263 / 366
第十六章
問わず語り 9
しおりを挟む
僕は、受け入れて言った。
「わかったよ。それで潤の気が済んだの?」
「気が済んだよ。それから、みんな、俺が学校でしたくなったら、手伝ってくれるようになった」
「そんなの……それはちょっと、前向き過ぎる解釈じゃない?」
手伝ってくれるだなんてお人好し過ぎる解釈だと思った。
みんな、きれいな潤が、エロエロモードになっちゃってているのを、やれるチャンスと思って、寄ってきているだけなんじゃないか、と思った。
「それに、学校ではしてないって言ってたのに」
僕は、本当のことを言ってくれなかったことについて、恨みがましく言った。
「今は、してないよ」
潤は、嘘は言ってない、という顔つきで言い返してきた。
「あの時は本当におかしくなってて。狂ったみたいにしたくて、我慢できなかったから」
それでも、自分のした行為は後ろめたいのか、潤は、僕の顔色を上目遣いでうかがった。
「僕以外の同級生ともしてたってことだね」
僕は、自分を大事にしない潤の行動を非難する気持ちと、そこばくの嫉妬から潤を糾弾した。
「瑤と出会う前のことだから、しょうがないだろ?」
潤は、僕から目をそらして言った。
「それに、してたのは、身体だけ。瑤みたいに、そんなに俺に踏み込んでくる人っていなかったよ」
潤は、僕の怒りを恐れるように、ちらちらと僕の顔色を伺いながら言った。
「ほんと?」
僕は、希望の綱にすがる気持ちで聞いた。
「ほんとだから、そんなにすねないで?」
潤は、僕の顔を見た。
「すねてないよ、心配してるんだよ」
僕は泣きそうになった。
「ごめんね。だって、どうしようもなかったんだもの」
潤は、うつむいた。
「僕に謝らないで、自分に謝ってよ」
僕の声は、少し怒りに震えた。
「潤、ごめん。潤は悪い子でした。潤を虐めてごめんなさい」
潤の謝罪は、僕の意図からずれて、おじ様とSMをしてる時に、潤が口走る言葉と化していた。
まるで小さな子供みたいになって。
僕は、立ち上がって、潤の座っている椅子の脇に寄った。
「悪い子じゃないよ、潤」
僕は、椅子に座っている潤の肩と頭を横から抱いた。
「僕こそごめんね。潤のことなんにもわかってない、なんにもしてあげられない、なんにもできそうにないよ」
僕は自分の力のなさを嘆いた。
「潤を嫌いにならないで」
潤は、僕に応答せず、また退行していた。
「嫌いにならないよ」
僕は潤の頭を、僕の胸にぎゅっと押し付けた。
僕の腕がゆるむと潤は、
「見捨てないで?」
と僕の胸から顔を離して、僕の顔色を伺った。
「見捨ててないよ」
と僕が言って、もう一度潤を抱き、潤の肩や背中を撫でると、潤は、少しほっとしたようだった。
潤の肩から力が抜けた。
「でも潤って、近寄られるの、嫌がる時あるでしょ?」
「うん、一人でいたい時もあるから」
「一人の時間って大事だもんね。自分に向き合う時間だから。自分の気持ちを聞ける時間っていうか。自分で自分を大事にする時間だもんね」
僕は言った。
「自分を大事にするということが、よくわからないけど」
「えっと、自分の気持ちの通りにしてあげるってことじゃないかな?」
「自分の気持ちが、よくわからない。あるんだろうけど、他のいろんな声でかき消されて、聞こえなくなる」
「他の声に邪魔されてるんだね」
「そうかも」
「他の声の力って、大きいんだね」
僕は、無力感に泣きたくなった。
「泣かないでよ。他の声の邪魔をとってくださいって、言ってみるから」
潤は言った。
僕は頷いた。
潤は、さらに述べた。
「それに、もう、おかしかった時のようなことには、俺もなりたくないから。あの時は、どうしても、そうしたかったんだ。自分が、やられるだけの弱い人間じゃないって、証明したかったんだ。いやいややられたんじゃなくて、自分で積極的にやってやったんだって」
「わかったよ」
僕は、泣きたい気持ちを、ぐっとこらえて、唇を噛み締めた。
「わかったよ。それで潤の気が済んだの?」
「気が済んだよ。それから、みんな、俺が学校でしたくなったら、手伝ってくれるようになった」
「そんなの……それはちょっと、前向き過ぎる解釈じゃない?」
手伝ってくれるだなんてお人好し過ぎる解釈だと思った。
