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第3部 電脳機神兵の花嫁になんてならない!
第32章 創治、疑念を抱き始める
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「いや、それは『お友達として』じゃねーよ!」
ブルーとのダンスを終えたアリーシャに、どんな会話をしていたのか、ユースを通して訊いてみた。
すると返ってきたのは、相変わらずの大ボケな答えだった。
「ああ……もう、この恋愛オンチめ」
ブルーの方には、もうしっかりフラグが立ってるってのに……何故ソレに気づかないのか……。
『あ、そう言えば創君、レッド見なかった?レッドにも一応、お礼言わなきゃって思ってるんだけど……』
コイツ……まさか本命は勇者だとか言わないよな?
俺は認めないぞ。こんなに魅力的なアニキを差し置いて、レッドを選ぶなんて……。
『彼なら、パーティー前に、既にこの国を発ったようですよ。ボス戦でロクな活躍ができなかった自分に、パーティーに参加する資格は無いとか何とか言ってましたよ』
完全なる依怙贔屓だが、制作者権限でアリーシャとレッドの絡みを減らしておく。
『そっか……。相変わらずストイックなんだね』
アリーシャはすんなり受け入れ、残念そうに呟くが……気のせいか、レッドに対する好感度がビミョウに上がってないか……?
『って言うかさー、結局マウリシオって、どういう人なんだっけ?私、どうしても設定が思い出せなくて』
『いや、私が知るわけないでしょう。と言うか、設定って何ですか』
俺がしらばっくれると、アリーシャは『やっぱダメか……』と舌打ちした。
コイツ……これだけシラを切り通しているのに、まだユースを俺として見ているな。
……と言うか、あの男の設定を覚えていないとか、本当に自分の推しキャラ以外はどうでもいいと思ってたんだな。
あの男は今後も勇者たちの障害となってくる重要キャラだと言うのに……。
『……に、しても……どうしよう。ブルーも「スカイの決めたことだから」って、探してあげる気無いっぽいし……。このままじゃ、スカイ、悪の道まっしぐらだよ……』
アリーシャは困り顔でそんなことをボヤき、ふとユースを振り返った。
『そう言えば、魔界って、魔鏡の森の奥にあるんだよね』
『正確に言えば、魔鏡の森が不思議な力で、この世界と魔界を繋いでいるんですが』
『じゃあ、じいやの里帰りイベントから、無理矢理そっちにルート変更すれば、スカイを救出できるかな……』
アリーシャはブツブツと、そんなことを呟いている。
ヤバい……。コイツ、またシナリオを大胆に無視する気でいるぞ。
メトロポラリス編でも、コイツが好き勝手するせいで、だいぶシナリオ修正を余儀なくされたと言うのに……。
本来のシナリオでは、そもそも魔王が猫として王女に同行することもなく、当然 "アッシュ行方不明事件" も起きない。
SHIROはアッシュの存在とは無関係に、ただマウリシオの企みにより暴走させられる。そして王女ジェラルディンは、監視カメラ網や搬送ロボで執拗に追いかけ回された挙句、逃げきれずに囚われてしまうのだ。
そして、この辺りから王女の "神託の乙女" としての能力が顕れ始めるのだが……
「……世界一の美姫で、出会う王子全部に惚れられて、おまけに神に選ばれし乙女とか、設定盛り過ぎだろ、お前……」
当時も本人に言ってやったはずの言葉を、再び、一人で口にする。
「……ま、それがお前の夢だったって言うなら、叶えてやるけどな」
言いながら、当時の愛理咲が何と言い返してきたのか、思い出そうとする。
どうせドヤ顔で、もっともらしい言い訳をしてきたに違いない。
……だが、その細かな台詞が、思い出せない。アイツが本当はどんな顔でそれを言ったのかも、思い出せない。
あの頃は、あんなに夢中になって、二人で設定を組み立てていたのに……人間というのは、どうしてこうも忘れっぽい生き物なんだ。
「……そもそも、あの頃は、覚えておこうなんて気も無かったな」
あまりにもありふれた、他愛のない日々の会話やふれ合い。
それが貴重なものだったと気づくには、俺はあまりに子ども過ぎた。
「……『俺じゃアイツを幸せにできない』……」
シナリオの中でブルーに言った言葉が、俺の胸を苛む。
俺がアリーシャを幸せにできるわけがない。愛理咲を幸せにできなかった "俺" が……。
暗い思いに沈みかけたその時、指が唐突にある台詞を叩き始めた。
『ちょっと、アッシュたん!白兵衛!こんな所でケンカ始めないでよ!』
『……って、ちょっと!何でパーティー会場にその2匹がいるんですか!ペットは普通、お留守番でしょう!』
『だって、この2匹を目の届かない所に放置しとく方が怖くない?』
……まったく、コイツときたら、シリアスに浸っている暇も無い。
俺は突如発生したこのアッシュVS白兵衛騒動を収めるべく、ディスプレイに向き直った。
それにしても……物語を書いていると、キャラクターが勝手に動き出すとは、よく言うが……
最近アリーシャ、勝手に動き過ぎじゃないか……?
