潤 閉ざされた楽園

第三章

マッチ売りの潤 6

「身寄りがないのか？  知り合いの家もおんだされたんだな？」

潤は、こっくり頷いた。

男は、下着姿の潤を担ぎ上げて大通りに向かった。

潤は上着とズボンをつかんで、男の肩から見る街の景色をぼんやり眺めた。

びっくりしている道行く見知らぬ大人や子どもの目。

無関心に足早に過ぎていく人々。

さらわれる潤を誰も助けてくれない。

ただ見ているだけ。

潤は声をたてなかった。

声をたてても誰も助けてくれないと思ったから。

自分を担いでいる男に怒られると思ったから。

潤は馬車の中でクッキーを与えられた。

かたいけれど乾燥したフルーツが入った、甘いお菓子だった。

潤は、ものも言わずに貪った。

男は笑った。

「そんなに腹が減っていたのか。言うことを聞いておとなしくしていれば、こんな菓子くらい、いくらでも食べられるぞ」

割腹のいい男は笑った。

それが半年前のこと。

男は馬車の中で、潤の下半身を撫でた。

潤は身じろぎするのがやっとだった。

動いている馬車から飛び降りることもできないし、ただ食べかけたクッキーを口に咥えてかたまっていた。

男の手が潤の下着の上から撫でていた。

手が、下着のパンツとシャツの中に交互に入ってきた時、潤は、衝撃でボロボロとクッキーをこぼした。