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ばれんたいん・でい 第三弾

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 初めのと続の間くらいの時間軸です。




「ばれんたいん?」

「異国の文化なんだけど、今流行しているイベントでね。なんでも、大切な人にチョコレートをあげるらしいよ。友チョコとかーー本命チョコとか」

 僕は、さりげなくアイリーンにバレンタインのことを話した。

「ぼ、僕、チョコレートとか好きだなぁ?」

「ーーありがとう、レオン!」

 アイリーンは、瞳を輝かせて、すっくと立ち上がった。その手は、僕の手を握っている。

「え、あ、えと」

「チョコレート、買ってくる!」

 そして、護衛すらつけずに城を飛び出していくアイリーン。

 まぁ、誰にでも好かれている彼女のことだ。
 もちろん、見えないだけで、本人にさえ気づかれずに、見守っている人がいるはずだ。

 グラッツ、とか。

 彼のことは一応調べ上げたのだが、たいして情報が入ってこなかった。
 ガードがきつい。

 それからしばらくして。
 アイリーンは、城に戻ってきた。

 その手には、おそらくチョコレートが入っているのだろう紙袋を持っている。

「じゃあ、ヴァイオレットのところに行って友チョコを渡す!」

 驚いた。
 彼女がちゃんと戻ってくるなんて。

 貴族の家を訪ねるのに、アポもなしで突撃すれば、まさか王妃を追い返したりはしないだろうが、会えないことも少なくない。

 そういうことを学んだのだろうか。

「そうか。ヴァイオレットは友達だったか」

 初めがあれだから、そこまで仲がいいとは思っていなかった。

「ーーんと、ヴァイオレットは唯一、ちゃんと話したことのある女の子だからね」

 そうか。

 話したことあれば友達なのか。

「じゃあ、馬車を出そう。エスコートするよ」

 もしも運が悪くて、ヴァイオレット宅にクリスなどがいたら大変なことになる。
 是が非でもついていく。

「わかった」

☆★☆

「ヴァイオレット!」

「きゃああああああああ!」

 本気の悲鳴があがった。

 案の定、ヴァイオレット宅にはクリスがいたので、やはりついてきって良かったと思いながら、助けを求める視線をかわす。

「はい、チョコレート」

「あなた、バレンタインを知っていましたのね。わたくし、てっきり、ご存知ないかと思いました」

「レオンが教えてくれたの」

「まぁ、レオン様がーーそういうことなら、わたくしも安心ですわ。クリス様をとりにきたのかと思いましてよ」

 話によると、とったのはそちらのほうなのだが。

 だが。
 待てヴァイオレット。
 勘が鋭く比較的常識をそなえている君は、何かに気づいてしまいそうだ。

「あなたでもラブラブでしたのね」

「らぶらぶ?」

「レオン様と。二人でチョコレートの交換でもなさったのではありませんか?バレンタインは、恋人がメインのイベントですもの。あなたがたは新婚でしょう?」

 その通りである。
 僕だって、たしかに農業が好きだし、農業を頑張るアイリーンも好きだ。

 だけどアイリーンは、ときおり僕のことを男として見てないような気がしてくるのだ。

「ーーそれよりも、わたしは友達がほしい」

 ーー。

 決めたぞ。
 僕は決めた。

 ヴァイオレットからアイリーンを引き剥がすと、ヴァイオレットを引っ張って近くの物陰に隠れた。

「何をしますの!」

 キッと睨んでくる瞳に、この人はやはりクリスしか好きではないのだと確信する。

「はやく戻らないとーーわたくしにとってもですが、あなたにとっても良くないことがおこりますわよ」

 そりゃそうだ。
 僕とヴァイオレットが出ていったことで、クリスとアイリーンを二人っきりにしてしまった。

「だから、簡潔に言う。僕は、アイリーンからチョコレートがほしい。そのために、何でもする」

☆★☆

 クリスを牽制しつつ、ヴァイオレットとレオンが戻ってくるのを待っていた。
 レオンが唐突にヴァイオレットを連れて行ったとき、胸がちくんとしたのは、何だったんだだろう。

 不思議な感覚だったし、初めての感覚だった。

「おまたせしましたわ」

 ヴァイオレットとーー見たこともない女の子が入ってきた。信じられないくらい綺麗な子だ。

「紹介しますわね。わたくしの友達で、レオナといいますの。ぜひ、アイリーン様と友達になりたいとおっしゃったので連れてきましたわ」

 へぇ。
 レオナさん。

「よろしくね、レオナさん」

 わたしは、嬉しくなってニコリと微笑む。

 なぜか赤くなったレオナさんは、コクリと頷いた。

「う、うん。よろしく」

 低めの声だな。

「じゃあ、友達の証に、これ。友チョコだよ。ヴァイオレットに渡したのと同じ。わたしが食べる予定だったんだけど、あげるね」

 袋からチョコレートを取り出して渡すと、レオナさんはぱーっと顔を輝かせた。

「ありがとう存じます」

 ふふ、喜んでもらえてよかった。

☆★☆

 あー。
 よかった。
 騙しているようでちょっと胸が痛いけど、とにかく手に入れた。

「美少年って、何でもにあいますのねーーはぁ。わたくしより綺麗ってどういうことですのよ」

 うん?
 どういう意味だろう。

「あ、レオン!どこ行ってたの?」

「え、いやちょっとね」

 アイリーンに気づかれた。

「もう。残念だったわね。もう少しでレオナさんに会えたのに」

「そういえばアイリーン様、レオナ様にはだきつきませんでしたのね。わたくしには抱きつきますのに」

 そういえば、そうだ。
 そのおかげで、心臓が飛び出さずにすんだ。

「うーん。なんでかな。レオナさんには抱きつけなかった。抱きつくって考えると、なんだか恥ずかしくなってしまって」

 ーーもしかして。
 意識、してくれたり。
 していて、どこかで僕を感じていたのかもしれない。

 あまりに希望的観測すぎるかな。

「それと、はい、レオン」

 突然。
 チョコレートを渡される。

「えーー」

「わたくしやレオナ様のと違いますのね」

「うん。なんとなく、レオンは、友チョコじゃない気がしたの……なんとなく」

 ぎゅ、と胸がしめつけられる。

 ねぇ、はやく。
 はやく、僕のことを好きになって。

 僕だけこんな風になるのはずるいよ。

 好きすぎて、我慢できなくなりそう。









これで、バレンタイン企画は終了です♪
ありがとうございました!
本編のほうも引き続きよろしくお願いしますm(_ _)m

テストが……テストが……。
もう諦めてもいいですかね……?
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