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悪役貴族のニューゲーム!
ネイトの成長
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「それではまず、いつも通り組手から始めましょう。皆様、こちらへ」
テレサが指を鳴らすと、庭で各々トレーニングをしていた兵士達がぞろぞろと俺の前にやって来た。
傍から見ればリンチの現場に見えるだろうけど、これも立派な訓練の一環だ。
一対多数で戦う訓練で、俺にとってはすっかり慣れたものだ。
「そんじゃあいきますぜ、坊ちゃん!」
「誰でも坊ちゃんをノックアウトすれば、給料は倍! 忘れちゃいないでしょうね!」
「おう、もちろんだ! どっからでもかかってこい!」
言うが早いか、兵士達が一斉に殴りかかってきた。
転生してすぐ、あるいは1か月しか経ってない頃の俺ならきっと、憂さ晴らしも含めて立てなくなるくらいボコボコにされてただろうな。
けど、今は違う。
「よっと!」
俺は全員の攻撃をひらりとかわして、足を引っかけるように蹴り上げた。
「おわぁ!?」
「嘘だろ、いつの間に後ろに……うおっ!」
相手が驚く間に、たちまち俺は兵士を転ばせてゆく。
背中に肘打ち、首筋に水平打撃、無防備な腕を掴んでひっくり返す。
ものの数秒で俺の前には天を仰ぐ兵士達が転がった。
「マジか……俺達、もしかして最速でやられちまったのか……?」
「ははは! 自信なくしちまうな、こりゃ!」
「まさか、いつも訓練に付き合ってくれたおかげだ……ほら、立てる?」
「ありがとさん、っと。ネイト坊ちゃん、すっかり立派な男の顔つきになりましたねえ」
男の顔つきってのがどんなのか分からないけど、皆に褒められてるのはきっと確かだ。
手を差し伸べて彼らを起こした俺に、テレサが拍手をする。
「お見事でございます、ネイト様。テレサが指導した格闘スキルを、すっかり自らのものにされましたね」
でも、訓練はまだまだ続く。
次に横一列に並んだのは、ゴールディング家に仕えるメイド達だ。
「お次は魔法訓練です。ゴールディング家が誇る魔法の熟練者、戦闘メイド達の魔法攻撃をどう回避されるのか、テレサにお見せください」
ここのメイド達は、誰もが魔法を使う。
家事に使うのももちろんだけど、有事には戦いに参加できるように、戦闘用の属性魔法・もしくは無属性魔法を使えるのが、ここで働く最低条件らしい。
そして彼女達もまた、兵士達と同じように俺と約束を交わしている。
魔法で一撃でも俺にダメージを与えれば、給料込みで1日サボり放題って約束を。
「では、先輩方。お願いします」
「オッケー! テレサちゃん、あなたの主人だからって容赦しないわよ!」
これまた間髪入れず、メイド達は一斉に両手に魔力を溜め込み、俺にかざした。
「「土魔法! ストーンバルカン!」」
すると、地面が一斉に盛り上がり、メイド達の意志に従うかのように石つぶてとなって一斉に発射された。
メイドの得意な魔法は土魔法だってのは知ってる。
というのも、魔法の本格的な訓練を始めた時、散々土魔法でぶっ飛ばされたからだ。おかげで何度も、彼女達にはサボりの機会を与えてしまった。
もちろん、今はそうはいかないけどな!
