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第十一章 再び生徒会室

イケメン教師、波に飲み込まれる

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「僕なら、さっきから、ここにいます」
生徒会室の隅の方から宮本の声が聞こえた。

「宮本、大丈夫か……?」
小坂は声をかけた。

「あいつら……あいつら……殺してやる……」
そこには、鎖を片手に、悪鬼と化した宮本がいた。

「ちょ、ちょ、ちょっと……宮本くん、どうしたのかな」
そのすさまじい怒りの形相は風紀委員長がたじろぐほどだった。

「僕のかわいい天使の宮本くんが……どうしてしまったんだ」
生徒会長も、ぽかんとしていた。

「ラグビー部をつぶしてやる……」
宮本は言った。

「宮本くん、何があったの……? まさか……」
生徒会長が聞いた。

「その、まさかですよ……」
宮本は怒りに震えていた。

「実は、僕も……前の前の部長に、誘われて……いや、なんでもない」
と生徒会長は言いかけて打ち消した。

「え、誘われて、どうしたんだ?」
風紀委員長が問いただした。

 小坂の心の奥から、むらむらと怒りの炎が湧き起こってきた。
「僕もそうだった。僕の高校時代、入学式の日に、ラグビー部の連中に目をつけられた。それから毎日、入れ替わり立ち替わり、三年が僕の教室にやってきて、しつこく勧誘された。待ちぶせされて帰ろうとしても行く手をふさがれた」
小坂の胸に堰を切ったように感情があふれ出し、圧倒的な巨大な津波のように小坂を押し流しそうになった。轟々と渦巻く濁流。何もかも理性も倫理も小坂の全てを全ての人間関係を積み重ねられた時間と空間を全世界を押し流し破壊する巨大な波。

「そうです、僕もです! 何度も誘われました。僕も……おかしい話だとは思ったんです。だから断っていたんですが、無理やり部室に連れていかれ……」
生徒会長も、堰が切れたようにいっきにそこまで話した。

「僕は違う……。自分から行ったんだ……。僕は……自分から……」
小坂は絶望した。今にいたる全ての災いは全て自分が選択した結果の積み重ねであるという事実が理性的な小坂を押しつぶした。
「あぁ……僕を罰してくれ、僕をもっと……!」
小坂は、宮本が手に持っていた鎖を奪いとり、自分の身体に巻きつけた。
「首輪を……首輪をつけてくれ」
小坂は生徒会長の腕をつかんだ。
「僕は、顧問の……先生に憧れていた……。それで……ラグビー部の部長の誘いに……のってしまった」
言葉にならない、後悔と怒りと悲しみと自責の念。

「顧問の先生……。神崎先生……ですね」
鎖の端を握った宮本が聞いた。

「そう、神崎……先生……」
小坂はぼんやりと答えた。早く神崎先生にお仕置きしてほしい。僕は、またラグビー部の連中とセックスしてしまった。先生が助けてくれて、もう二度と君には触れさせないようにすると言ってくれたのに。
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