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終章・女神
婚約しました
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その後、どこからか見ていたらしい家族に散々冷やかされ、食事の時や出かける時もまた繰り返し繰り返しいじくられている。話題が出るたびに私は固まるのだ。
「まさか婚約の前に結婚の話してるとは。
ずいぶんと盛り上がっていたなあ」
「ほっぺにもチューしてたよね~王子様。
甘すぎる……素敵……」
「せめて我が家でないところで、な、その……」
「まあいいじゃないですか、あなた。
将来安泰! 商売繁盛!」
しかも私にとっては初めての……、両手で顔を隠し、三度目の人生でようやく得られたものを噛み締めた。
(夢幻じゃなかった……)
長すぎた人生の弊害が、私をここまで追い詰めるとは。
(いや、さすがにあちこちと遊び回るなんてそんな気持ちにはなれなかったから、
こう、下手の横好きにすらならなかったけれど。あー!)
恥ずかしすぎてたまらない。
私は身内に突っ込まれるたびに、こうして真っ赤になって何も言えなくなるのだ。
「ふふふ、愛の女神様もこれにはニンマリだわねえ」
母は意味深に呟いた。
さすがに王家の方との婚姻(傍流とか言ってたけどそれでも)は、唐突に結婚とはいかない。
またも求婚ポーズをとられたヴィクリス様にしっかりと指輪を見せられ、不安そうに、しかし期待のこもった瞳で仰がれると、もう。何回私は居た堪れない気持ちにさせられるのだろう。我ながら真っ赤になりながら、とにかく受け取った。宝石はついていない使いやすそうな婚約指輪。
「何もかも、最初から始めたいと思って」
スルスルと指におさまったそれは、異物感はあったが、すぐに馴染んだ。
「……ヴィクリス様」
「俺にもつけて欲しい」
「はい……」
しかし、ヴィクリス様の指輪をつけようとする際に、彼は私の頭や耳やら頬を撫でたり口づけをしたりと私の邪魔をする。四苦八苦した。
「ああ……嬉しいよ」
きゅう、と私の心も体も抱き締められる。
(なんて……)
幸せなんだろう。
指と指の間までも絡み合い、
(うう……)
さすがに……歴戦の過去生をもつヴィクリス様に私は太刀打ちできず、今日の生命力すら奪われそうになる前になんとか解放してもらった。ニコニコと終始しているご機嫌な彼に私はぐったりと頼り切っているが、それすらも嬉しいらしい。口の中が……うう。恥ずかしい、の一言に尽きる。腰を撫でられ、常に触れられている……。
馬車の中でも彼との触れ合いは止まらなかった……。
「うわあ青春だなあ……」
「はー……やばい……。
目に毒……」
「多少、多少は! 手加減してもらってくれ!
できれば結婚式前に腹が大きくならないように……もがっ」
「いやーね! 先手必勝ってやつですわよ! あなた!」
雲の上すぎて直接言いづらい問題をぶちかまされ、またもや固まる私。
婚約式は略式で行われたが、結婚式は準備が必要で、必ずお披露目しなければならないらしい。呑気そうにしている家族だが、次第にその話題に移りつつあるのは、王家の方と意見交換しているからなのか。
「お代もすべてあっち持ちか……。
助かるけどいいんだろうか」
「よろしいのではなくて?
いくらなんでも我が家で出せる経費は小鳥の涙ほどしかありませんよ」
「無茶ぶりはしないですよ、あのお義兄様なら」
「ああ、お義兄様はすごいからな」
すっかり仲良くなったらしい、妹と兄はヴィクリス様から色々と教えてもらったり助けてくれてたりするらしい。詳細は不明だが、すっかり信仰者と同じ目をしている。ヴィクリス様は魔法の第一人者なので、まるで教祖のように崇める人は少なからずいるのだ。
「まさか婚約の前に結婚の話してるとは。
ずいぶんと盛り上がっていたなあ」
「ほっぺにもチューしてたよね~王子様。
甘すぎる……素敵……」
「せめて我が家でないところで、な、その……」
「まあいいじゃないですか、あなた。
将来安泰! 商売繁盛!」
しかも私にとっては初めての……、両手で顔を隠し、三度目の人生でようやく得られたものを噛み締めた。
(夢幻じゃなかった……)
長すぎた人生の弊害が、私をここまで追い詰めるとは。
(いや、さすがにあちこちと遊び回るなんてそんな気持ちにはなれなかったから、
こう、下手の横好きにすらならなかったけれど。あー!)
恥ずかしすぎてたまらない。
私は身内に突っ込まれるたびに、こうして真っ赤になって何も言えなくなるのだ。
「ふふふ、愛の女神様もこれにはニンマリだわねえ」
母は意味深に呟いた。
さすがに王家の方との婚姻(傍流とか言ってたけどそれでも)は、唐突に結婚とはいかない。
またも求婚ポーズをとられたヴィクリス様にしっかりと指輪を見せられ、不安そうに、しかし期待のこもった瞳で仰がれると、もう。何回私は居た堪れない気持ちにさせられるのだろう。我ながら真っ赤になりながら、とにかく受け取った。宝石はついていない使いやすそうな婚約指輪。
「何もかも、最初から始めたいと思って」
スルスルと指におさまったそれは、異物感はあったが、すぐに馴染んだ。
「……ヴィクリス様」
「俺にもつけて欲しい」
「はい……」
しかし、ヴィクリス様の指輪をつけようとする際に、彼は私の頭や耳やら頬を撫でたり口づけをしたりと私の邪魔をする。四苦八苦した。
「ああ……嬉しいよ」
きゅう、と私の心も体も抱き締められる。
(なんて……)
幸せなんだろう。
指と指の間までも絡み合い、
(うう……)
さすがに……歴戦の過去生をもつヴィクリス様に私は太刀打ちできず、今日の生命力すら奪われそうになる前になんとか解放してもらった。ニコニコと終始しているご機嫌な彼に私はぐったりと頼り切っているが、それすらも嬉しいらしい。口の中が……うう。恥ずかしい、の一言に尽きる。腰を撫でられ、常に触れられている……。
馬車の中でも彼との触れ合いは止まらなかった……。
「うわあ青春だなあ……」
「はー……やばい……。
目に毒……」
「多少、多少は! 手加減してもらってくれ!
できれば結婚式前に腹が大きくならないように……もがっ」
「いやーね! 先手必勝ってやつですわよ! あなた!」
雲の上すぎて直接言いづらい問題をぶちかまされ、またもや固まる私。
婚約式は略式で行われたが、結婚式は準備が必要で、必ずお披露目しなければならないらしい。呑気そうにしている家族だが、次第にその話題に移りつつあるのは、王家の方と意見交換しているからなのか。
「お代もすべてあっち持ちか……。
助かるけどいいんだろうか」
「よろしいのではなくて?
いくらなんでも我が家で出せる経費は小鳥の涙ほどしかありませんよ」
「無茶ぶりはしないですよ、あのお義兄様なら」
「ああ、お義兄様はすごいからな」
すっかり仲良くなったらしい、妹と兄はヴィクリス様から色々と教えてもらったり助けてくれてたりするらしい。詳細は不明だが、すっかり信仰者と同じ目をしている。ヴィクリス様は魔法の第一人者なので、まるで教祖のように崇める人は少なからずいるのだ。
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