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五章
俊宇
しおりを挟む天佑の部屋で見事に寝落ちた翌朝、俊宇は彼の屋敷を慌てて飛び出した。
鐘が鳴らずともいつもの時間に目が覚める癖はついているが、この日ばかりはその時間では遅かったのだ。屋敷から城門まででも四半時は歩かねばならぬ。
身支度もほどほどに、しかしよく眠れたせいで疲れの取れた体を潔くたたき起こし、朝餉も受け取らずに駆け出した。まだ朝霧の晴れぬひんやりとした帝都の町を、一人で全力疾走である。控えめに言って、みっともない。
今朝にはいるはずの俊宇がいないので、今頃女官たちが狼狽えていることだろう。俊宇の代わりに殿下をうまく起床させることができねば、お咎めを受ける。そのへんを雲柳がこなしてくれているといいのだが、任せて安心ともいかぬから困る。彼はそういったことについては俊宇よりも遠慮がちなところがある。
卯の刻前に起きることを、寝る前に心得ていればきっと起きられたはずなのに。酔いに任せて気分よく寝落ちてしまい、いつの間に運ばれたか心地よい寝台の上で休んでいたのが睡眠を深くしていたようだ。
天佑と昨夜何を話したかといえば、結局は愚痴のような弱音のようなものだけだった。もっと打ち解けて、くだらない話でもしようと思っていたのに、天佑の気遣いにまんまと乗せられて、どうにも情けないことになった。
あの男は、根が優しいのだ。俊宇が厚かましいとはいえ、嫌なら嫌と跳ねのけてしまえばそれ以上関わろうとしないのに、なんだかんだと受け入れられたようだ。
それが、嬉しかったのだ、たぶん。師範の件は決して口実ではないのだが、それがあったからこそ縁が繋がった。今後もそれは大事にしたいなどとは、都合がよすぎるだろうか。
どうせ強引に結んだ縁なのだ。強引なまま深めていってもよかろう。
まるで惚れでもしたように、彼に引き付けられたのだから仕方がない。つまるところそういうことなのだと、そろそろ自分の行動の理由にも思い当たってくるわけである。
「尹殿、朝帰りとは隅に置けませぬな」
途中すれちがった役人に揶揄われ、「煩いですぞ」と走りながら言い返す。殿下の住まう鳳輝殿に乗り込み、居間に駆け付けた時には、ちょうど殿下の朝餉が終わったところだった。
「遅れまして、大変申し訳ございません」
拝礼のあと開口一番に言うと、殿下は一度目をぱちくりしてから、プッと噴き出して笑った。
「俊宇のこのように慌てた顔は初めてだな。私を探しに来る時ももう少しは余裕がある」
普段叱られている相手に、やっと逆襲の機会を得、殿下はご満悦のご様子だ。しかしそう言われても言い返せない。本当に、ここまで必死に走ってきたのだ。息も上がるが、無礼よりもこれ以上の遅れのほうがまずいと思った。
ほっとしたような呆れたような顔を見せたのは、俊宇の代わりに殿下の世話を焼いていた雲柳である。
「遅れたのは、殿下に説明できる理由なのでしょうな?」
渋く咎める目つきと口調が痛いが、この苦言も致し方ない状況だ。俊宇とて若い男である。それが職務を忘れて無断朝帰りといえば、疑われる理由は一般的に一つしかない。ここはその不名誉な疑いは払拭しておかねばならぬ。
「もちろんです。その、例の人物の家を訪ねて、話し込んでいるうちに、ですね。寝落ちてそのまま寝過ごしました」
「その者とは、親しくなられたのですか」
「ええ、少しは。成り行きで」
雲柳の表情に少し見えた期待を、ここでは摘み取っておくしかなかった。天佑には引き受けることができるならばとさえ言われたが、あいにくそこまでだ。事態は依然変わらない。
「誰なのだ? その者とは」
二人の侍従の間で交わされるやり取りに、仲間外れになった殿下が割って入った。
「実は殿下の師範にと候補に挙げたかった者なのですが、いろいろ事情があって引き受けてはもらえなかったのです。ただ、その話を持ち掛けているうちに、なんとなく親しくなりました」
「ほう。そのようなこともあるのですなあ。人となりは問題なさそうですのに、残念でなりませんな。しかし念のため聞きますが、女性ではないのですね?」
「噂にたがわぬ、立派な男子ですよ。しかも、私よりも年上です。やましいことはありませんのでご心配には及びませぬ」