「水魔法レベル4! 風魔法レベル3!」
右手に水の魔力、左手に風の魔力を集中させる。
渦巻く水流と烈風を手のひらに抑え込んだ俺は、一気にそれらを地面にたたきつけた。
「融合魔法レベル7――『氷結城壁』っ!」
俺の手から解き放たれた水が、逆流する滝の如く地面から天に上ったのを、使っている自分が寒気を感じるほどの強風でたちまち凍り付き、分厚い氷の壁になった。
大量の魔力を練り込まれた、砲撃をくらってもひび一つ入らない硬度を誇る防壁だ。
石つぶてがどれだけ直撃しても、氷の壁はびくともしなかった。
彼女達がむきになって魔法を発動していると、ぜいぜいと息切れの声が聞こえてきた。
「ま……魔力を使いすぎましたね……」
「というか、硬すぎるでしょ……私達8人そろって魔法を撃ち込んで、傷ひとつつかないなんて、信じられないわよ……!」
どうやら今回は、俺の勝ちみたいだ。
「よし、それじゃあ仕事に戻ってくれ。訓練に付き合ってくれて、ありがとな」
「ぐぬぬ~っ! 次こそはサボらせてもらいますからねっ!」
すごすごと引き下がるメイド達を見て、俺ははにかんだ。
とにもかくにも、これで兵士とメイドは倒した。後はいつも通り、ラスボスであるテレサとの模擬戦闘で締める。
だけど、今日は少しだけ違った。
「これまたお見事です、ネイト様。なんだか、テレサも気分が高まってまいりました」
彼女がすっと手を右に突き出すと、ぐにゃりと空間が歪み、腕が入っていく。
異空間にアイテムを収納する無属性魔法、インベントリってやつだ。
「では、テレサも今回だけ、久方ぶりに武器を用いるとしましょう」
そう言って彼女が異空間から引きずり出したのは、どデカい白銀の斧。
ゲームではほんのわずかしか出てこないけど、ここじゃあ違う。
「相変わらず壮観だよな――竜の首を断つ斧、『ベノムバイト』は」
「お褒めの言葉をいただけるとは、感謝の極みでございます」
ぺこりと頭を下げるテレサの真骨頂――それは、とんでもない怪力なんだ。
俺よりもずっと小柄なテレサが、どうしてロボットアニメに出てきそうな大斧を振り回せるかというと、彼女の得意な無属性魔法『パワーサポート』のおかげだ。
腕にまとった魔力のおかげで、今のテレサは素手で岩も簡単に砕ける。
属性魔法を使える代わりに無属性はからっきしな俺にはない、すごいところだな。
「一応聞いとくけど、俺の体が真っ二つにされる、なんてことはないよな?」
「ご安心ください。斧はテレサの腕力で刃を潰しておりますので、ネイト様の四肢を斬り落とすことはありません」
(あれをどうにかするってなると、こっちも武器が必要だな。だったら……)
ま、俺も感心してるだけじゃないんだぜ。
今度は左手に雷魔法、右手に土魔法の魔力を溜め込んで、解き放つ準備をする。
「雷魔法、レベル3! 土魔法、レベル3! 融合魔法――」
土の魔法で鋼を生み出し、雷で精錬する。
粗削りな形を次第に複数の刃の姿に変えて、迸る電気でつなぎ合わせて、腕に巻き付くことで俺の武器は完成した。
「――レベル6! 『雷鳴鞭剣』!」
刃を繋いで、鞭のようにしならせる剣――蛇腹剣だ。
雷は俺にダメージを与えないけど、威嚇代わりに地面をそれで叩くと、凄まじい音と共に庭がえぐり取られる。
まるで、雷そのものを腕に巻きつけているような気分だ。
少し危険だけど、テレサを相手にするならこれでもまだ足りないかもな。第一、こっちもテレサの体を斬らないように切れ味は限界まで落としてあるんだから。
