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第3章

3-4 アンギリア国に行った

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 次の日、午前の鐘の後でモトヤたち4人は再びドナートさんの店を訪ねた。

「モトヤさん、ヒナノさん、おはようございます」
「今日はどの様なご用件でしょうか」

「実は弟子のヨウスケとユカをアンギリアの国立魔法学園に行かせたいのですが何か情報をお持ちで無いですか」

「そうですね、平民の身分でも構いませんが、ケトマス王にミスリル製のゴーレムを献上されてはいかがでしょうか」

「ヒナノ様はエリクサーを作れますか?」
「ええ、材料は全てありますから作るのは可能です」

「ケトマス王にエリクサーとミスリル製のゴーレムを献上して、一代限りの準男爵の爵位をもらうのです」
「その後で、ヨウスケさんとユカさんを養子縁組して迎えれば晴れて貴族の仲間入りが出来ます」

「そうか、その手があったか」
「ドナートさん、お願いがあるのですが、国立魔法学園の情報が有れば教えて下さい」

「モトヤさん、わかりました、明日はアンギリア国に仕入れに飛びますので国立魔法学園の情報を聞いておきます」

「ありがとうございます、助かります」
「ドナートさん、このミスリルのゴーレムは差し上げますので試しに護衛としてお店で使ってください」
「モトヤさん、いいのですか」

「はい、国王に献上する前にドナートさんに試していただきたいのです」
「サモンゴーレム」

「イレース」
「これで次からはドナートさんの命令だけを受け付けます。ゴーレムの起動呪文はアンギリア語の『ブート』です」

「ありがとうございます」
「では、早速起動させていただきます」

「ブート」
「こんにちは、ご主人様、命令をどうぞ」

「ひょっとしてオートマタを解析されたのですか」
「はい、オートマタの声帯を真似させていただきました」

「ドナートさん、ありがとうございました、家に戻ってエリクサーの準備をします」
「モトヤさん、こちらこそありがとうございました」
 4人はケトマス港に戻り転移門でログハウスに移動してきた。

