潤 閉ざされた楽園

リリーブルー

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第七章 潤の部屋にて

打ち明け話

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 潤の部屋は、入ると右側にベッドがあり、正面に窓と机があって、左手にソファがあった。ベッドの向こう側の壁がクローゼットになっていて、潤は、その中の引き出しからパジャマを二つと下着を出してベッドの上に置いた。
「下着は、一応新品だから。俺が履いたのがよければ、ご希望にお答えします」
と潤が冗談で言った。
「ほんと? じゃあ希望します」
僕も、冗談で返した。
「兄貴みたいなこと言うなよ」
潤は笑った。
「えっそうなの?」
「譲って、俺の下着でマスターベーションするんだぜ」
僕は、兄弟がいないので黙った。潤は、それをあきれて絶句したと受け取ったようだった。
「おかしいよね? 俺の脱いだ下着とか拾って、部屋に持ってったり、風呂でそのままやってるみたい」
ほんとは従弟であって弟ではないので、そんな気持ちになるのだろうか? でも子どもの頃からいっしょに住んでたら、兄弟みたいなものなんじゃないの? いずれにしても、僕は兄弟も従兄弟もいないので、わからない。そんなの、いけないことだろうから、注意した方がいいだろうけど、年長者や力や知恵の強い者がしてくるのに、年下で力や知恵の弱い者の方に注意しても仕方がない。家に帰ったら、親に聞いてみようと思うけど、今は、どうしようもない。道徳や倫理をそっちのけにすれば、あんなかっこいいお兄さんに、そこまで恋焦がれられていて、いいな、などとちょっと、うらやましく思ってしまったほどだ。そんな自分は、大洗家に毒され始めていたのだろうだが。それに事態を打開するためには、現状を把握することも大事だと言い訳めいて、その実、好奇心半分で聞いた。
「どんな風にするの?」
「知らないよ。まさか、瑤も、真似して、やるとか言い出さないだろうね?」
潤に、僕の興味本位がばれたらしい。警戒された。
「そんな、下着なんかで興奮するのかな? 僕は、本人のがいいよ」
譲さんは、イケメンだけど、変態なんだなと思った。
「だよね。俺も。よくわかんないんだよ、譲って」
そういいつつ、潤は、さほど譲を嫌っているようにも見えなかった。僕も、何されるのかわからない点は怖いけど、何しろ潤に似たかっこいいお兄さんなので、いろいろなことをされても、そこまで嫌だとまでは、思っていなかった。どうやら潤が本気で嫌がっているわけでもないらしいことも大きかった。潤は否定するけど、特殊な連帯感みたいなものが潤と譲の間にはあるらしかった。なので、僕も安心して、さっき譲にされたことを、
「さっきも、トイレでさぁ」
と言いかけた。しまいまで聞かずに潤は応えた。
「うん、見たがるんだよね。まあ、俺は、いいとして、よくないけど、俺の友達までっていうのはね……」
潤は、僕が譲の行為に辟易してるんじゃないかと恐れているようだった。僕自身は、実は、そうでもなかったのだけれど。
「潤って、他に友達、家に招いたことってある?」
友達まで、と、うんざりしたように言っていたので僕は聞いた。
「高校になってからは、初めてだよ。でも、譲が、空手部の後輩を連れて来て、ってことはあった。まあ、その後の展開はわかると思うけど」
空手部の後輩。すごい強面のお兄さんたちに、潤があんなことこんなこと、されたんだろうか。
「それが、例の輪姦事件に発展したんだよ」
輪姦事件? 文化祭のミスコンの後、女装姿のまま、っていう話? 高校の文化祭と、大学生と、どういう繋がりが。僕が黙っていたせいか、潤も、その話を、それ以上したくなかったのか、潤は言った。
「まあ、そんな話しばかりで、うんざりだろ? そんなことはいいから着替えよう?」
潤は、いつも、そうなのか、ためらいもなく水色の麻のローブの腰ひもを解いて素っ裸の前をはだけた。
「潤って学校でも、そんなに無造作に着替えてたっけ?」
僕は潤が出してくれた着替えを取るために、潤の側に行って尋ねた。
「教室で着替えてるよ?」
部活に入っている人は部室で着替えていた。
「着替えていて、何か言われない?」
「言われないよ? 触られは、するけど」
潤は、ローブを脱いで、全裸になっていた。僕は、それを見て、つばを飲み込んだ。
「触られるの?」
「うん。脱いだ時に、抱きつかれたり、キスされたりするよ」
潤はベッドの上に置いた下着を取って履きながら答えた。
「誰に?」
「近くにいた人にだよ」
潤はパジャマのズボンを手に取って履いた。生地は、生成りにベージュの縦ストライプのリンネルだった。
「教室で着替えない方がいいんじゃない?」
「ううん。トイレで着替えてたら、個室でやられそうになったから、教室のがましだよ」
僕の脳裏に「あっ、あっ、やめて」と言って、ドアに背を打ちつけて、拒んでいる潤の姿が浮かんだ。キスされて、いかされて、ぐったりして取り残される潤。