みんな、きれいな潤が、エロエロモードになっちゃってているのを、やれるチャンスと思って、寄ってきているだけなんじゃないか、と思った。
「それに、学校ではしてないって言ってたのに」
僕は、本当のことを言ってくれなかったことについて、恨みがましく言った。
「今は、してないよ」
潤は、嘘は言ってない、という顔つきで言い返してきた。
「あの時は本当におかしくなってて。狂ったみたいにしたくて、我慢できなかったから」
それでも、自分のした行為は後ろめたいのか、潤は、僕の顔色を上目遣いでうかがった。
「僕以外の同級生ともしてたってことだね」
僕は、自分を大事にしない潤の行動を非難する気持ちと、そこばくの嫉妬から潤を糾弾した。
「瑤と出会う前のことだから、しょうがないだろ?」
潤は、僕から目をそらして言った。
「それに、してたのは、身体だけ。瑤みたいに、そんなに俺に踏み込んでくる人っていなかったよ」
潤は、僕の怒りを恐れるように、ちらちらと僕の顔色を伺いながら言った。
「ほんと?」
僕は、希望の綱にすがる気持ちで聞いた。
「ほんとだから、そんなにすねないで?」
潤は、僕の顔を見た。
「すねてないよ、心配してるんだよ」
僕は泣きそうになった。
「ごめんね。だって、どうしようもなかったんだもの」
潤は、うつむいた。
「僕に謝らないで、自分に謝ってよ」
僕の声は、少し怒りに震えた。
「潤、ごめん。潤は悪い子でした。潤を虐めてごめんなさい」
潤の謝罪は、僕の意図からずれて、おじ様とSMをしてる時に、潤が口走る言葉と化していた。
まるで小さな子供みたいになって。
僕は、立ち上がって、潤の座っている椅子の脇に寄った。
「悪い子じゃないよ、潤」
僕は、椅子に座っている潤の肩と頭を横から抱いた。
「僕こそごめんね。潤のことなんにもわかってない、なんにもしてあげられない、なんにもできそうにないよ」
僕は自分の力のなさを嘆いた。
「潤を嫌いにならないで」
潤は、僕に応答せず、また退行していた。
「嫌いにならないよ」
僕は潤の頭を、僕の胸にぎゅっと押し付けた。
僕の腕がゆるむと潤は、
「見捨てないで?」
と僕の胸から顔を離して、僕の顔色を伺った。
「見捨ててないよ」
と僕が言って、もう一度潤を抱き、潤の肩や背中を撫でると、潤は、少しほっとしたようだった。
潤の肩から力が抜けた。
「でも潤って、近寄られるの、嫌がる時あるでしょ?」
「うん、一人でいたい時もあるから」
「一人の時間って大事だもんね。自分に向き合う時間だから。自分の気持ちを聞ける時間っていうか。自分で自分を大事にする時間だもんね」
僕は言った。
「自分を大事にするということが、よくわからないけど」
「えっと、自分の気持ちの通りにしてあげるってことじゃないかな?」
「自分の気持ちが、よくわからない。あるんだろうけど、他のいろんな声でかき消されて、聞こえなくなる」
「他の声に邪魔されてるんだね」
「そうかも」
「他の声の力って、大きいんだね」
僕は、無力感に泣きたくなった。
「泣かないでよ。他の声の邪魔をとってくださいって、言ってみるから」
潤は言った。
僕は頷いた。
潤は、さらに述べた。
「それに、もう、おかしかった時のようなことには、俺もなりたくないから。あの時は、どうしても、そうしたかったんだ。自分が、やられるだけの弱い人間じゃないって、証明したかったんだ。いやいややられたんじゃなくて、自分で積極的にやってやったんだって」
「わかったよ」
僕は、泣きたい気持ちを、ぐっとこらえて、唇を噛み締めた。
0
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
俺と親父とお仕置きと
ぶんぶんごま
BL
親父×息子のアホエロコメディ
天然な父親と苦労性の息子(特殊な趣味あり)
悪いことをすると高校生になってまで親父に尻を叩かれお仕置きされる
そして尻を叩かれお仕置きされてる俺は情けないことにそれで感じてしまうのだ…
親父に尻を叩かれて俺がドMだって知るなんて…そんなの知りたくなかった…!!
親父のバカーーーー!!!!
他サイトにも掲載しています
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる