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第178話 復習

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兄君様あにぎみさま、ユウカ、ふたりとも待ってたよ。
それじゃあ早速、授業を始めようじゃないか」

地球で言う所の、博士帽子に似たデザインの帽子を被り、
黒縁の太いフレームの眼鏡をかけたミリィが
指示棒を片手に俺たちに向かって言葉を述べた。
いわゆる教師の格好という奴である。
彼女は形から入るのであろう。
その本格的な教師姿に、
ミリィはかなり気合が入っている事が伺えた。

「まずは昨日の復習と行こうじゃないか?
教科書の5ページ、
この世界エゾン・レイギスの成り立ちとその形について説明するよ。

この”魔力満ちる世界、エゾン・レイギス”。
遙かな昔…其この世界は、
どこまでも広がる海とひとつの島だけだった。
ある日、一つの星が落ちてきた。
星は島に突き刺さった。
星には精霊様が住まわれていて、その偉大な力が蓄えられていた。
精霊様の力は弾けて、島は巨大な大陸に成長した。
そして星が突き刺さった地面の中は精霊様の力で削られて、
地下にはとても巨大な空間が作られた。
やがて地上の大陸には人間という生き物が、
地下空間には魔族と呼ばれる生き物が生まれて増えていった。
地上は人間界と呼ばれるように、
地下は魔界と呼ばれるようになった。
…これがこの世界と人間と魔族の誕生の成り立ちだね」

 この話は、俺と優羽花ゆうかがこの異世界に召喚された時に、
 光の精霊から聞いた話とほぼ一緒である。

「このエゾン・レイギスは地上と地下に分かれたセカイ。
地上に住む生き物が人間と呼ばれ、
地下に住む生き物が魔族と呼ばれている。
と言っても人間も魔族もそれぞれ様々な種族が居る。
ボクは人間とエルフの血を半分づつ引くハーフエルフだけど、
エルフ族も人間の種族の一人だ。
ちなみにエルフ族はこの大陸とは別の大陸からやって来た種族とされているよ。
魔族も魔竜といった竜の形をした魔族が居たりと様々だ。
その形は様々なれど、人間は個々としては弱いが数が多い生き物。
魔族は個々は強いが数は少ない生き物というのが共通の認識だ。
故に人間と魔族の力の均衡は採れていていた。
地上の人間界、地下の魔界は大地に突き刺さった星を境にして互いに行き来出来た。
人間と魔族は長い間、仲良くやっていたんだ。

…でもある時、セカイの均衡が崩れた。
魔界にかつてない強大な力を持つ一人の魔族の王、”魔王”が現れた。
その魔王は魔界を統べると”大魔王”を名乗り、
人間界の支配をも目論み地上の人間界に侵攻を始めたんだ。

大魔王と魔族の軍勢の力は圧倒的で、人間は滅亡寸前にまで追い詰められた。
世界の均衡を護る精霊様たちは星の欠片から星剣を造りだして一人の人間に授けた。
彼の者は”勇者”と呼ばれた。
勇者は星剣を携えて大魔王を打ち倒し、魔族の軍勢を魔界に退けた。
そして地上と魔界の境は精霊様たちが結界を張って互いに行き来できない様にした。

それから500年の月日が流れ、
精霊様たちの結界の力が弱まり綻びが出来はじめた。
力の弱い魔族が結界の隙間を抜けて地上に出てくるようになった。
魔族が再びこの地上に侵攻を開始したんだ。
そしてこのまま結界の力が弱まればより強大な魔族が地上に現れる。
やがては魔族の長、大魔王も…。

そこで世界の均衡を司る精霊様たちは、
この世界を魔族の侵攻から護るため、
異世界から大魔王を倒す勇者を召喚することにしたんだ。

そして、伝説の勇者ユウカ、
その兄で異世界の戦士ケイガ兄君様あにぎみさまのふたりが召喚されたんだ。

…つまり今ボクは、
この世界の歴史の偉大な一ページに立ち会っているという訳だね!」

 ミリィは夢心地の様にうっとりとした口調で語りかける。
 テンション高い!

「…うう…何だか恥ずかしいよう…」

優羽花ゆうかはミリィに言われてしどろもどろになっている。

優羽花ゆうか、俺も同感だよ…」

 そりゃあそうだ、
 三日前まで俺とエゾン・レイギスは日本で暮らす普通の兄妹だったんだから。
 突然人間界を救う勇者やら戦士やら持てはやされても戸惑うのは当然である。
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