「ヒナノ、今から国立魔法学園の裏庭に転移門で移動しようか」
「モトヤ、アンギリアとは時差があるから、今から移動すると夜中の12時になるわよ」

「じゃぁ、先にエリクサーの作成だな」
「ヨウスケは献上用のゴーレムを5体作ってくれ」

「はい」

「ユカ、ジーナ、エリクサーの材料を集めてきて」
「「はい」」

「ザドキエル、樫の木の場所を教えてくれ」
「はい、この前抜根した木が収納に保管してありますので直ぐに利用可能です」

「ヨウスケさん、ゴーレムは『クリエイトゴーレム』で作成できます」
「クリエイトゴーレム」

「モトヤさん、ゴーレムの躯体作成が終わりました」

「ザドキエル、ミスリル鉱石は足りるのか」
「はい、充分にあります」

「では、ミスリルのプレートアーマーを作ります」
 ドドーン、ドドーン、ドドーン、ドドーン、ドドーン、銀色のゴーレムナイトが5体出来上がった。

「ヨウスケ、エクスカリバーを5本作ってくれ」
「攻撃+3とプレートアーマーは防御+3のエンチャントだ」

「ザドキエル、エクスカリバーを映して」

「こちらです」
 ドドーン、ドドーン、ドドーン、ドドーン、ドドーン、ミスリルと装飾が施された、聖剣エクスカリバーが出来上がった。

「モトヤさん、鑑定をお願いします」

「よし上出来だ、攻撃+3、防御+3が付与されているよ」

「よかったです」

◇ ◇ ◇ ◇

「ユカ、ジーナ、私たちも仕事よ」
「ユカ、エリクサーのメモを読み上げて」

「はい」
「エリクサーはハターニャ、ルバーブ、リンドウ、ターメリック、サフラン、酒精、魔力水です」

「ジーナ、薬師の大鍋を用意して」
「はい」

「ユカ、大鍋に魔力水を満たして」
「はい」

「ジーナ、材料を細かくしてから大鍋に入れて」
「はい」

「ユカ、『サンクチュアリー』よ」
「サンクチュアリー」
 大鍋が金色に光って、エリクサーが完成した。

「ユカ、鑑定してみて」

◇ ◇ ◇ ◇

エリクサー
あらゆる外傷を完全回復する
あらゆる状態異常を完全回復する
失われた体力を完全回復する
骨折、欠損を完全回復する
死者を蘇らせる

◇ ◇ ◇ ◇

「モトヤ、出来たわよ」
「ヒナノ、凄いな」

「ドナートさんに魔道具で連絡を入れておくよ」
「ええ」

 モトヤは直ぐにドナートさんの店に行き、見本のエリクサーを差し出した。
「モトヤさん、もうエリクサーを作られたのですか」

「はい」
「ヒナノとユカとジーナが頑張ってくれました」
「ジーナとはオートマタの名前です」

「それにしても凄いです、まさか本物のエリクサーを見られるとは思いませんでした」

「ドナートさん、よかったら1本差し上げます」

「えっ、頂いてもいいのですか」
「はい、献上する分は別で用意していますので」

「ありがとうございます」

「では、国王への献上は3週間後に私の店に来て下さい」
「それまでに文官さんを通じて準備しておきます」
「謁見はその1週間後になると思います」

「では、よろしくお願いします」
 モトヤは礼を行って、店を後にした。

◇ ◇ ◇ ◇

「ヒナノ、国立魔法学園に行ってみるか」
「ええ、丁度、朝の6時頃だと思うわ」
「ジーナ、留守番を頼むね」

「はい、行ってらしゃい」

「ヨウスケ、ユカ、転移門は学校の裏門に繋いだから開けてごらん」
「はい」


 アンギリア国立魔法学園は王都ロンディーノ市にあった。全寮制の学校なので生徒たちは寄宿舎でまだ寝ている時間帯だった。

「モトヤさん、凄いっす」
「ヒナノさん、大きな学校ですね」

「そうよ、ここで5年間学ぶのよ」

「モトヤさん、掲示板に入学案内が張り出してあります」
「そうだな、見てみよう」

「ヨウスケもユカも翻訳スキルで言葉には困らないはずだ」
「はい」

「入学試験は、7月、但し、編入試験は随時受付」
「入学金、学費は金貨100枚、寮費は年間金貨50枚」

「ヒナノ、俺たちの頃と学費等は変わっていないな」
「そうね、これならヨウスケとユカは余裕で払えるはずよ」

「後は、身分の問題だけだな、先に朝食を食べに行こうか」
「そうね、お昼を忘れていたからペコペコよ」

 4人は冒険者ギルドの食堂に入った。食堂は冒険者たちで混んでいたが、席に着くことが出来た。

「ヨウスケ、ユカ、遠慮せずに注文しましょう」
「はい、朝食セット4つお願いします」

「お前たち、見かけない顔だな」

「昨夜遅くにガリア国から来ました」

「そうか、お前たちもキャンメイのレッドドラゴンを狩りに来たのか」
「4人全員が支援職とは珍しいな、まぁ、せいぜい頑張ってくれ」

 モトヤたち4人は冒険者を眺めながら、朝食を食べ、その後、王立公園を散策しながら時間を潰したのだった。

「ヒナノさん、大きな公園ですね」
「ここの公園は市民に開放されている王立公園よ」

 朝の8時になったのでモトヤたち4人は再び国立魔法学園の事務室を訪ねた。丁度、受付の先生がいたので転入試験について詳しく訪ねた。転入試験は学歴が認められれば、飛び級で可能だそうで、ヨウスケとユカは1年生または2年生の転入試験を受けることが出来るそうだ。魔法学園の転入試験は、学力テストと魔法実技の2つを受験することになると教えられた。

「モトヤさん、本屋で魔法学園の参考書を買ってもいいですか」
「ああ、そうしよう」

 ヨウスケとユカは大通りの本屋で国立魔法学園の参考書を何冊か買った。初級魔法の参考書と一般教養の参考書の2冊を買って二人で金貨10枚を支払った。

「冒険者ギルドに戻ろうか」
「そうね」

(話終わり)
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