18 / 71
13 母の葬儀
しおりを挟む
俺が泣き止むまで、弟妹たちの父は側に座っていてくれた。
「ごめん。心配させた」
泣いている俺を黙って見守っていてくれたのだ。
「がう」
気にするなというかのように、弟妹たちの父は俺の顔を舐める。
俺は弟妹たちの父の大きな首に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
「みんなは?」
「がう」
弟妹たちの父が目を向けた方向に、フレキと弟妹たちがいた。
泣いていたフレキも俺よりも早く立ち直ったらしい。
「がう」
「がぁぅ」
フレキと弟妹たちが、一心不乱に大きな穴を掘っていた。
俺はそんなフレキの元に歩いて行く。
「フレキ。その穴は?」
『……もういいのか?』
「ああ、心配をかけた。ごめん」
『ん、気にしなくてよい……』
「この穴は?」
『不死者たちの亡骸を埋める穴じゃ』
腐臭を漂わせていた不死者たちの魂は、死神の奇跡によって天に還った。
だが、不死者たちの亡骸はそのままになっている。
「俺も手伝うよ」
『いや、フィルには他にやって欲しいことがある』
そういって、フレキは周囲に転がる骸骨に目をやる。
「そうだね。フレキたちが倒した骸骨の魂を天に還さなきゃだな」
フレキたちは動けなくしただけだ。
まだ魂は骨に残っており、カタカタ鳴らしている奴もいる。
本当は、真っ先に天に還さなければならなかった。
それが使徒の役目だろう。
『天に還した後、埋める前に亡骸を燃やしてやりたい』
「……わかった」
魂のない亡骸に天に還れなかった魂が取り憑くことがある。
それを防ぐ為には亡骸は燃やすのがよい。
『使徒の扱う炎で燃やしたならば、取り憑かれることがなくなるゆえな』
それもまた、死神の使徒の奇跡の一つだ。
普通の炎で燃やしても、骨は脆くなり、取り憑かれることはほぼ無くなる。
だが、使徒の炎のほうが確実だ。
「うん。わかってる」
俺はまだ魂の残っている亡骸に、順番に奇跡を行使していく。
黙々と死者の魂を天に還すことだけを考える。
ただ無心で死神に祈りながら、奇跡を行使した。
魂を全て天に還した後、弟妹たちの父と手分けして、亡骸を集めていく
腐肉の付いた不死者は、弟妹たちの父が口で咥えることができないので俺が運ぶ。
なにも考えず、無心で黙々と弟妹たちの掘った穴の横へと運ぶ。
穴を掘っていたフレキが不死者を運んでいる俺たちに気付く。
『そちらを手伝おう』
「ありがとう、骸骨を頼むよ」
『わかっておる』
弟妹たちはまだ黙々と穴を掘っていた。
もう不死者の亡骸を全ていれるのに充分なほど穴を掘っているが、まだ止める様子がない。
フレキと弟妹たちが黙々と穴を掘っていたのは悲しいからだ。
何かしていないと悲しすぎるから、黙々と穴を掘っているのだ。
俺が黙々と無心で奇跡を行使していたのと同じ。
集中している間は悲しさを少しだけ忘れることができた。
俺とフレキと弟妹たちの父で亡骸を運び終えると、
「がう」
フレキが指示して、弟妹たちを穴から出す。
『フィル。頼むのじゃ』
「うん、任せてくれ」
俺はみなが見つめる中、不死者の亡骸に向けて右の手のひらを向ける。
そして、なるべく高い温度の炎を出す。
しばらく炎を出し続け、燃やした後、残った亡骸を弟妹たちの掘った穴へと入れた。
「フレキ」
俺は母の亡骸をどうするのか、目で尋ねた。
母の亡骸は、少し離れたところで横たわったままだ。
『……我が巣の近くに……娘はあの辺りが好きだったゆえな』
「わかった」
不死者の亡骸とまとめて埋葬することに抵抗があるのだろう。
母の魂は天に還った。だから亡骸には既に魂はなく、ただ肉体があるだけだ。
好きな場所に埋めるなど、生きている者の自己満足でしかない。
そう頭ではわかっていても、
「俺もそうしてやりたい。使徒として、変かな?」
『使徒の前に、お前はあの娘の子供じゃ』
「……そうだね」
不死者の亡骸を埋めると、みなで死神に祈りを捧げた。
「ごめん。心配させた」
泣いている俺を黙って見守っていてくれたのだ。
「がう」
気にするなというかのように、弟妹たちの父は俺の顔を舐める。
俺は弟妹たちの父の大きな首に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
「みんなは?」
「がう」
弟妹たちの父が目を向けた方向に、フレキと弟妹たちがいた。
泣いていたフレキも俺よりも早く立ち直ったらしい。
「がう」
「がぁぅ」
フレキと弟妹たちが、一心不乱に大きな穴を掘っていた。
俺はそんなフレキの元に歩いて行く。
「フレキ。その穴は?」
『……もういいのか?』
「ああ、心配をかけた。ごめん」
『ん、気にしなくてよい……』
「この穴は?」
『不死者たちの亡骸を埋める穴じゃ』
腐臭を漂わせていた不死者たちの魂は、死神の奇跡によって天に還った。
だが、不死者たちの亡骸はそのままになっている。
「俺も手伝うよ」
『いや、フィルには他にやって欲しいことがある』
そういって、フレキは周囲に転がる骸骨に目をやる。
「そうだね。フレキたちが倒した骸骨の魂を天に還さなきゃだな」
フレキたちは動けなくしただけだ。
まだ魂は骨に残っており、カタカタ鳴らしている奴もいる。
本当は、真っ先に天に還さなければならなかった。