珍しく俊宇が執心という相手が気になるのか、雲柳はしつこく疑ってくる。彼は近年たびたび俊宇に見合い話を持ち掛けてくるのだが、またそういった話を持ってくるつもりだから気になるのだろうかとすこしげんなりする。が、まあ、それは放っておくしかない。今は自分の嫁より殿下の師範だ。
「別に、通うだけなら男でもいいのではないのか?」
またひょこりと殿下が口を挟み、侍従たちはぎょっとする。これはこれで聞き捨てならない。男女の理さえ知らぬ殿下だからこその一言だったとはいえ、である。
「殿下。そういうことをどこで覚えて来られたのです」
「この間、書庫で逢引きを見つけたのだ。そっとしておいたぞ。確か礼部の治郎と工部の……」
礼部治郎といえば、洒落者の男色家で名の通った男である。また若い官吏に手を出しているらしい。個人の趣向は知ったことではないが、そういうことを人目のあるところで行うのは問題だ。もちろん、書庫に隠れていた殿下も違う意味で問題ではあるが。
「ああ、それは聞きますまい。……何か見ましたか」
「すぐにそなたが探しに来たから見られなかった」
「それはなによりです……」
どうやら書庫というのは何かと密事の多い場所のようだ。吏部に言って書庫番をあと数人増やし、見回りをさせた方がよさそうである、というのも別の話だ。
焦りの上に脱力はかなりきつかったが、とにかくは駆け付けることができた。気を取り直して、一日の始まりである。
「殿下、賢師範がお待ちでございます」
伝令係が、話の切れ間に声をかけてきた。今日は朝一番に武芸の稽古の予定らしい。
「わあ、まずい。行くぞ」
あわてて席を立つ殿下に、さっそく付き従うのは俊宇である。武殿までの道中を安全にお送りするためだ。稽古の間も、侍従のどちらかが殿下の安全を見守ることになっている。
武芸の師範はきっちり鐘の音と共に稽古を開始するので、遅れると殿下は叱られる。今日ばかりは原因が俊宇にあるので、弁解のためにも俊宇がついていかねばならない。
広い宮廷を速足に渡りながら、殿下の横顔は少し楽しそうだ。武芸はお好きな方だが、それを楽しみにしているのでもないだろうに。
「いかがなさいました、殿下」
訪ねても、明るい笑顔が返ってくる。それがなぜかと思ったのだが、次のお言葉で納得させられた。
「焦った俊宇が面白かったからな」
勝ち誇ったお顔に、こちらはため息が出る。まだしばらくこの一件を引きずることになりそうだ。
「もうその話はおよし下さい」
「はは。たまにはあんなそなたも良い」
「そうですか?」
「なあ、その者は美人なのか?」
「殿下。ですから彼は……」
「男だろう? でも美人なのかときいている。別にいいじゃないか、隠さなくても」
それはどういう意味かと問う暇もなく、武殿はすぐそこだ。はぐらかしているうちに、賢師範の武骨なしかめっ面が見えてきそうだ。
「麗しいですよ。頭がよく、面白い男です」
「そうか」
殿下はニヤニヤしながらそう返しただけであったが、ごく短い説明をした俊宇のほうが、なぜか照れくさく感じてしまった。
この幼き主は、持ち前の慧眼で一体なにを見何を感じたのか。一方的に心を読まれたようで、とても落ち着かない。しかしそれを突き止めることはするまい。己が心は己で見つめるものだ。
「殿下! ようやくお出ましになられましたか!」
野太い声が出迎えて、殿下はびくっと飛び上がった。
「賢殿! それは違うのです!」
次の怒声が飛んでくる前に俊宇が張り上げた声に、庭木の枝にとまっていた鳥が二羽驚いて飛び去って行った。
●
月日は瞬きの間に過ぎていくように感じられた。また慌ただしい日々に追われ、ろくに休みもとれぬままに幾日も過ぎ去っていた。
もうこのまま突き進むしかないのだろうかと、心のどこかで思うようにもなる頃だ。少なくとも、雲柳が矍鑠としている間は、なんとかやっていけないでもない。
ただ、ギリギリというのはいざという時に綻びが大きく出るもので、それが許される立場でもないために、余裕のない執務の間に人探しは続けていくしかないというところだった。
