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幼少期編
23 アーネストの儀式
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春になった。
暖かい日差しに、やっぱり日向ぼっこにちょうど良い季節だなぁと思う。
今日はアーネストの儀式の日。
参加できるのは家族と王族だけ。アーネストとにんじん頭はそれなりに仲良くなったみたいだから、にんじん頭だけ参加できなくて可哀想かもしれないけど。
「姉上、そのドレス……!」
「貴方の髪の色に合わせてみたの。似合うかしら?」
「はい、とてもお綺麗です」
深緑のドレスは落ち着いた色合いだし、装飾も少ない。
今日の主役はアーネスト。だから、アーネストよりも目立たないようにと選んだんだよね。
王宮に行く馬車にはアーネストと二人で乗る。お父様は仕事ですでに王宮にいるからね。
「姉上をエスコートできて光栄です」
「エスコート、とても上手くなったわ。この先のパーティーはアーネストがエスコートしてくれることが多いのでしょうね。楽しみだわ」
婚約者がいないのだから、エスコートするのはお父様かアーネスト。
お父様は忙しいし、アーネストに頼むことになるだろう。
幸せそうな笑顔のアーネストに、こちらも癒された。
馬車を降り、謁見の部屋に到着すると、アーネストの手がわずかに震えていることがわかる。でも、それを耐えている横顔が可愛くて、ついお節介を妬いてしまう。
「アーネスト、大丈夫」
「……はい、姉上」
手を握り返せば、微笑んでくれる。
アーネストのタレ目だとか、屋敷に来てからますます輝いている美貌だとか、涙黒子だとか……。まだ六歳のくせに、漂う色香に息を呑んだ。
ああ、いけないいけない。
扉を開く。厳かな雰囲気のその場所には、国王陛下、王妃様、ニコラス、ニコラスの弟妹、近衛騎士、そしてお父様の姿がある。私の時はちょうど出産時期だったらしくてお目にかかれなかったけど、王妃様の若々しい美貌に圧巻だ。そりゃあ、美人と美人の子供のニコラスは美人に決まっているよね。
所定の場所につく。
近衛騎士がアーネストにナイフを渡した。そして、献上するように白い石を掲げる。
アーネストがナイフで軽く指を切り、石に血を押し付けた。
途端、石がぼうっとした緑色の輝きを放つ。
「緑色です、陛下」
お父様がそれを確認して報告する。
「お前に、ドラゴンの名を与えよう」
よく響く陛下の声が耳に心地良い。自分のときとはまた違ってドキドキしてしまうな。陛下の決まった言葉を聞きながら、そっとニコラスに視線をずらす。
ニコラスは真剣な表情で儀式を見守っていた。
血のような赤みを持った目は六歳とは思えないほど知性的で吸い込まれそうだった。
ゲームでは背の高いイケメンだけど、まだ幼いので女装も似合うと思う。ちょっと見てみたいなあ。
見つめすぎたのか、ニコラスと目があった。
私が軽く微笑むと、ニコラスも返してくれる。
私の時はニコラスを見て倒れてしまったから、ちょっと既視感があって面白い。
そんな風にして、無事に儀式が終わろうとしていた……けれど。
『エイリーン。余の愛し子よ、少しの間こちらに来るといい』
耳元で囁かれた言葉に目を見開く。
ぐらりと傾く視界で、周囲の目が私に集まっている。正確には、私を抱き抱えた白い男に。
「姉上っ!」
アーネストの悲鳴のような声を最後に、私の意識はぷつりと途絶えた。
暖かい日差しに、やっぱり日向ぼっこにちょうど良い季節だなぁと思う。
今日はアーネストの儀式の日。
参加できるのは家族と王族だけ。アーネストとにんじん頭はそれなりに仲良くなったみたいだから、にんじん頭だけ参加できなくて可哀想かもしれないけど。
「姉上、そのドレス……!」
「貴方の髪の色に合わせてみたの。似合うかしら?」
「はい、とてもお綺麗です」
深緑のドレスは落ち着いた色合いだし、装飾も少ない。
今日の主役はアーネスト。だから、アーネストよりも目立たないようにと選んだんだよね。
王宮に行く馬車にはアーネストと二人で乗る。お父様は仕事ですでに王宮にいるからね。
「姉上をエスコートできて光栄です」
「エスコート、とても上手くなったわ。この先のパーティーはアーネストがエスコートしてくれることが多いのでしょうね。楽しみだわ」
婚約者がいないのだから、エスコートするのはお父様かアーネスト。
お父様は忙しいし、アーネストに頼むことになるだろう。
幸せそうな笑顔のアーネストに、こちらも癒された。
馬車を降り、謁見の部屋に到着すると、アーネストの手がわずかに震えていることがわかる。でも、それを耐えている横顔が可愛くて、ついお節介を妬いてしまう。
「アーネスト、大丈夫」
「……はい、姉上」
手を握り返せば、微笑んでくれる。
アーネストのタレ目だとか、屋敷に来てからますます輝いている美貌だとか、涙黒子だとか……。まだ六歳のくせに、漂う色香に息を呑んだ。
ああ、いけないいけない。
扉を開く。厳かな雰囲気のその場所には、国王陛下、王妃様、ニコラス、ニコラスの弟妹、近衛騎士、そしてお父様の姿がある。私の時はちょうど出産時期だったらしくてお目にかかれなかったけど、王妃様の若々しい美貌に圧巻だ。そりゃあ、美人と美人の子供のニコラスは美人に決まっているよね。
所定の場所につく。
近衛騎士がアーネストにナイフを渡した。そして、献上するように白い石を掲げる。
アーネストがナイフで軽く指を切り、石に血を押し付けた。
途端、石がぼうっとした緑色の輝きを放つ。
「緑色です、陛下」
お父様がそれを確認して報告する。
「お前に、ドラゴンの名を与えよう」
よく響く陛下の声が耳に心地良い。自分のときとはまた違ってドキドキしてしまうな。陛下の決まった言葉を聞きながら、そっとニコラスに視線をずらす。
ニコラスは真剣な表情で儀式を見守っていた。
血のような赤みを持った目は六歳とは思えないほど知性的で吸い込まれそうだった。
ゲームでは背の高いイケメンだけど、まだ幼いので女装も似合うと思う。ちょっと見てみたいなあ。
見つめすぎたのか、ニコラスと目があった。
私が軽く微笑むと、ニコラスも返してくれる。
私の時はニコラスを見て倒れてしまったから、ちょっと既視感があって面白い。
そんな風にして、無事に儀式が終わろうとしていた……けれど。
『エイリーン。余の愛し子よ、少しの間こちらに来るといい』
耳元で囁かれた言葉に目を見開く。
ぐらりと傾く視界で、周囲の目が私に集まっている。正確には、私を抱き抱えた白い男に。
「姉上っ!」
アーネストの悲鳴のような声を最後に、私の意識はぷつりと途絶えた。
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