潤 閉ざされた楽園

リリーブルー

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第十五章 晩餐にて

contento prigionier

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「思考を束縛されているんですもんね」

と僕が言った。

おじ様が咳払いした。

「『苦しんでいるけれども、それを楽しんでいる』って、肉体的な快楽にふけっているのかと思った」

潤が、甘えたそぶりで言った。

「それだと、潤みたいだね」

おじ様は、笑った。

「精神的にだって、そうなんじゃないの?  潤」

僕が聞いた。

「うん、そうだね、鞭打たれたり、責められたりって、精神的な煩悶もあるからね」

潤が答えた。

「そういうSMでなくて、困難を乗り越えるために苦労する、っていうこともあるよね。障害を乗り越えるための骨折りなら、楽しいと感じることもできるだろうし」

僕が言うと、

「障害を乗り越えて結ばれる恋か、なかなかロマンチックだね」

おじ様が、からかうように言った。

「son contento e prigionier,
とにかく、そういう囚われの状態に、満足している、という歌だ」

「監禁されているんですね」

僕があえて挑戦的に言うと、

「いや、思いが囚われて、相手に縛られているということだよ」

とおじ様は、訂正した。

潤みたいな場合でいえば、精神的に囚われているのって、監禁されているようなものだよなと僕は感じた。

歌手は、contentoと声を震わせ、満足していると、曲中、5回も繰り返した。

またpeno,godo、苦しむ、楽しむと交互に、煩悶するように言葉を並置して歌いながら、囚人であることに満足する、というのだから、まるで、潤のようだった。

こんな曲を聞かされる潤が、僕からしたら、痛々しく思えた。

おじ様は、その痛々しさもまた、楽しんでいるのだろうけれど。

そうやって、なぶって、楽しんでいるのだろうけれど。
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