それでも、殿下の心は安定したようだった。やはり幼少から身近にいる侍従が師範というだけあって、意思疎通にまったく問題がない。生活態度につながることにも遠慮なく口を出せる二人だから、書の範囲を超えた助言も叶うのだろうと思われた。
だからこそ、そういった親身になれる師範がいればもっと殿下は大きくお育ちになれるのだろうと思われてならず、侍従の心労は絶えることがないのである。
秋が深まり、遠き山の風情も哀愁を思わせるようになった。俊宇の房の庭も、紅葉が一雨ごとに色を変え、朱く色づいていくのが目を楽しませてくれる。
暇があれば、宵の篝火に映える紅葉をあてに酒でも飲みたいものだが、生憎それどころではない。できることといえば、こうして廊下を渡りながら、池の水面に映る紅葉を、浮かぶ錦の彩を、遠目で愛でるくらいのものだ。
結局、天佑の学問所にも足が遠のいたままになってしまった。せっかく子らにもなつかれ、老師とも親しめるようになったというのに、なかなかうまくはいかないものだ。
それも致し方なし、自分には与えられた責務がある。それを使命とも生き甲斐とも思い、努めるのが第一である。この国の行く末のほんの一部であっても、自分のこのちっぽけな肩にそれが掛かっているのならば。それが、果ては彼らのような学を志す者にもなんらかの益となれる可能性があるならばと。今はそう思い、励むしかない。
決意を新たに、庭から視線を外して前を向き直った俊宇に、呼び止める声がかかった。「尹殿、ご来客です」
平板な物言いをするこの若い伝令、今日もつまらなそうな顔で、必要最小限のことだけを伝えてくる。
「来客? そのようなもの、来る覚えはないがな」
「追い返しますか。ご家族の方ではないようです」
「うーん。まあいい。応接の三の間に通しておいてくれ。門をくぐれたならそれなりの……」
用があるのだろうと言いかけて、心当たりを思い出した。
ただ俊宇に会いたいというだけでは、一般人が門を通されることはない。例えば出入りの商人だとか、そういった者さえ身分を明かすものを持っていなければ門前払いで、あとはそれこそ、宮廷内の者の家族ならば、そう名乗れば通してもらえるというようなところである。
という前提で、俊宇を訪ねて門を通れたならば、一人しかいない。まさか!
「汪と名乗る者です」
「ああ。確かに私の客だ」
なぜ彼がわざわざ俊宇を訪ねて城まで赴いてきたのか。今になって例の話を受けに来たのでもあるまいに。
急く心をなだめながら、しかしいそいそと足を運ぶ自分を認めぬわけにもいかず、応接間までのやたらと長い廊下を、衣の袖を翻しながら駆け抜けていった。
朱塗りの太い柱を何本も通り過ぎ、その先にある重厚な扉の前まで来て、息を整える。奔ったことを悟られるのは、なにかと体裁がよくない。最後に一度大きく息を吐き、衣の乱れも整えて、扉を開けた。
庇からそそぐ木漏れ日の眩しい応接間。俊宇を待っていたのはやはり、予想通りの人物だった。
目が合い、彼は悠然と笑う。気を遣ったのか、いつもよりもずいぶんとめかしこんだ服を着、簪までさしている。ゆったりと椅子に腰かけていたものを、俊宇を迎えるために立ち上がり、「やあ」と軽く声をかけてくる。
「いかがした。驚いたぞ」
ここに来るまでの長い道中、なにか急ぎの用か、困りごとでもあったかと心配もしたのだが、天佑の美しい笑みに一切の憂いは見て取れない。では、何用か。かえって不思議にもなるというものだ。
「生まれてこの方、宮廷に足を踏み入れることになるなどと思ってもおらなんだが、まこと大したところだな。まさか本当に名乗るだけで通されるとは。笑わせてもらったぞ」
ゆったりと謡うように言って、眩しいほどの笑顔を俊宇に寄越してくる。
「……言っただろう。しかと伝達は行き届いているようでよかった。でなければまるまるの無駄足になるからな」
万が一を思って、汪天佑の名は通しておいた。念のためというよりもそれは薄い期待であったような気もするが、それがこうも早く功を奏することになろうとは。
「そなた、大層な御身分なのだな。知ってはいたが、実感した」
「おいおい、それは嫌味か?」
「誉め言葉には聞こえぬか?」
「そなたそれでも学者か? 言葉を少しは選べ」
「選んだ結果だ」
二人が笑い合っていなければ、喧嘩かと思われるような会話だ。しかしこのようなやり取りで、二人は久しぶりの逢着を喜び合う。友の来訪は、遠方からでなくとも嬉しいものだ。
