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「国に帰って、義母と決着をつけて来ます」

「……俺も援助する」

「……はい。お願いします。貴方のお力添えがあれば、確実に義母の力を削ぐことができます」

 コレットがリベリオに要求したことは一つ。
 セザールの友人として、帝国に赴くこと。
 その際、コレットも一緒に連れて帰る。
 コレットは王国に亡命したものの、母親が亡くなったショックで記憶喪失しており、子爵家に引き取られていた。だが、偶然セザールと再会し、彼女が帝国の姫であることが判明。よって帝国に引き渡しに来たと。

 リベリオが引き渡すまではコレットの身柄はリベリオの手にあるので、そう易々と義母も手を出せない。
 その間にコレットは自分の地位の確立と義母の権威落としをやる。

 そういう手筈だった。

◆◆◆

「…あはー。こりゃ、お義母様は私のこと余程嫌いみたい」

 コレットは、力なく笑った。
 国境付近、リベリオとセザールが席を外しているうちに、コレットは拉致された。
 流れるような動きだ。コレットに抵抗する隙すら与えなかった。コレットの力量を正確に把握している人数に、武芸に覚えがあるといっても、所詮小娘のコレットはどうすることもできなかった。計画犯に違いない。

 側妃はずっとコレットのことを忘れず、この時を淡々と待っていたのだろう……今度こそ、コレットを始末するために。
 コレットは正妃の娘。息子の帝位を揺るがす存在を彼女が目を瞑って受け入れるはずがなかったのだ。
 リベリオ側としても、今はまだ王国内。王国内で友好国の姫を殺してしまったという不始末をわざわざ言うはずがない。揉み消せるなら揉み消したいはずだ。

 そうして、コレットは初めからいなかった存在になる。

「……あはは」

 諦めていた。全部全部、諦めていた。
 諦めていた。けど。

──“君が好きだ”

 なんで。なんでなんで。今更。

 両手を縛られ、逃げられないようにされて、挙げ句どこへ行くかもわからない馬車に乗せられて。まぁきっと私は殺されるんだけど。死の直前に思い出すのが、最近会ったばかりの王子の顔なのか。
 なんでお姉様やジーノではないのか。

 命を狙われている王子さま。
 敵も味方もわからずに、さ迷いながら努力を重ねる。
 その姿が、まるで私みたいで。時おり彼のことを考えるようになって、良いところや嫌なところも目について、彼の顔が瞼の裏から離れない。

「私のこと好きなら、助けに来なさいよ」

 聞こえないと知っていて口に出した。
 自分が惹かれているというのが悔しくて。八つ当たりだってわかってるけど。

「……助けに来たよ。惚れた女の子を助けられないなんて、王子失格だからね」

 やっぱり、ズルくて悔しい。
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