上 下
7 / 59
序章・運命の世界

Q.運命とは?

しおりを挟む
 運命に出会うと奇跡が起きるって言われています。
教本に書いてある通りです。 ええ、本当に。

 私にもかつて運命との出会いがありましたが……えー、ごほん!
 知らなかった? そうでしょうそうでしょう。

 内緒にしてましたからね。ふふ……。この時のためにとっておいたんです。
 はい、静かに! 静粛に! 静粛にっ!

 はい。ではお答えしましょう。

 私の運命のお相手は、とってもかっこよかったんです。
でもね、出会う前に死んでしまったのです。

 つまり、相手は知らなくても、私のほうが先に運命を見つけてしまったから……だから、そうなってしまったんです。
あら? なんでしょう、すごい静かになっちゃって……ああ、もう。泣かないで。あらら。
そこまで真に受けないで大丈夫ですよ、もう何十年も前の話ですもの。私の中でも折り合いがついています。

 ん? かわいそう?
 
 うーん。そうねえ、確かにかわいそうかもね。
 でも、いいのです。

 運命のあの人は、私のことを知らずに死んだのですから。
 会わなかったから、奇跡も起きませんでした。
だから、大丈夫。
 私は幸せでした。

 こうして、あなたたちに出会い、教えることができるのですから。
あ、それともう少し大人しくしてくださいね。
いいこと言ってるんですから。きちんと学んでくださいね。

 ほら、背筋をびしっとする!
 ふふ……。
 奇跡、を見たことがある?
 あらおませさんね。
 ふふ、そうそう。あら、そうなの?
 昨日の出来事?
 まあ……それは良いものを見させてもらいましたね。

 周りに虹が出た?
 なるほどなるほど。それは綺麗な七色だったでしょう。
 周りの大人たちが全員拍手しててびっくりした? そうでしょうそうでしょう。

 それこそ、奇跡。
 愛と運命の女神の祝福です。

 結婚しても祝福は女神様からいただけますが……目に見える奇跡を起こしてくださるのは、運命の相手と出会えたときだけです。運命の相手ではない二人には運命の相手と出会えなくなるよう、女神様が配慮してくださるのです。そういうものなのです。
 ですので運命以外の愛し合う夫婦だと安心ですね?
愛はとても尊いものです。不安になるでしょうけれど、これもまた出会いの賜物。
 大丈夫ですよ、心配することでもありません。それほどは……うーん、多分?
 ふふ。
 
 ほら、運命に出会いたくなったでしょう?
 んー会ってみたいけど、運命ってどうやったらわかるって?
 芳しい匂いがしたり、模様が出たり……。
 魔法のような奇跡を目の当たりにするらしいです。
 この国では運命に出会う確率は他国よりも格段に多いみたいですけれどね、それでも100人にひとり、いればいいほうかもしれません。え? もっと具体的に? 私ですか? ああ……。

 ……うん。……そうですね……とても輝いていましたよ。
 美しくて……理想的な王子様でした。
 ふふ……。
 
 心臓が今でもドキドキします。
 ずるいですよね、王子様って。

 
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約破棄まで死んでいます。

豆狸
恋愛
婚約を解消したので生き返ってもいいのでしょうか?

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

好きだった人 〜二度目の恋は本物か〜

ぐう
恋愛
アンジェラ編 幼い頃から大好だった。彼も優しく会いに来てくれていたけれど… 彼が選んだのは噂の王女様だった。 初恋とさよならしたアンジェラ、失恋したはずがいつのまにか… ミラ編 婚約者とその恋人に陥れられて婚約破棄されたミラ。冤罪で全て捨てたはずのミラ。意外なところからいつのまにか… ミラ編の方がアンジェラ編より過去から始まります。登場人物はリンクしています。 小説家になろうに投稿していたミラ編の分岐部分を改稿したものを投稿します。

夜会の夜の赤い夢

豆狸
恋愛
……どうして? どうしてフリオ様はそこまで私を疎んでいるの? バスキス伯爵家の財産以外、私にはなにひとつ価値がないというの? 涙を堪えて立ち去ろうとした私の体は、だれかにぶつかって止まった。そこには、燃える炎のような赤い髪の──

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...