「で、どうした。何か、用なのか?」
嫌っているはずのこの場所に、なぜわざわざ?とは言葉にできなかった。その一言が、天佑の厚意を挫いてしまいそうで。
「何か用かは薄情だな。せっかく逢瀬を楽しみに来たのに」
「言ってろ。で、どうなんだ」
「忙しいだろうから長居はせぬよ。ほれ。これを届けに」
そう言って天佑が差し出したのは、白木の岡持ちだ。確かに先ほどから、空腹に利くいい匂いが部屋を満たしていた。
「いつも子らに差し入れてくれるからな。たまには礼を持ってきた。満安茶楼の名物で、期間限定の菊花入り点心だ。ふかしなおして食べるとよい」
「ありがたい。これは、有名なのか?」
「やはり知らなかったな。流石の疎さだ。そなたの実家の近くの店でな、これが売られるととたんに行列ができるのだぞ。宮廷料理も美味いだろうが、たまには庶民の馳走を食してみよ。味は保証する」
「へえ、そうなのか。そんな名店が家の近くにあったとは」
「そなたもう少し遊んだほうが良い」
「その暇はなくなったな。なけなしの休みも、口の悪い学者のいる学問所へ通うと決めたのでな」
「それは気の毒に」
また笑い、天佑は岡持ちの蓋を開ける。竹の薫りもかぐわしい蒸篭の中では、少し小ぶりの点心が花を咲かせたように綺麗に並べられており、目をも楽しませてくれた。このまま手を伸ばして口に放り込みたいところだが、行儀がよろしくないので留まる。
「では、用が済んだので行くよ」
満足そうな顔で、天佑は卓から離れようとした。その行動はあまりにも潔く、引き止める隙もないほどだ。
「おい、本当に用はこれだけなのか?」
俊宇の声が届いたのは、天佑がもう既に扉に向かう一歩を踏み出した背中だった。彼は足を止め、首だけで振り返る。
「いけないか? そなたの邪魔をしてよいなら居座ってやるが、それでは殿下から罰を賜るのだろうからな」
そんな愛想のない言い方に、しかしほんの少しの物足りなさを見た気がして、ここで行かせてはならぬと思った。
「汪黎」
「うん?」
「茶くらい飲んでいけ。薄情者め」
出たのはやはり、素直とは言えない言葉だったが、たちまち天佑の表情に華が咲く。
「わかった」
今、ちょうど手の空いている時間でよかった。もう少しくらいならば天佑との時間も過ごせる。
この間は寝入ってしまったが、天佑と話すのは純粋に楽しいのだ。先ほどのような応酬も、とりとめのない世間話も、そしてそれぞれの近況も苦労話も。打てば響くような会話ができる相手など、なかなか巡り合えるものではない。宮廷内で腹の探り合いか建前の交わし合いばかりを繰り返している俊宇にとってそれはいつも新鮮で、じつに寛ぐことだった。殿下とも違う、雲柳とも、もちろん陛下ともちがう目線で楽に話ができる、その時間の貴重さは、他には代えがたいものになった。
今日思いがけなくそれが叶うことになったのは、こうして天佑の方から出向いてくれたお陰だ。急なことでそれに返すものもないが、礼などしても嫌がられるだけだとわかるから、彼がそうせよと言うように、この限られた時間を大いに楽しむことにした俊宇である。
傍付に茶の準備をさせ、整ったら俊宇が淹れる。天佑が届けてくれた点心も温めて持ってこさせた。
「どうだ、近頃は」
忙しいだろうにすまないなと、また一度断ってから、天佑は話を向けてきた。
「相変わらずさ。あの夜以来だな。みっともないところを見せて、すまなかった」
一晩天佑の世話になった日のことを思い出すと、まだ情けない気分にもなる。しかし、ああいった気の抜き方をしてしまったのは、他でもない天佑の前だったからだ。
「はは。訳ありのように「あの夜」などと言うでない。人聞きが悪いぞ」
「そうだな。確かに翌日は殿下ともう一人の侍従に、いろいろと勘繰られた」
「無断朝帰りの言い訳はどう答えた?」
「絶世の美女に惚れ込まれて、一晩返してもらえなかったと言った」
「あはは。それはいい! 次は女装して来てやろうか」
「そなたなら似合うだろうよ」
「馬鹿を言うな。私では大女だ」
「違いない」
久しぶりに、声を立てて笑った。
こんな会話が、やはり妙に楽しい。それもそうだろう。俊宇は、己が心に芽吹いたある種の熱に、実はもう気が付いている。