それが使徒の役目だろう。
『天に還した後、埋める前に亡骸を燃やしてやりたい』
「……わかった」
魂のない亡骸に天に還れなかった魂が取り憑くことがある。
それを防ぐ為には亡骸は燃やすのがよい。
『使徒の扱う炎で燃やしたならば、取り憑かれることがなくなるゆえな』
それもまた、死神の使徒の奇跡の一つだ。
普通の炎で燃やしても、骨は脆くなり、取り憑かれることはほぼ無くなる。
だが、使徒の炎のほうが確実だ。
「うん。わかってる」
俺はまだ魂の残っている亡骸に、順番に奇跡を行使していく。
黙々と死者の魂を天に還すことだけを考える。
ただ無心で死神に祈りながら、奇跡を行使した。
魂を全て天に還した後、弟妹たちの父と手分けして、亡骸を集めていく
腐肉の付いた不死者は、弟妹たちの父が口で咥えることができないので俺が運ぶ。
なにも考えず、無心で黙々と弟妹たちの掘った穴の横へと運ぶ。
穴を掘っていたフレキが不死者を運んでいる俺たちに気付く。
『そちらを手伝おう』
「ありがとう、骸骨を頼むよ」
『わかっておる』
弟妹たちはまだ黙々と穴を掘っていた。
もう不死者の亡骸を全ていれるのに充分なほど穴を掘っているが、まだ止める様子がない。
フレキと弟妹たちが黙々と穴を掘っていたのは悲しいからだ。
何かしていないと悲しすぎるから、黙々と穴を掘っているのだ。
俺が黙々と無心で奇跡を行使していたのと同じ。
集中している間は悲しさを少しだけ忘れることができた。
俺とフレキと弟妹たちの父で亡骸を運び終えると、
「がう」
フレキが指示して、弟妹たちを穴から出す。
『フィル。頼むのじゃ』
「うん、任せてくれ」
俺はみなが見つめる中、不死者の亡骸に向けて右の手のひらを向ける。
そして、なるべく高い温度の炎を出す。
しばらく炎を出し続け、燃やした後、残った亡骸を弟妹たちの掘った穴へと入れた。
「フレキ」
俺は母の亡骸をどうするのか、目で尋ねた。
母の亡骸は、少し離れたところで横たわったままだ。
『……我が巣の近くに……娘はあの辺りが好きだったゆえな』
「わかった」
不死者の亡骸とまとめて埋葬することに抵抗があるのだろう。
母の魂は天に還った。だから亡骸には既に魂はなく、ただ肉体があるだけだ。
好きな場所に埋めるなど、生きている者の自己満足でしかない。
そう頭ではわかっていても、
「俺もそうしてやりたい。使徒として、変かな?」
『使徒の前に、お前はあの娘の子供じゃ』
「……そうだね」
不死者の亡骸を埋めると、みなで死神に祈りを捧げた。
0
お気に入りに追加
874
あなたにおすすめの小説
転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。
Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった後、異世界に転生した高校生、鬼島迅。
そんな彼が生まれ落ちた家は、貴族。
しかし、その家の住人たちは国内でも随一、乱暴者というイメージが染みついている家。
世間のその様なイメージは……あながち間違ってはいない。
そんな一家でも、迅……イシュドはある意味で狂った存在。
そしてイシュドは先々代当主、イシュドにとってひい爺ちゃんにあたる人物に目を付けられ、立派な暴君戦士への道を歩み始める。
「イシュド、学園に通ってくれねぇか」
「へ?」
そんなある日、父親であるアルバから予想外の頼み事をされた。
※主人公は一先ず五十後半の話で暴れます。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。
そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。
悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。
「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」
こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。
新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!?
⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎
妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます
新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。
ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。
「私はレイナが好きなんだ!」
それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。
こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました。
おまけのお話を更新したりします。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる