潤 閉ざされた楽園

リリーブルー

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第十章 Leck mich im Arsch

庭に出る瑶と潤

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「庭に行こう?」
潤が瑶を誘ってきた。
「裸で?」
瑶は躊躇した。
「洗面所で脱いだんだっけ?」
と潤が洗面所の方へ服を探しに行きかかると、大洗氏がリビングの開けられた掃き出し窓の外から、瑶たちに呼びかけてきた。
「子どもたち、おいで」
潤は、枷も何もつけない素っ裸で、裸足のままリビングをつっきって、リビングの先のウッドデッキのテラスに降りていった。
 リビングの白いレースのカーテンの内側に隠れて、瑶はためらっていた。カーテンの端から覗いた午前の庭は、日の光がきらきらと照り輝いていた。
 リビングを囲うように仕立てられた白いアイアンの垣に、蔓薔薇が絡みつかせてあった。しな垂れて咲く花々。濃いピンク色の、中ぶりのバラが咲き乱れ、甘い香りを放っていた。小鳥の鳴き声が、高い木の梢で聞こえた。空には揚雲雀がピーチクとせわしなく、天の高みに上ろうとしていた。
 一陣の風がリビングを吹き抜けた。レースのカーテンが、ふわあっと持ち上がって、瑶の身体をくすぐった。
 天使のように、潤が、
「おいでよ」
と瑶を楽園に誘った。瑶は、お尻に入った液体のことを言い出せずにいた。
「外から見えるんじゃないの?」
瑶は尋ねた。
「見えないよ。塀が高いし、生垣もあるから」
潤は瑶を安心させるように言った。
「隣の人とか」
「隣って、森しかないよ?」
「そうなんだ? でも道から」
「道なんて人通らないし。時々車が通るだけ」
潤は答えた。
「本当?」
「本当だから、おいでったら」
潤が瑶に近寄った。潤は瑶を見て、
「そのセーラ服、似合うね」
と微笑んだ。
「でも、脱がせちゃう」
潤は、瑶の衣服のボタンを外して裾をまくりあげた。
「万歳して」
微笑む潤に、瑶は、降参したように、両手を上に上げた。潤は、裏返しになったセーラー服を表に返して、軽くたたんで床に置いた。レースのカーテンが、風で瑶にまとわりついた。
「ドレスみたいだね」
潤が、瑶にカーテンの生地をあてて微笑んだ。潤が瑶の手を引いた。瑶は、ウッドデッキに足を踏み出した。
 日の光が眩しかった。液体の入ったお尻が疼いた。こんなところで、漏らしたらだめだ。
 テラスには丸い白いアイアンのテーブルと二脚の椅子があった。テーブルには、赤いチェックのテーブル掛けがかかっていて、白いボウルに、色とりどり、粒の大小、形の、さまざまな、葡萄が盛ってあった。
 潤は、透き通るような黄緑色の大粒の一房を選んで持ち上げると、顔を仰向けて、その先の一粒を舌で舐めてから、歯で齧り取った。瑶は小さい粒の紫の葡萄を選んで、手でつまんで口に含んだ。潤が皮を捨てた器に、瑶も皮を捨てた。潤と瑶は、互いに両方の葡萄を食べさせあった。
「あの、潤」
瑶は、甘美な気分に浸っているらしき潤に申し訳ないと思いながら、おずおずと言いかけた。
「何?」
潤が小首をかしげた。
「僕、お尻に、ぬるま湯が入ってるの」
瑶は、ついに打ち明けた。
「え? そうだったの? いつから?」
潤は、びっくりしたようだった。
「潤が、トイレに入ってきた直前に入れられたの」
瑶は、もじもじして答えた。
「なんだ、ひょっとして、我慢してたの?」
「うん」
瑶は恥ずかしさに、うつむいた。
「早く言ってくれたらよかったのに」
「ごめん」
「譲と二人だと、大変だろうと思って、救出しに入ったんだよ?」
と潤は言った。
「そうだったんだ?」
「譲も、出させれば、ちょっとは落ち着くからね」
「そっか……」
瑶は潤に心で感謝した。しかし、今はお尻が大変だ。
「あの、お尻」
瑶はもう一度言った。
「あ、そうだった」
潤は、ウッドデッキの階段から地面に降りた。瑶は潤に手を引かれて後に続いた。
「どこ行くの?」
瑶は、不安になった。
「ここで出しちゃいなよ」
潤が言った。
「ここって?」
「庭で」
「えっ?」
 瑶は、さっきのトイレでの感覚を思い出した。あの時は羞恥のあまり何も考えられなかったけれど、あとからじわじわと恥ずかしさがこみあげてきた。汚れた液体をお尻の穴から吐き出した自分の姿は、どんなにぶざまだったことだろう。お尻を汚れた液体で濡らし、びちゃびちゃにして。そんな姿を、人に見られてしまった。脚を持ち上げられて、肛門から液を噴出する姿を、思いっきり見られた……。幼児の排便のような恥ずかしい姿。ぴちゃっと、はね返りが尻にあたる感覚。じょぼじょぼという情けない音。濡れた尻から、ぽたぽたと水の滴り落ちる感覚。思い出すだけで、顔が熱くなった。
「どうしたの?」
潤が尋ねてきた。
「恥ずかしいよ」
瑶は答えた。
「大丈夫だよ。僕がついているから」
潤にも見られるのかと思うと瑶は余計恥ずかしかった。しかしトイレに戻ったら、また譲につかまるかもしれない。
「いやっ」
「どうして? 平気だよ」
潤は、なんでもないことのように言った。
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