その熱になんと名をつけるかよりも、どう分類するかよりも、ただ自分が天佑を必要としている事実が圧倒的に明白であって、抗いようがないのだ。
このような穏やかな関係がこのまま続くことを、心から願っている。
それだけでいい。それ以上には望まないし、望むべくもない。偶然に出会い、俊宇が強引に縁をつないだ相手だが、天佑からもこうした好意が返ってくるようになって、もう、それ以上に何を望もうか。
「どうした、伊宇?」
「いや。汪黎。ありがとう」
「なんだ。改まって」
照れたかそっぽを向く横顔も、美しくて。少しだけ胸が痛む。
手を伸ばして触れたいが、それはできぬため、心の奥で苦笑するしかない。だから何か別のものに託すくらいは許されていいだろう。君がいてよかったと、そう思う心にはなんの疚しさもない。
ただ柔らかに流れる時間は、しかし長くは続かなかった。応接に近づいてくる慌ただしい足音を聞きつけた二人は、「ここまでだな」と視線で申し合わせる。残念だとか、そんなせんない言葉は言わない。
「侍従殿! 至急、弓場へお越しください! 殿下が、お怪我をなさいました」
「なに?」
飛び込んできた伝令がそのまま腰を抜かしそうになるほど、俊宇の権幕は激しかった。
「御怪我の程度は? 深いのか」
「さほどでは……」
「ならよい。殿医は呼んだか」
「もちろんでございます」
「すぐに行く」
すまぬと目配せをし立ち上がった俊宇に、天佑が「私も行ってよいか」と問いかける。なぜそなたがと聞く間も惜しく、俊宇は駆けだした。
「好きにせよ」
振り返らずに答え、俊宇は天佑を置いて先を急いだ。伝令がここまで来ている間に、応急手当は誰かがしているはずだ。だが、傷の様子を見るまでは、やはり安心はできない。殿下が無事でも、そうなった経緯をその場に居合わせた者から聞き取らねばならぬ。
ほうっておいた天佑のことも気になったが、彼ならば先ほどの伝令に場所を聞いて後から駆け付けるだろう。どういうつもりかは知らないが、思うところがあるから申し出たのであろうし、部外者以外の何物でもない天佑が殿下に拝謁するという問題に関しては、まあ、師範の候補者ということでなんとか理由はつけられると咄嗟に判断した。
武殿の裏手に位置する弓場に俊宇が駆けつけた時には、既に殿医による手当てが終わろうとしているところだった。
「殿下はご無事か」
かけた声に殿下が顔を上げ、殿医とその場に居合わせた者たちが俊宇に礼をとった。
「上腕を矢がかすり、お怪我を召されました。只今薬を塗り、包帯で手当てを」
殿医の説明を聞きながら、殿下の顔色をうかがう。その場に座ったままの姿勢で処置を受けていた殿下は、叱られることを予想したきまり悪げな表情で、ちらと俊宇を見上げていた。
「大事ない。これしきの傷、大したことはないから案ずるな」
「それはようございました。しかし、どうしてこのようなことに? 今殿下は座学のお時間のはずでは」
殿下の一日の予定はもちろん把握している。少なくとも、弓場のような場所にいるべき時間ではないはずなのだが。
問えば案の定、殿下はふいと視線を逸らした。あやしい。
代わりに、弓場で鍛錬をしていたらしい者のほうへと質問を移した。すると、近衛兵と思われる若者は、青い顔をしてその場にかばりと平伏して見せた。
「どうか、お咎めを。殿下に気が付かず弓を射てしまいましたのは、わたくしめでございます」
「どういうことか」
「その、鍛錬中に急に殿下がお出ましに。驚いて手元が狂いましてございます。この未熟者を罰してくださいませ」
近衛兵は額を地につけ、震える声でそう言った。俊宇は深くため息をつく。
「どういうことです?殿下。また座学を抜けて、このようなところまで?」
「……座学は終えた。次の手習いまでにちょっと散歩に来たのだ」
俊宇の咎めに、殿下の声もだんだんと小さくなる。
「このような場所まで来られては、手習いの時間までにお部屋に戻れませんが?」
俊宇の声が、口を開くごとに鋭く尖る。
また、気まぐれか。頭が痛い。殿下は生来じっとしているのが苦手だ。それでもこのごろはずいぶんと弁えて、よほどでなければこのような勝手はなさらなくなっていたのに。油断していた。
「少しだ。少しだけ」
