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476話 眼鏡×眼鏡

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「うん、やはりお米は最高だな!」

 俺は日本人に生まれてよかったと心の底から思った。
 太古の昔から脈々とお米を食べ続けて来た日本人だからこそ、
 お米の味が最高だと感じるのである。
 遺伝子に刻み込まれた味覚というべきだろうか。

 つまり俺は今、
 このお米を美味しく食べられるということを、
 自分のご祖先様たちにも感謝すべきということである。

「これが笹寿司というものですかケイガ兄様。
これはなかなかイケますわね!」

「…美味しい、です」

 俺とイロハとツツジは、
 朝一番に俺が買い込んでおいた
 グリンジス市場製の笹の葉寿司に舌鼓を打った。
 ちなみにこの馬車を運転して貰っている現地協力者の方にも
 笹の葉寿司をひと包み渡して昼食にしてもらった。

「…兄様、イロハ…
お茶入れますね…」

 ツツジは馬車の中に置かれたポットにお茶っ葉を入れて
 魔法熱水筒からお湯を注ぐ。
 そしてカップを3つ出して次々と注いでいった。

「おお、ありがとうツツジ」

「ツツジ、頂きますわ!」

「…美味い!
それにしても流れるような見事なお茶の入れ様だったなツツジ。
もしかして、いつもお茶を入れているのか?」

「…いいえ兄様。
ツツジはこの様に皆にお茶を入れるのは今回がが初めてです…。
…これはメイドとしてグリンジスに潜入すると決まってから、
不自然な事にならない様に…
急ぎ訓練して身に付けたものです…」

「へえ…それは凄い。
こんな短時間の訓練で
これ程に見事なお茶を入れられる様になるなんてなあ。
俺にはベテランのメイドさんの
手慣れた動きにしか見えなかったぞ?」

「…あ、兄様…
そんな大したことは…ありません…」

 恥ずかしそうに頬を赤らめるツツジ。

「そういえばツツジ、
見通しの眼鏡スカウターレンズは掛けたままなんだな?
君は眼鏡は掛け慣れて無いだろうし、
今はせっかくの休憩中だから
外したらどうなんだ?」

「…あっ…兄様…
…これは…
…ツツジが好きで掛けているだけで…」

「でもツツジは眼が悪いわけでは無いだろう?」

「…お揃い…」

「…えっ?」

「…ケイガ兄様とお揃いの眼鏡姿だから…」

 ツツジはそう答えると、
 真っ赤になった顔を両手で覆い隠した。

「う、うおおおおッ!?」

俺は動揺の余り落としそうになったカップを持ち直した。

 いやいやいや!
 不意にそんなドキッとさせる様なことはやめて下さいよツツジさん!

 俺はこの異世界エゾン・レイギスに来てから一月と三週間以上…
 つまり異世界人である貴女たちを妹として迎えてから二か月近くになり、
 いい加減に慣れてはきましたけど…
 それでも俺が!
 生まれてから25年の生粋の童貞であることに変わりは無いんですからねッ!

 俺は気持ちを落ち着かせるべく、
 カップに残っていたお茶を一気にぐい!
 と飲み干した。
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