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少年少女期編
29 私、美少女なので
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会いたくないと言われ、手紙だけで海外留学を知らせられ、五年放置された末に婚約式の招待状とはね。私はおねーさんだもの。拗ねてなんてないわよ。拗ねたり、友達だと思っていたのに留学中手紙のひとつも寄越さなかったことに怒っていたりしないわ。
えぇまったく。
「そう拗ねないでくれ、エイリーン。兄上が連絡を絶ったのは男として王族として、やむを得ない事情があったからなんだから」
「拗ねてないったら!」
ふんだ。
男として王族として、ってどんな事情よ。
「きっと兄上はエイリーンに話したいことがあるだろうから、婚約式のときはせめて拗ねないで迎えてやってほしい」
だから拗ねてないってば!
ニコラスはしつこい。私が睨んだら、笑顔で返されてしまった。
気に食わない。
私の扱いを心得ているとばかりの言動が特に癪にさわるのだ。
「政略結婚になる予定らしいね。兄上は留学先のアスパラガス姫殿下に婿入りすることになる」
なるほど。
アーサーは継承権を失い、ニコラスが第一王位継承者になるのか。
アスパラガスは女王制の珍しい国で、温暖な気候が特徴だ。おおらかな国民性でも知られている。アーサーならきっと、良い王配となって女王を支えるだろう。
「アスパラガス姫殿下? ってまだ生まれたばかりじゃなかったか?」
「年の差婚だね。十数歳程度ならよくある話だよ」
ニコラスは平静のようだが、ディーンは戸惑っているのがわかる。
キャロット公爵家は代々恋愛結婚が主流で、愛する人には全力でアプローチするという熱血スポ婚魂が根付いている。
特に現公爵夫妻、ディーンの両親は有名劇作家も舌を巻く大恋愛を繰り広げたとか。
「俺としては、父上の指示には従うつもりだが、幸いにして父上の指示と俺の結婚したい人が同じ人でね。早急に相手の許可をとりたいと思っているところだよ」
ニコラスの視線が痛い。痛いよ。
私はニコラスと婚約するつもりはない。
本格的に王家が圧力をかけてきたらそうはいかないだろうけど、幸いにしてお父様は国の重要人物であり、娘の意思を尊重しようとしてくれるタイプだ。王家も強行できないのはそれが原因である。お父様の機嫌を損ねる真似をしたくはないのだ。
ただ。
今はまだ許されるとして、ゲーム開始ぐらいの年齢になるといよいよ危ない。
さすがにお父様も首を横に振り続けることはできないし、王命となれば従わざるを得ない。
それをどうにか、ゲーム終了後までのばしていきたいというのが私の本音だ。
「……」
黙ったまま、なにか考え込んでいるディーンとアーネストは無視する。
あーあ。前世なら小学生の年齢で結婚について真剣に悩む必要なんてなかったのにな。
「俺は中々好物件だと思うのだが、なぜ是と言ってくれないのか不思議だよ」
「……私たちの世界は狭すぎるのですよ、殿下。いつか本当に愛する人と出会うかもしれないのに、婚約者がいたら邪魔なだけでしょう。私だって貴族のはしくれ。政略結婚するつもりはありますが、どうせなら両想いの人と結婚したいです。殿下は私のことを恋愛的に好きだとは思えませんし、私も殿下のことを愛してはいません」
ざっくり言い放つ。
恋する乙女のゆるふわ思考だが、私は美少女なので言っても痛くはならないはずだ。
えぇまったく。
「そう拗ねないでくれ、エイリーン。兄上が連絡を絶ったのは男として王族として、やむを得ない事情があったからなんだから」
「拗ねてないったら!」
ふんだ。
男として王族として、ってどんな事情よ。
「きっと兄上はエイリーンに話したいことがあるだろうから、婚約式のときはせめて拗ねないで迎えてやってほしい」
だから拗ねてないってば!
ニコラスはしつこい。私が睨んだら、笑顔で返されてしまった。
気に食わない。
私の扱いを心得ているとばかりの言動が特に癪にさわるのだ。
「政略結婚になる予定らしいね。兄上は留学先のアスパラガス姫殿下に婿入りすることになる」
なるほど。
アーサーは継承権を失い、ニコラスが第一王位継承者になるのか。
アスパラガスは女王制の珍しい国で、温暖な気候が特徴だ。おおらかな国民性でも知られている。アーサーならきっと、良い王配となって女王を支えるだろう。
「アスパラガス姫殿下? ってまだ生まれたばかりじゃなかったか?」
「年の差婚だね。十数歳程度ならよくある話だよ」
ニコラスは平静のようだが、ディーンは戸惑っているのがわかる。
キャロット公爵家は代々恋愛結婚が主流で、愛する人には全力でアプローチするという熱血スポ婚魂が根付いている。
特に現公爵夫妻、ディーンの両親は有名劇作家も舌を巻く大恋愛を繰り広げたとか。
「俺としては、父上の指示には従うつもりだが、幸いにして父上の指示と俺の結婚したい人が同じ人でね。早急に相手の許可をとりたいと思っているところだよ」
ニコラスの視線が痛い。痛いよ。
私はニコラスと婚約するつもりはない。
本格的に王家が圧力をかけてきたらそうはいかないだろうけど、幸いにしてお父様は国の重要人物であり、娘の意思を尊重しようとしてくれるタイプだ。王家も強行できないのはそれが原因である。お父様の機嫌を損ねる真似をしたくはないのだ。
ただ。
今はまだ許されるとして、ゲーム開始ぐらいの年齢になるといよいよ危ない。
さすがにお父様も首を横に振り続けることはできないし、王命となれば従わざるを得ない。
それをどうにか、ゲーム終了後までのばしていきたいというのが私の本音だ。
「……」
黙ったまま、なにか考え込んでいるディーンとアーネストは無視する。
あーあ。前世なら小学生の年齢で結婚について真剣に悩む必要なんてなかったのにな。
「俺は中々好物件だと思うのだが、なぜ是と言ってくれないのか不思議だよ」
「……私たちの世界は狭すぎるのですよ、殿下。いつか本当に愛する人と出会うかもしれないのに、婚約者がいたら邪魔なだけでしょう。私だって貴族のはしくれ。政略結婚するつもりはありますが、どうせなら両想いの人と結婚したいです。殿下は私のことを恋愛的に好きだとは思えませんし、私も殿下のことを愛してはいません」
ざっくり言い放つ。
恋する乙女のゆるふわ思考だが、私は美少女なので言っても痛くはならないはずだ。
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