殿下の肩が落ちてくる。大目玉まであとどれくらいかと、呼吸を計ってでもいるようだ。
「殿下。しかも共も連れずに出歩かれますなとどれほど申し上げても!……」
さすがの俊宇にも堪えが利かず、説教の始まりの息を吸った時、後ろから思わぬ声がそれを制した。
「皇太子殿下に拝謁申し上げる」
凜然と通りのいい声が、その場の者を振り返らせた。いつの間にか駆け付けていたらしい天佑だった。その存在を知る者はこの場に俊宇しかおらず、皆何者かという顔で見慣れぬ美丈夫を眺めている。
「私、汪天佑と申す者。そこな侍従殿の友にて、帝都で学者を生業とする者でございます」
この場合、民が自ら皇太子殿下に声をかけることから不敬にあたるわけで、俊宇も目を見張った。しかし、天佑は拝礼の姿勢のまま臆することなく言葉を続けた。
「無礼千万と承知の上で申し上げたきことがございます。お許しいただけますか」
天佑は俊宇を見ない。その鋭いまなざしを一点殿下に注いだまま、否を許さぬ静かな権幕だ。その勢いに負けたか、殿下は小さく「許す」と返した。
その場の者たちが、ただ固唾をのんで天佑を見守る。何者だと止めることができるとすれば誰もが可能な身分であったが、一人としてそれは叶わなかった。
天佑は俊宇を押しのけて殿下の正面に跪く。そして彼にしては硬く厳しい面持ちで、殿下に説教を始めたのである。
「殿下、あなたは、まったく自覚が足りません」
いきなりばっさりと切り捨てる言い方に俊宇は面食らったが、天佑の言葉は途切れる暇なく続いた。
「いいですか、よくお聞きなさい。孫子も論語も覚えずとも結構。字など下手でも国は守れます。されどこれだけは肝に銘じなさい。あなたの、言動ひとつひとつに、誰かの命や人生がかかっているのです。あなたの軽はずみな行動が、何人もの下々の命や生活に影響を及ぼすことをどれほどわかっておられますか」
天佑が、ちらと平伏したままの近衛兵に視線を運ぶ。
「あなたのお怪我が軽いなら、まずはこの者を許しておやりなさい。彼はずっとこうしてお咎めを覚悟してひれ伏しておるのですよ。まさかほんとうに、この者に非があるとでもお思いか」
「いや。それはない」
「でしょう。この者は、あなた次第で首をはねられる可能性を抱えているのです。あなたが暴君であればそれもありうる。下々とはそういう立場です。此度悪いのは完全にあなただ。むしろ迷惑をこうむったのはこの者。かけてやる言葉もないのですか」
ぴしりと言われ、陛下は肩をすくめた。天佑の言う通り、近衛兵のことには意識が及んでいなかったようだ。改めて、気の毒そうな目で彼を見降ろした。
「……。そなた、もうよい。急に飛び出して悪かった。行ってよい」
「は、はい。御前ご無礼いたしまする」
完全に腰がひけてしまって、やっと立ち上がってもよろけながら、近衛兵は二度と顔を上げることもなく去っていった。傍らに転がった弓も置きっぱなしだ。
「お分かりになりましたか。あなたはただ手習いを放り出そうとしただけでなく、共も連れずに歩き回り、危険の伴う場所に平気で入り、怪我をし、先ほどの者への対応も怠った。もう九つにおなりならば、もっとわきまえねばなりません」
「うん」
しょぼくれた声でうつむく殿下を、しかし天佑はまだ許さない。学問所の子を叱るときならばそろそろここで怒りを収めてやっているところだが。
決して激しくはない口調だが、畳みかけるような言い方は、実は天佑には珍しい。天子の御子相手という要素が、このように天佑を変えるのだろう。
「気に入らないなら言葉を尽くしてちゃんと話しなさい。ねじ伏せるのでも押し通すのでもなく、まして逃げるのでもなく、相手に伝わる言葉で納得させるのです。そのためには妥当な判断も必要です。そういったことを適切に成すために勉学に励み、それを第一の武器として身を守り、事を正しいと信じる方へと導くのです。よろしいか。あなたが今習っているすべてのことは、あなたに足りぬことでありあなたが君主となる日までに身に着けるべき最低限であるはず。それから逃げようなどとは、王座を見捨てると同義。そのような姿を見せておって、いったい誰があなたを主君と崇め従いましょうや」
「おい、天佑。言いすぎだ」