「素晴らしい魔法です。テレサは感激しましたが、容赦はいたしません」
「そりゃ必要ないな。武器を使った模擬戦は初めてなんだ、これまでの修業の成果をたっぷりとぶつけさせてもらうぜ……そっちが怪我しない程度に!」
「……やはりあなたは、お優しいのですね」
一瞬だけ、テレサが微笑んだように見えた。
けど、そんなのはたちまち気にならなくなった。
「では――不肖テレサ・カティム、参ります」
まばたきの間に、テレサが俺との距離を詰めていたからだ。
小さな体躯で振りかぶった大斧が、俺の頭を叩き潰さんとばかりに振り下ろされた。
テレサが指を鳴らすと、庭で各々トレーニングをしていた兵士達がぞろぞろと俺の前にやって来た。
傍から見ればリンチの現場に見えるだろうけど、これも立派な訓練の一環だ。
一対多数で戦う訓練で、俺にとってはすっかり慣れたものだ。
「そんじゃあいきますぜ、坊ちゃん!」
「誰でも坊ちゃんをノックアウトすれば、給料は倍! 忘れちゃいないでしょうね!」
「おう、もちろんだ! どっからでもかかってこい!」
言うが早いか、兵士達が一斉に殴りかかってきた。
転生してすぐ、あるいは1か月しか経ってない頃の俺ならきっと、憂さ晴らしも含めて立てなくなるくらいボコボコにされてただろうな。
けど、今は違う。
「よっと!」
俺は全員の攻撃をひらりとかわして、足を引っかけるように蹴り上げた。
「おわぁ!?」
「嘘だろ、いつの間に後ろに……うおっ!」
相手が驚く間に、たちまち俺は兵士を転ばせてゆく。
背中に肘打ち、首筋に水平打撃、無防備な腕を掴んでひっくり返す。
ものの数秒で俺の前には天を仰ぐ兵士達が転がった。
「マジか……俺達、もしかして最速でやられちまったのか……?」
「ははは! 自信なくしちまうな、こりゃ!」
「まさか、いつも訓練に付き合ってくれたおかげだ……ほら、立てる?」
「ありがとさん、っと。ネイト坊ちゃん、すっかり立派な男の顔つきになりましたねえ」
男の顔つきってのがどんなのか分からないけど、皆に褒められてるのはきっと確かだ。
手を差し伸べて彼らを起こした俺に、テレサが拍手をする。
「お見事でございます、ネイト様。テレサが指導した格闘スキルを、すっかり自らのものにされましたね」
でも、訓練はまだまだ続く。
次に横一列に並んだのは、ゴールディング家に仕えるメイド達だ。
「お次は魔法訓練です。ゴールディング家が誇る魔法の熟練者、戦闘メイド達の魔法攻撃をどう回避されるのか、テレサにお見せください」
ここのメイド達は、誰もが魔法を使う。
家事に使うのももちろんだけど、有事には戦いに参加できるように、戦闘用の属性魔法・もしくは無属性魔法を使えるのが、ここで働く最低条件らしい。
そして彼女達もまた、兵士達と同じように俺と約束を交わしている。
魔法で一撃でも俺にダメージを与えれば、給料込みで1日サボり放題って約束を。
「では、先輩方。お願いします」
「オッケー! テレサちゃん、あなたの主人だからって容赦しないわよ!」
これまた間髪入れず、メイド達は一斉に両手に魔力を溜め込み、俺にかざした。
「「土魔法! ストーンバルカン!」」
すると、地面が一斉に盛り上がり、メイド達の意志に従うかのように石つぶてとなって一斉に発射された。
メイドの得意な魔法は土魔法だってのは知ってる。
というのも、魔法の本格的な訓練を始めた時、散々土魔法でぶっ飛ばされたからだ。おかげで何度も、彼女達にはサボりの機会を与えてしまった。
もちろん、今はそうはいかないけどな!
「水魔法レベル4! 風魔法レベル3!」
右手に水の魔力、左手に風の魔力を集中させる。
渦巻く水流と烈風を手のひらに抑え込んだ俺は、一気にそれらを地面にたたきつけた。
「融合魔法レベル7――『氷結城壁』っ!」
俺の手から解き放たれた水が、逆流する滝の如く地面から天に上ったのを、使っている自分が寒気を感じるほどの強風でたちまち凍り付き、分厚い氷の壁になった。
大量の魔力を練り込まれた、砲撃をくらってもひび一つ入らない硬度を誇る防壁だ。
石つぶてがどれだけ直撃しても、氷の壁はびくともしなかった。
彼女達がむきになって魔法を発動していると、ぜいぜいと息切れの声が聞こえてきた。
「ま……魔力を使いすぎましたね……」
「というか、硬すぎるでしょ……私達8人そろって魔法を撃ち込んで、傷ひとつつかないなんて、信じられないわよ……!」
どうやら今回は、俺の勝ちみたいだ。
「よし、それじゃあ仕事に戻ってくれ。訓練に付き合ってくれて、ありがとな」
「ぐぬぬ~っ! 次こそはサボらせてもらいますからねっ!」
すごすごと引き下がるメイド達を見て、俺ははにかんだ。
とにもかくにも、これで兵士とメイドは倒した。後はいつも通り、ラスボスであるテレサとの模擬戦闘で締める。
だけど、今日は少しだけ違った。
「これまたお見事です、ネイト様。なんだか、テレサも気分が高まってまいりました」
彼女がすっと手を右に突き出すと、ぐにゃりと空間が歪み、腕が入っていく。
異空間にアイテムを収納する無属性魔法、インベントリってやつだ。
「では、テレサも今回だけ、久方ぶりに武器を用いるとしましょう」
そう言って彼女が異空間から引きずり出したのは、どデカい白銀の斧。
ゲームではほんのわずかしか出てこないけど、ここじゃあ違う。
「相変わらず壮観だよな――竜の首を断つ斧、『ベノムバイト』は」
「お褒めの言葉をいただけるとは、感謝の極みでございます」
ぺこりと頭を下げるテレサの真骨頂――それは、とんでもない怪力なんだ。
俺よりもずっと小柄なテレサが、どうしてロボットアニメに出てきそうな大斧を振り回せるかというと、彼女の得意な無属性魔法『パワーサポート』のおかげだ。
腕にまとった魔力のおかげで、今のテレサは素手で岩も簡単に砕ける。
属性魔法を使える代わりに無属性はからっきしな俺にはない、すごいところだな。
「一応聞いとくけど、俺の体が真っ二つにされる、なんてことはないよな?」
「ご安心ください。斧はテレサの腕力で刃を潰しておりますので、ネイト様の四肢を斬り落とすことはありません」
(あれをどうにかするってなると、こっちも武器が必要だな。だったら……)
ま、俺も感心してるだけじゃないんだぜ。
今度は左手に雷魔法、右手に土魔法の魔力を溜め込んで、解き放つ準備をする。
「雷魔法、レベル3! 土魔法、レベル3! 融合魔法――」
土の魔法で鋼を生み出し、雷で精錬する。
粗削りな形を次第に複数の刃の姿に変えて、迸る電気でつなぎ合わせて、腕に巻き付くことで俺の武器は完成した。
「――レベル6! 『雷鳴鞭剣』!」
刃を繋いで、鞭のようにしならせる剣――蛇腹剣だ。
雷は俺にダメージを与えないけど、威嚇代わりに地面をそれで叩くと、凄まじい音と共に庭がえぐり取られる。
まるで、雷そのものを腕に巻きつけているような気分だ。
少し危険だけど、テレサを相手にするならこれでもまだ足りないかもな。第一、こっちもテレサの体を斬らないように切れ味は限界まで落としてあるんだから。
「素晴らしい魔法です。テレサは感激しましたが、容赦はいたしません」
「そりゃ必要ないな。武器を使った模擬戦は初めてなんだ、これまでの修業の成果をたっぷりとぶつけさせてもらうぜ……そっちが怪我しない程度に!」
「……やはりあなたは、お優しいのですね」
一瞬だけ、テレサが微笑んだように見えた。
けど、そんなのはたちまち気にならなくなった。
「では――不肖テレサ・カティム、参ります」
まばたきの間に、テレサが俺との距離を詰めていたからだ。
小さな体躯で振りかぶった大斧が、俺の頭を叩き潰さんとばかりに振り下ろされた。
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