ブルーとのダンスを終えたアリーシャに、どんな会話をしていたのか、ユースを通して訊いてみた。
すると返ってきたのは、相変わらずの大ボケな答えだった。
「ああ……もう、この恋愛オンチめ」
ブルーの方には、もうしっかりフラグが立ってるってのに……何故ソレに気づかないのか……。
『あ、そう言えば創君、レッド見なかった?レッドにも一応、お礼言わなきゃって思ってるんだけど……』
コイツ……まさか本命は勇者だとか言わないよな?
俺は認めないぞ。こんなに魅力的なアニキを差し置いて、レッドを選ぶなんて……。
『彼なら、パーティー前に、既にこの国を発ったようですよ。ボス戦でロクな活躍ができなかった自分に、パーティーに参加する資格は無いとか何とか言ってましたよ』
完全なる依怙贔屓だが、制作者権限でアリーシャとレッドの絡みを減らしておく。
『そっか……。相変わらずストイックなんだね』
アリーシャはすんなり受け入れ、残念そうに呟くが……気のせいか、レッドに対する好感度がビミョウに上がってないか……?
『って言うかさー、結局マウリシオって、どういう人なんだっけ?私、どうしても設定が思い出せなくて』
『いや、私が知るわけないでしょう。と言うか、設定って何ですか』
俺がしらばっくれると、アリーシャは『やっぱダメか……』と舌打ちした。
コイツ……これだけシラを切り通しているのに、まだユースを俺として見ているな。
……と言うか、あの男の設定を覚えていないとか、本当に自分の推しキャラ以外はどうでもいいと思ってたんだな。
あの男は今後も勇者たちの障害となってくる重要キャラだと言うのに……。
『……に、しても……どうしよう。ブルーも「スカイの決めたことだから」って、探してあげる気無いっぽいし……。このままじゃ、スカイ、悪の道まっしぐらだよ……』
アリーシャは困り顔でそんなことをボヤき、ふとユースを振り返った。
『そう言えば、魔界って、魔鏡の森の奥にあるんだよね』
『正確に言えば、魔鏡の森が不思議な力で、この世界と魔界を繋いでいるんですが』
『じゃあ、じいやの里帰りイベントから、無理矢理そっちにルート変更すれば、スカイを救出できるかな……』
アリーシャはブツブツと、そんなことを呟いている。
ヤバい……。コイツ、またシナリオを大胆に無視する気でいるぞ。
メトロポラリス編でも、コイツが好き勝手するせいで、だいぶシナリオ修正を余儀なくされたと言うのに……。
本来のシナリオでは、そもそも魔王が猫として王女に同行することもなく、当然 "アッシュ行方不明事件" も起きない。
SHIROはアッシュの存在とは無関係に、ただマウリシオの企みにより暴走させられる。そして王女ジェラルディンは、監視カメラ網や搬送ロボで執拗に追いかけ回された挙句、逃げきれずに囚われてしまうのだ。
そして、この辺りから王女の "神託の乙女" としての能力が顕れ始めるのだが……
「……世界一の美姫で、出会う王子全部に惚れられて、おまけに神に選ばれし乙女とか、設定盛り過ぎだろ、お前……」
当時も本人に言ってやったはずの言葉を、再び、一人で口にする。
「……ま、それがお前の夢だったって言うなら、叶えてやるけどな」
言いながら、当時の愛理咲が何と言い返してきたのか、思い出そうとする。
どうせドヤ顔で、もっともらしい言い訳をしてきたに違いない。
……だが、その細かな台詞が、思い出せない。アイツが本当はどんな顔でそれを言ったのかも、思い出せない。
あの頃は、あんなに夢中になって、二人で設定を組み立てていたのに……人間というのは、どうしてこうも忘れっぽい生き物なんだ。
「……そもそも、あの頃は、覚えておこうなんて気も無かったな」
あまりにもありふれた、他愛のない日々の会話やふれ合い。
それが貴重なものだったと気づくには、俺はあまりに子ども過ぎた。
「……『俺じゃアイツを幸せにできない』……」
シナリオの中でブルーに言った言葉が、俺の胸を苛む。
俺がアリーシャを幸せにできるわけがない。愛理咲を幸せにできなかった "俺" が……。
暗い思いに沈みかけたその時、指が唐突にある台詞を叩き始めた。
『ちょっと、アッシュたん!白兵衛!こんな所でケンカ始めないでよ!』
『……って、ちょっと!何でパーティー会場にその2匹がいるんですか!ペットは普通、お留守番でしょう!』
『だって、この2匹を目の届かない所に放置しとく方が怖くない?』
……まったく、コイツときたら、シリアスに浸っている暇も無い。
俺は突如発生したこのアッシュVS白兵衛騒動を収めるべく、ディスプレイに向き直った。
それにしても……物語を書いていると、キャラクターが勝手に動き出すとは、よく言うが……
最近アリーシャ、勝手に動き過ぎじゃないか……?
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