっと首をかしげて、話し出す。
「あのね、雪って、六花っていうふうにも呼ぶんだって。ほら、虫めがねでのぞくと、お花みたいにみえるでしょ?」
優しくて甘い、チィちゃんの声。
……しあわせ、だな。
フワッて胸の奥から浮き上がってくるみたいに、そんな気持ちになる。
「チィちゃん、大好き」
あたしが言うと、チィちゃんは目をぱちくりさせた。そして、言う。
「あたしも、なっちゃんのことが大好きだよ」
チィちゃんは、笑う。
花が咲いたように、ふんわりと。雪の中の、たった一輪の、花。
チィちゃんといっしょなら、いつでもあたしはしあわせなんだ。
だから、あたしとチィちゃんは、ずっといっしょ。
きっと、チィちゃんも同じ気持ち。
そうでしょ、チィちゃん?
お母さんのおなかの中のふたごみたいに寄り添って、あたしとチィちゃんはいつまでも雪が降るのを眺めてたんだ。
いつまでも、ね。
今日が、そうだった。
「うわぁ、チィちゃん、起きて起きて!」
となりで寝ているチィちゃんを揺さぶると、眠そうに目をこすりながらモソモソって起き上がった。
「どうしたの、なっちゃん?」
いつもはチィちゃんの方が早起きなんだけどね。寝ぼけてる時のチィちゃんは、もう、転げまわりたくなるくらいに可愛くて、雪だけでも嬉しいのに、もっともっと得した気分になっちゃった。
「外、見てよ、ほら!」
「お外……?」
あたしの言うとおりに四つん這いになって身を乗り出したチィちゃんは、窓の外を見て、元から大きな目を、もっと大きくする。
「雪だぁ……」
「ね?」
ただの雪じゃなくて、たくさん積もった、雪。
「すごぉい。おひざくらいまで、あるかなぁ?」
「あるよ、絶対、ある。ね、早く行こうよ」
足踏みしながらチィちゃんの手をひっぱると、仕方がないなぁっていう顔で笑いながらベッドから下りてくる。
「寒いね」
そう言ってブルッてしたから、あたしはチィちゃんの手を握ってあげた。
「ふふ、なっちゃんの手ってあったかい。湯たんぽみたいだね」
あたしの手を握り返してきたチィちゃんは、ふんわりと笑う。その笑顔に、あたしのおなかはホットチョコレートを飲んだ時みたいに、ほっこりとあったかくなった。
*
朝ごはんを食べてから、あたしとチィちゃんはお外に飛び出した。
色々なものが光を弾いて、あちらこちらがキラキラしてる。
雪はやっぱりひざのちょっとしたくらいまで積もっていて、よっこいしょって足を上げながらじゃないと歩けなかった。あたしよりももうちょっと小さいチィちゃんはひざの上まで埋まっちゃって、もっと大変そう。
「かまくら、つくろっか。雪玉転がしたら、道もできるよ?」
あたしが言うと、少し息を切らしたチィちゃんも頷いた。
「そうだね」
始まりは、小さな雪玉。
それを転がすと、だんだん大きくなっていく。
あたしのおなかよりも少し高いくらいになったら、なかなか動かなくなった。
「チィちゃん、もう、このくらいにしようか。あとは、スコップで大きくしようよ」
「うん」
「じゃ、スコップ取ってくるから、チィちゃんはちょっと待ってて」
玄関のドアの横に置いておいた二つのスコップを取ると、引きずりながらチィちゃんのところに戻った。片方をチィちゃんに渡して、雪玉にどんどん雪をのせていく。
時々、スコップでトントンって叩いて、山を硬くして。入ってる時につぶれちゃったら、大変だからね。あたしの背丈よりも高くなったら木箱を持ってきて、その上にのって、また、トントン。
時間はかかったけど、けっこう大きな山ができあがった。
「このくらいでいいかな?」
あたしがそうきくと、チィちゃんは雪山をペタペタ触って確かめて、うなずく。
「だいじょうぶそう」
「じゃあ、中をくり抜こっか」
空のお日さまが一番高いところをちょっと過ぎた頃、かまくらはできあがった。あたしとチィちゃんが入ったら、それだけでいっぱいになっちゃうような、小さなかまくら。
でも、あたしは大満足だった。チィちゃんも、かまくらを見上げながら隣でニコニコしてる。しばらくそうしていたけれど、あたしのおなかがクルクルって、鳴き声を上げた。
「ふふ、なっちゃんのおなかって、正直だね。もうお昼ごはんの時間だよ。何か食べよう?」
「んー、じゃあ、この中で食べよっか?」
あたしがかまくらを指差すと、チィちゃんはちょっと考えて、首をかしげた。
「でも、せまいよ?」
「せっかく作ったんだもん、いいでしょ?」
両手を合わせて、おねだりしてみる。チィちゃんはまた少し迷ってたみたいだけど、うなずいてくれた。
「じゃあ、お外で食べられるものにしよ? サンドイッチとか」
「ありがとう!」
あたしがギュッてすると、チィちゃんはくすぐったそうに声をあげた。
*
かまくらの中は、あたしとチィちゃんでいっぱいいっぱいだった。ピッタリ身体をくっつけて、卵サラダのサンドイッチを食べて、カボチャのポタージュスープをすする。
かまくらの外は、いつの間にか、またサラサラの粉雪が落ちてきてた。
積もった雪が音を吸い込んで、とっても静か。
セーターごしにチィちゃんの温度が伝わってきて、あたしはそこからじんわりとあったかくなる。
他にはだぁれもいなくって、あたしとチィちゃんの二人きり。
そう思ったら、何となく、胸の中がキュゥンってなった。
あたしは、チィちゃんの頭に頬ずりする。
「なっちゃん?」
あたしは返事をしなかった。
チィちゃんはちょっと首をかしげて、話し出す。
「あのね、雪って、六花っていうふうにも呼ぶんだって。ほら、虫めがねでのぞくと、お花みたいにみえるでしょ?」
優しくて甘い、チィちゃんの声。
……しあわせ、だな。
フワッて胸の奥から浮き上がってくるみたいに、そんな気持ちになる。
「チィちゃん、大好き」
あたしが言うと、チィちゃんは目をぱちくりさせた。そして、言う。
「あたしも、なっちゃんのことが大好きだよ」
チィちゃんは、笑う。
花が咲いたように、ふんわりと。雪の中の、たった一輪の、花。
チィちゃんといっしょなら、いつでもあたしはしあわせなんだ。
だから、あたしとチィちゃんは、ずっといっしょ。
きっと、チィちゃんも同じ気持ち。
そうでしょ、チィちゃん?
お母さんのおなかの中のふたごみたいに寄り添って、あたしとチィちゃんはいつまでも雪が降るのを眺めてたんだ。
いつまでも、ね。
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