上 下
241 / 556

第241話 簡潔

しおりを挟む
 ポーラ姫とシノブさんは部屋から中庭に続く大窓を開けると外へと出て行く。
 クレハとイチョウも後に続く。
 そしてポーラ姫とシノブさんは中庭の中心で向き合った。

「シノブ、ここは簡潔シンプルに、組手の試合で決着を付けましょう。
勝った者が自身の意見を押し通す…良いですね」

 ポーラ姫は俺がよく知るいつもの楚々としたお姫様の姿勢ではなく、
 いつぞやの玉座で見せた王者モード全開である。
 俺とミリィは部屋の中からポーラ姫とシノブさんの姿を見ている。

「ええ、了解です。姫様」

 次の瞬間、ポーラ姫とシノブさんの身体の周囲に光のオーラが沸き上がった。
 自分の魔力心臓核マナハートコアを認識し、
 魔力というものがどういうものかを理解した
 今の俺にははっきりとわかった。
 この光のオーラこそがふたりの魔力なのである。

 俺の『見通しの眼鏡スカウターレンズ』には
 ポーラ姫の魔力数値195、
 シノブさんの魔力数値70、
 と表示される。

「なあミリィ?
ふたりの魔力数値はかなり隔たりがある様に俺には見える。
この世界エゾン・レイギスでは
魔力数値はそのまま肉体の強さに反映されると聞いている。
これでは勝負にならないということは無いのか?」

「ふふっ、『見通しの眼鏡スカウターレンズ』の魔力数値ばかりに気を取られては
兄君様あにぎみさまもまだまだと言わざるを得ないね。
いや…この世界に召喚されて日が浅いケイガ兄君様あにぎみさまが、
そう認識するのも仕方は無いと言うべきだよね。

確かに魔力数値は肉体の強さに反映される。
でも身体能力と魔法数値は必ずしも比例しないんだ。
そうだね、さっきボクとポーラが組手をした時に
身体能力強化魔法を使ったけど、
上昇した魔力数値以上に身体能力が上昇していたことに
兄君様あにぎみさまはもちろん気付かれているよね?
つまりそういうことさ」

「…ああ、確かにそうだった。
つまり魔力数値はポーラが大きく上回っているが、
数値に出ない身体能力ではシノブさんが大きく上回っている。
だから総合的な力では互角になるということか?」

「そういうことだよ兄君様あにぎみさま
でもふたりが互角かどうかは
実際にやり合って見ないとわからないかな?」

「姫様、団長、準備は良いですか?」

クレハがふたりの間に入って互いの準備を確認する。
ポーラ姫とシノブさんは黙って頷いた。

「それでは…試合、始め!」

イチョウが試合の開始を告げた。


光の加護ライトフォース!」

 開始早々、ポーラ姫は身体能力強化魔法を展開する。
 その身体を光が包み込む。
 彼女の魔力数値は190から209まで上昇した。

「それでは…参ります、姫様!」

 シノブさんは腰から剣を抜き、駈けた。
 常人では捉えることも難しい、とてつもない速度。
 だがポーラ姫は手に持った杖でその音速の一撃を難なく受け止める。

「「はあっ!!」」

 二人の掛け声と、
 剣と杖の交錯する無数の金属音が中庭に響き渡った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

世界がダンジョン化していく件について ~俺のユニークジョブ『回避術師』は不敗過ぎる~

十本スイ
ファンタジー
突如現代世界に現れたモンスターたちに世界は騒然となる。そして主人公の家がダンジョン化してしまい、そのコアを偶然にも破壊した主人公は、自分にゲームのようなステータスがあることに気づく。その中で最も気になったのは、自分のジョブ――『回避術師』であった。そこはせめて『回復術師』だろと思うものの、これはこれで極めれば凄いことになりそうだ。逃げて、隠れて、時には不意打ちをして、主人公は不敗過ぎるこの能力で改変された世界を生き抜いていく。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

うどん五段
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜

甲殻類パエリア
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。  秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。  ——パンである。  異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。  というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。  そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

処理中です...