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第273話 未知の数値

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「なッ…がッ!?
うぐあああああッーー!?」

 二人の技の衝突インパクトの瞬間、
 生じた力場は力の弱い方へと作用して動いて弾けた。
 エクゼヴは慧河けいがの技に完全にされ、
 凄さまじい勢いで跳ね跳んでそのまま城壁に激突した。

「ぐ、おおおおッ…
はぁ…はぁ…
我が、完全に圧された…だと…?」

 エクゼヴは衝突で深くめり込んだ城壁から抜け出して、
 よろめきながらも何とか立ち上がった。
 だが…その息を荒げた様子からも、
 大きく疲弊しているのが見て取れた。

「…たしかにあんたは強いが、
前に戦ったディラムのほうが強かった。
ディラムと戦った時の俺は本調子では無かったし、
魔力はゼロで当然魔法も一切使えなくて
今の俺よりだいぶ弱かったが、
それでも何とか生き残れたからな。
つまり三週間の鍛錬で強くなった今の俺なら、
ディラムの通常魔力数値850より低い
あんたに負ける要素は無いってことだ」

「…ディラム?
まさか魔界五軍将・魔竜長様の副官ディラム殿のことを言っているのか!?
確かディラム殿は先日人間の勇者に敗れ、
今は力を高めるべく技を磨かれていると聞いていたが…
はっ?
キサマはまさか…その勇者だというのかッ!?」

「さっきも言ったけど俺は勇者じゃない。
しかしディラムも生きていたんだな…。
上位魔族ってのはとてつもなくしぶといということか…」

 エクゼヴは混乱していた。
 目の前のこの人間は、
 上位魔族のひとりであるディラム殿と戦ったと言う。
 ディラム殿は魔族では極稀な、
 魔力数値を自在にコントロール出来る存在と聞いている。
 その魔力上限は不明だが、本気になられれば1000以上は確実。
 上位魔族とは中位魔族とは比較にならない高い魔力の持ち主なのだ。
 そんな方と戦って生き残った、
 目の前の人間の魔力数値はたった140しかないのである。

「キサマッ!
本当は一体どれほどの強さの数値を持ち合わせてるのだ!」

「その目に掛けた『見通しの眼鏡スカウターレンズ』でとっくにご存じだろう?
俺の魔力数値はあんたの言う、たかが140ぽっちだよ」

「しらばっくれるな人間ッ!
キサマは『見通しの眼鏡スカウターレンズ』の数値に惑わされるなといったではないか!
我はキサマの魔力以外の未知の力、本当の強さの数値を知りたいのだ。
キサマの言い回しからしてその未知の力についても、
そしてその数値についても既に把握済みの様子だろうからな?」

「へえ…魔族さんよ。
あんたのことはてっきり強者特有のおごり高ぶって些細な事には
歯牙しがにもかけない奴だと俺は思っていたんだが…これはなかなか。
俺の言葉をいちいち覚えていて、そこまで深く考えているなんてなあ」

「我は魔軍を統べる将軍でもある。
例え下等生物たる人間であっても、
こと戦闘においては冷静に見ているつもりだ」
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