「どこかの部室借りたら?」
「それもしたけど、貸してくれた人に誘われて、あそこ触られて、いかされて、その部活の先輩にも後ろを狙われて。ちょうど顧問が来たから助かったけど」
「うわあ、ひどいね……」
僕の脳裏に、うつ伏せで机をつかまされベルトを外されて股間を撫でられている潤の姿があった。
「瑤は、そういうことないの?」
「着替えていると、からかわれたりするけど触られたりはしないかな」
「いいなあ。どうして俺だけ、そんな目に合うのかな? こんな話、人にするのって初めてなんだ」
潤は、長いまつ毛を伏せて、うつむき加減で言った。
「そう? 寝てる人みんなに打ち明け話するんじゃないの? で、その話聞いた相手が興奮してさ」
僕は少し意地悪だったと思う。嫉妬していたのだ。潤が僕に対して心を開いてくれているということが信じられなかったので、そんな風に言ってしまったのだ。
「ひどいな……そんなことないよ」
潤は、悲しそうな顔をした。僕は、あわてた。
「ごめん潤! あの、照れ臭くて、嬉しくて、意地悪みたいな言い方になっちゃったけど、その、信じられなくて。潤が僕に心を許してくれてるのが、あのっ、嬉しかったんだよ。だから、そのっ」
潤は、くすっと笑った。
「わかったよ。わかったから、瑤も着替えろよ」
「だから、その、ごめんなさい」
「うん、いいよ」
潤が、僕の額に優しいキスをした。
「潤、潤は全力なんだね」
僕は言って、バスローブの腰ひもを解いた。
「何が?」
「潤は人に対して心を閉ざしてるのかと思ったけど、時々、全開なんだね」
「ああ、うん、微調節ができない、かな?」
「全開のところを傷つけられちゃうわけだ」
「うん。まあ、そうかも」
「だから、普段つっけんどんなのも当然だと思う」
「こういう時にセックスすれば、気持ちいいのかな」
潤は、僕の裸を見ながら言った。僕は、バスローブの前を閉じた。
「いつも俺、何も感じないためにやってる。快楽で、苦しさとか、孤独感とか、疎外感とか、忘れるために。だけど、したあと、もっと虚しくなるんだ。一時的には、快楽で癒されるんだけど。だけど、瑤が、セックスって、基本的に、愛する者同士ですることだって言ってただろ?」
僕は、こっぱずかしいと思った。
「それは僕が何も知らないチェリーボーイだったからかもしれないから、あの、気にしないで?」
「自分でチェリーって」
潤が笑った。
「瑤、もう童貞じゃないじゃないか」
「あ、男同士でも、そうなるのかな?」
「男同士のが強烈かも。締め付けが強いからさ」
「どうしよう、女性でいけなくなったら」
「脳の快楽の要求って、どんどんエスカレートするからね」
「依存性があるってことか」
「麻薬やアルコールと同じだよ」
「怖いね」
「俺も、それに気づいた時は遅かったというか、もう、やめられなくなってると思うんだ」
僕を振り返ってですら、そうだった。潤と出会って、性の快楽に、溺れるようになっている気がした。特に、今日の僕ときたら……。振り返りたくないほどだった。それなのに、まだ、もっと、もっと、と思う。潤が、僕の裸を見て、欲情して、ベッドに押し倒してくれたら、と思っている。この、潤がいつも眠っている、いや、眠るだけじゃない、いろんなことをしたり、されたり、一人だったり、二人だったり、数人だったり、かもしれない、いやらしいベッドの上で、僕も、潤に、脚を開かされて、何もかも忘れて、快楽に溺れて死にたい。潤と、めちゃくちゃに乱れあって、潤の内臓の、臓腑まで、愛しあいたい。潤に、何度も、あそこに出されて、潤の家族と、爛れた関係になって……。
「潤、僕、潤と……したい」
僕は、バスローブの前を開けた。潤は、僕の元気になったあそこを見て
「癖になるぞ? 俺、瑤を巻き込んでよかったのか、今でも迷ってるんだ」
潤は、僕のバスローブの襟をつかんで、閉じさせた。
「まあ、いいや。しばらく着替えなくても。落ち着かないみたいだから」
潤が、バスローブの腰ひもを手に取った。
「縛るの?」
「え?」
「その腰ひもで、僕のこと縛る?」
潤が軽く笑った。
「何、瑤、期待してるの? そういうの……」
「潤がすることっていったら、エッチなことだと思ったから」
「瑤、そういうの知ってるんだ?」
「知らないけど、縛ったりするのって、潤、好きそうだと思って」
「どこで、そんなこと覚えたの?」
「覚えてない、知らないけど、そういうの……」
「へえ、瑤でも、エッチなメディアに触れてるんだ。興味あるんだ?」
「人に聞いただけだよ、クラスの人に、猥談で」
「瑤に猥談ふって、興奮させて、犯そうとしてるんじゃないか?」
潤は意地悪い感じで言った。
「そんなんじゃないよ、ただみんなが話してただけ。僕は、聞いてただけで」
「他に、どんなこと聞いた? どんなこと知ってる? やってみたいことある?」
潤が聞いてきた。
「してみたいことはないけど、いろいろ聞いたよ……」
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