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第十三章 潤の記憶
潤とコウ 2
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「嬉しいよ? 嬉しいけど。ずるいよ、俺の質問に答えたくないからって」
潤はコウに抗議した。
「そうかな、ずるい?」
そう言って、コウは、潤の首すじにキスを落とした。潤は、頭を仰け反らした。
「逃げたい?」
「ううん」
潤は、きつくコウに腕をからめた。
「コウさんからは、逃げたくない。好きだから。コウさんは、怖くないから」
「可愛い、潤、好きだよ」
「俺も」
そういう意味じゃない、とわかっていても嬉しかった。この人は、こういうのが仕事だから、平気で好きだとか、甘い言葉をささやくんだ。でも、よかった。本当のような気がしたから。ほんのひとときでも、心地よかった。甘えられるのが嬉しかった。
「コウさんは、俺とエッチなこと、したくならないの?」
「さっきから、きわどいことばかり言うなあ」
コウさんは笑った。
「そんな簡単に理性を失ってたら、仕事できないから。大丈夫だよ」
「でも、本当は、したい?」
「あいにく、恋人には不自由してないから」
コウさんが、憎らしいような微笑みを浮かべた。
「俺だって、不自由してるわけじゃないよ」
潤は、むくれた。
「だよね? 潤は、モテモテだろうね。こんな、きれいな子なんだもん」
コウは、潤の髪を撫でて微笑んだ。
コウは潤の頬にキスして言った。
「ああ、弟にしたい」
「もう、俺なんて弟みたいなものでしょ? コウさんは、俺の兄さんとつきあってるんだから」
「まあね?」
「コウさん、兄弟いる?」
「弟は、いないよ」
「ふうん。コウさんって自分のこと話さないよね」
「うん。たいして話すようなことないからね」
「知りたい」
「そのうちわかるよ」
いつもはぐらかされた。
潤がいくらねだっても、コウは、唇にキスを落とすことすら、なかなかしては、くれなかった。
「無理言わないでよ。君、高校生なんだから。そんなに自分から求めたりしないの」
「無理なのは、俺の方だよ、こんなに焦らされて」
コウが焦れる潤の手をとって、手の甲に唇を当てた。また、そこからか。
「焦らしキスのサーキット、何ラウンドすれば、許してもらえるの?」
コウが潤の手の指の付け根に唇を触れさせていた。
「こうしているの、気持ちよくない?」
コウの黒い瞳が潤を見つめた。
「コウさんは、気持ちいいの?」
「うん、たまらなく甘美だと思う」
「思うとかじゃなくて、そんな唇の刺激だけでいいの?」
「気持ちいいよ潤の手。好きだよ。潤の手に、唇が触れるたび、ぞくぞくしてる」
「本当に?」
「潤は、すぐ、過激な行為に走るんだから」
「コウさんは、それで満足なの?」
「満足だよ」
「俺は、もっとしたい」
潤が、そう訴えても、手や首筋、耳や頬、髪や額、瞼や鼻、などで、ごまかされた。
「いやぁ、ちゃんと、キスして」
潤は、いいかげん、我慢できなくなり、焦れて、ソファで身悶えした。
「潤ったら、お菓子を欲しがる子どもみたいだな」
コウが笑った。
「触ってよ、早く、こんなの死んじゃうよ」
「大げさだな。触ってほしくて死ぬだなんて」
「俺は、淫乱だから」
「自分で、そんなこと言っちゃうの?」
「だって、そうなんだもん」
「誰が、そんなこと言ったの?」
「いろんな人だよ」
「いろんな人? そんなにたくさんの人に、されたの?」
「うん、だから淫乱でしょ? そんなに欲しがる子どもはいないって、よく言われた」
「子ども?」
「うん」
「子どもの時からってこと?」
「そうだよ。みんな、普通するって。言わないけど、家では、みんなしてるって」
「何を?」
「こういうことだよ」
潤は、コウに甘えて抱きついた。
「ねえ、コウさん、好き、俺のこと抱いて」
「ちょっと待った。潤は、子どもの時から、大人にエッチなことされてたってこと?」
コウが聞いた。
「普通だよ。普通のことしかされてないよ。キスとかハグとか、そういうの」
潤は、ごまかした。
妖しい洋講堂の人たちなら、自分と同じ育ちかと思ったけれど、やっぱり自分は特別なのかもしれなかった。
「そんな風に、ごまかさなくてもいいよ」
コウは、戸惑ったように言った。
潤はコウに抗議した。
「そうかな、ずるい?」
そう言って、コウは、潤の首すじにキスを落とした。潤は、頭を仰け反らした。
「逃げたい?」
「ううん」
潤は、きつくコウに腕をからめた。
「コウさんからは、逃げたくない。好きだから。コウさんは、怖くないから」
「可愛い、潤、好きだよ」
「俺も」
そういう意味じゃない、とわかっていても嬉しかった。この人は、こういうのが仕事だから、平気で好きだとか、甘い言葉をささやくんだ。でも、よかった。本当のような気がしたから。ほんのひとときでも、心地よかった。甘えられるのが嬉しかった。
「コウさんは、俺とエッチなこと、したくならないの?」
「さっきから、きわどいことばかり言うなあ」
コウさんは笑った。
「そんな簡単に理性を失ってたら、仕事できないから。大丈夫だよ」
「でも、本当は、したい?」
「あいにく、恋人には不自由してないから」
コウさんが、憎らしいような微笑みを浮かべた。
「俺だって、不自由してるわけじゃないよ」
潤は、むくれた。
「だよね? 潤は、モテモテだろうね。こんな、きれいな子なんだもん」
コウは、潤の髪を撫でて微笑んだ。
コウは潤の頬にキスして言った。
「ああ、弟にしたい」
「もう、俺なんて弟みたいなものでしょ? コウさんは、俺の兄さんとつきあってるんだから」
「まあね?」
「コウさん、兄弟いる?」
「弟は、いないよ」
「ふうん。コウさんって自分のこと話さないよね」
「うん。たいして話すようなことないからね」
「知りたい」
「そのうちわかるよ」
いつもはぐらかされた。
潤がいくらねだっても、コウは、唇にキスを落とすことすら、なかなかしては、くれなかった。
「無理言わないでよ。君、高校生なんだから。そんなに自分から求めたりしないの」
「無理なのは、俺の方だよ、こんなに焦らされて」
コウが焦れる潤の手をとって、手の甲に唇を当てた。また、そこからか。
「焦らしキスのサーキット、何ラウンドすれば、許してもらえるの?」
コウが潤の手の指の付け根に唇を触れさせていた。
「こうしているの、気持ちよくない?」
コウの黒い瞳が潤を見つめた。
「コウさんは、気持ちいいの?」
「うん、たまらなく甘美だと思う」
「思うとかじゃなくて、そんな唇の刺激だけでいいの?」
「気持ちいいよ潤の手。好きだよ。潤の手に、唇が触れるたび、ぞくぞくしてる」
「本当に?」
「潤は、すぐ、過激な行為に走るんだから」
「コウさんは、それで満足なの?」
「満足だよ」
「俺は、もっとしたい」
潤が、そう訴えても、手や首筋、耳や頬、髪や額、瞼や鼻、などで、ごまかされた。
「いやぁ、ちゃんと、キスして」
潤は、いいかげん、我慢できなくなり、焦れて、ソファで身悶えした。
「潤ったら、お菓子を欲しがる子どもみたいだな」
コウが笑った。
「触ってよ、早く、こんなの死んじゃうよ」
「大げさだな。触ってほしくて死ぬだなんて」
「俺は、淫乱だから」
「自分で、そんなこと言っちゃうの?」
「だって、そうなんだもん」
「誰が、そんなこと言ったの?」
「いろんな人だよ」
「いろんな人? そんなにたくさんの人に、されたの?」
「うん、だから淫乱でしょ? そんなに欲しがる子どもはいないって、よく言われた」
「子ども?」
「うん」
「子どもの時からってこと?」
「そうだよ。みんな、普通するって。言わないけど、家では、みんなしてるって」
「何を?」
「こういうことだよ」
潤は、コウに甘えて抱きついた。
「ねえ、コウさん、好き、俺のこと抱いて」
「ちょっと待った。潤は、子どもの時から、大人にエッチなことされてたってこと?」
コウが聞いた。
「普通だよ。普通のことしかされてないよ。キスとかハグとか、そういうの」
潤は、ごまかした。
妖しい洋講堂の人たちなら、自分と同じ育ちかと思ったけれど、やっぱり自分は特別なのかもしれなかった。
「そんな風に、ごまかさなくてもいいよ」
コウは、戸惑ったように言った。
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