潤 閉ざされた楽園

第十六章

昴 5

「今はしてない」

潤は、トモを見つめた。

(この人、どうするのかな？)

「俺も、何がなんでもしたいわけじゃないからさ」

トモが、潤の髪や顔をなでた。

「不自由してないんだろ？  はいはい」

「そういうことだよ」

「でも、男は、また違うよ？  せっかくだから、試してみなよ」

「だからさ、やったことないから、わからないんだよ」

「同じだよ。別にやり方なんてないよ」

昴は、投げやりな調子で言った。

「昴ってさ、この子と寝てるの？」

「そうだって言ったらひく？」

昴は、トモの出方をうかがっているようだった。

「ああ、やっぱりそうなんだ。へえ」

トモは、了解したというように、一人首肯した。

「あ、ひかれた」

昴が、トモの様子を見て言った。

「男と寝てるって聞いた時からひいてる」

トモが、昴を見上げて、ぞんざいな口調で言った。

唇に軽蔑が浮かんでいた。

「あっ、そう。なら、なんでついてきた？」

昴が、少しいらだったように尋ねた。

「んー、誘われたから。面白そうだから。終電なくなったから。最後の理由が一番大きい」

トモは、矢継ぎ早に答えた。

「やっちゃっていいよ」

昴の意図は見えなかった。

「いいよって、昴の所有物じゃないだろ？」

トモは、眉をひそめ、見上げた。