さすがに言葉が過ぎる気がして俊宇は苦言を挟んだが、それも天佑の冷ややかな目に一蹴される。彼はそうとう怒っているらしい。初対面の皇太子殿下に、そしてそれを世話する俊宇にだ。
「そなたは黙っておれ。こういうことをお教えするのこそがそなたの役割であろう。違うか」
「天佑……」
「まあ、人手不足なのは確かであろうがな。それでもどうにかするのが、侍従の手腕であろうに。甘やかしすぎだ」
「……」
ぐうの音も出なかった。まさに宮中の勝手によって父親の運命を変えられ、それを子の自分までもが被っている、そんな彼の言葉には重みがあった。
このような厳しい言葉を浴びせられた殿下はどうだろうかと様子を伺うと、やはり神妙な様子でじっと、地面を睨む姿があった。だが、決して悔し涙は見せていない。
実際、俊宇はここまで歯に衣着せぬ言葉で殿下を叱りつけたことはない。非難はするが、いつもどこかで「仕方がない」と許している部分があったように思われた。それが自分の立ち位置だとは思っているが、俊宇にできずとも誰かがそれを担わなければならなかった、そのことが手落ちになっていたことは否めない。
天佑は、フウと一つ息をつき、呼吸を整えた。
「殿下。奏上したき儀はここまでです。存分に無礼を申し上げた私に、罰をお与えになりますか」
そしてまた、深く地に着くような拝礼をする。その潔さは彼の心の様を現すようで、このような場面にもかかわらず俊宇は、彼を美しいと思った。
「よい。全て私が悪かった。それに、俊宇を責めるでない」
殿下が聞かせたその声には張りがあり、彼が何かを悟り心を改めたことがわかった。
天佑が礼をとる姿勢のまま、ゆっくりとひとつ頷いた。
「御意に」
「よくぞ私を叱った。礼を言う」
「滅相もございません」
殿下が控えめに笑むと、かるく顔を上げた天佑も穏やかに笑った。二人の心は確かにその時、通ったように見えた。息を詰めていた俊宇もそこでやっと深く呼吸をし、肩の力を抜く。
まったく、ひやひやさせるものだ。ここで殿下が怒り出しでもすれば、天佑は何らかの罰を受けることになろう。それを止めるのもまた俊宇の役目だったはずだが、陛下は彼の言い分を理解し受け入れてくれた。心に響くものがあったのだろう。これで俊宇は、事の次第を陛下に報告するだけでよい。もし陛下が天佑にお怒りでも、それをなだめることくらいは俊宇にもできることだろう。
立ち上がれるようにと天佑が差し出した手に、殿下は戸惑いなく自分の手を重ね、支えにする。服についた土を空いた手で掃ってさしあげてから、天佑は殿下の御前から一歩身を引いた。本来、ここにいることさえできない身分だ。立ち位置は俊宇のはるかに後ろであるべきところである。
しかし殿下はその開いた距離を詰めるべく、一歩天佑に近づいた。
「そなたがあの、俊宇の友なのか? 名をなんと申したか」
「汪、天佑にございます。あの、とは?」
「俊宇の朝帰りの相手だ」
ぷっとふき出したのは天佑で、青ざめたのが俊宇である。天佑は、一応堪えようとしたようだが、途中で諦めてクククと笑いを漏らす。
「いや、参りました。本当にそのように思し召しなのですか?」
「そなたは美しいから。でも、半分は冗談だ」
「でしたら結構。彼の名誉に関わりますからね。麗しの友ではございません。知己です」
「仲がよいのだな」
「否定はしません」
あの厳しい説教の直後とは思えないほど、和やかな会話が二人の間で交わされる。
これが必要なのだと、俊宇は悔しいほどの思いで二人を眺めていた。師は、身分の上下を気にせず正しきことを教え導き、弟子は信頼のもとにそれを受け止め叱られることを恐れない。行いや考えの誤りを指摘しても、殿下の人となりを否定はしない、そういう導き方が必要だったのだ。
残念ながら、俊宇の手ではまだ、足りていなかった。
「よいな。我も友がほしい」
すこし拗ねたように言って、殿下がちらとこちらを見た。それを追って天佑の満足げな笑みが俊宇に向けられると、どこかむず痒いような気分になる。
殿下に羨ましがられるほどの仲なのだろうか、自分たちは。思ったがその答えは天佑の笑みが既に語っているようで、俊宇は知らぬ顔をすることに少しばかり苦労した。
「でしたら、もっと頑張って賢くおなりなさい。さすれば、良き人材があなたに集まります。その時に、あなたが人を選ぶのです。心から信頼を交わせる者を。あなたには人を見る目があると、伊宇が申しておりました」
「俊宇が?」
殿下の声が弾み、素知らぬ顔もできなくなった。
「嬉しいですか?」
「俊宇には滅多に褒められないのだ」
「私には、孫を自慢する年寄りのごとく褒めていましたよ?」
「そうなのか?」
「はい。あれも、かなり甘いですがあなたには最適な侍従です。大事になさいませ」
「わかっておる」
ああ、もう聞いていられない。こういうことは、本人のいないところで話してほしいものだ。
「やはり伊宇が言った通り、人を見る目をお持ちだ」
天佑がまた笑みを深め、それが目に眩しい。
「口を挟めぬ会話をせぬように」
ようやく会話に切れ目を見つけ、俊宇は割って入ることに成功した。きまりが悪いやら照れるやら、どうにも居心地がよくない。自分をよく知る者が、自分そっちのけで自分の話をするところなどに居合わせるものではない。
俊宇の心を読んだように、天佑と殿下が顔を見合わせた。
「で、汪天佑、そなたはなぜここにおるのだ?」
「ええ。この友に、ねぎらいの品として名物の点心を届けに来たのですよ。たくさんありますから、差し障りなければ殿下もお召し上がりください。毒見は二人で済ませております」
「そうだったのか。なれば私も共に食す!」
ここで、もう完全に殿下の機嫌は直った。わだかまりが消えた瞬間引きずらないのはこの方の美点である。
「いけません陛下。次は、武芸の稽古です」
「えー、少しくらい良いではないか」
「また賢殿にド叱られますよ? よろしいのですか?」
「それは言うな。賢の怒鳴り声は耳に響くのだ」
また主従のいつもの会話になり、それを今度は天佑が興味深げに眺めていた。そういえば、俊宇と殿下のやり取りを天佑が見るのは、これが初めてだ。
「殿下。もしもお許しいただけるのでしたら、点心は改めて持って参りましょう。伊宇に殿下の予定を確認し、お邪魔にならぬ時間に拝謁致します」
「そうだな。仕方あるまいな」
「よくお聞き届けくださいました」
「別に、いつも言うことを聞かぬわけではないのだぞ」
「ええ。伊宇に甘えておいでなのでしょう。私は厳しいですがね」
「おい」
「さて、では私はこのへんで失礼致します。長らく貴重なお時間を頂戴し、かたじけのうございます」
「また来い。お茶と話の相手をしてくれ」
「謹んで承りましょう」
もうすっかり打ち解けた様子だ。
汪天佑という男、不思議なものである。人たらしというやつがこれなのだろうか、会う者の心をすぐに開かせてしまう。
そしてまた殿下も人の心をよく見るからこそ、自分に対し開いている相手には、なんの警戒心も持たずに飛び込んでいくのだ。ここなら安心だと心に決めれば、非常に素直になられる。皇太子という立場では、なかなかそういった相手を見つけることができないのが現実だ。気の毒なものだが、それでも、自身の人徳で人を引き付けてほしいと思う。本当に、彼に必要な人間を、一人でも多く。
「急に株を上げよって」
去り際の天佑に、すこしの意地悪を言った。自分が多少なり拗ねていることは自覚していたし、それを明かすことになる一言だったが、言わずにはいれなかった俊宇である。
「子には好かれる性分なのだ」
「負けたぞ」
「勝った覚えも競った覚えもない」
言葉とは裏腹に得意げに言って、天佑は「御前失礼」と踵を返した。長く背に垂らした絹の髪が揺れ、上衣の裾が翻る。すっと背の伸びた後ろ姿は、精錬であってかつ優雅だ。
目が離せなかった俊宇だったが、しばらくしてようやく、見上げてくる殿下の視線に気が付いた。つい天佑に見惚れていたのがばれただろうか。
「いい友だな」
「ええ。食えぬ奴ですが」
殿下が可笑しそうに笑った。そして周囲に集まった者を下がらせて、素直に武殿へと足を向ける。
「御怪我の御身です。武術はお控えになりますか」
「これしき、なんともないと言っておる。武術は得意だ。余裕でやれる」
「御意に」
天佑のおかげで、殿下は一つ大きくなられた。悔しくはあるがそのことは、俊宇にとっても誇らしく思えた。
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