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第二十四章 校長の家で

イケメン教師、予想外の事態に動揺する

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 呼び鈴を押すと玄関ドアが開いた。
 妖艶な女性が姿をあらわした。
「すみません、間違えました」
焦った小坂は、慌てて頭を下げ、後ずさった。
 表札には神崎とあったと思うが、見間違えたのかもしれない。間違えた恥ずかしさに頬が熱くなった。
 いやらしいことを考えて期待して飢えた表情を晒していたかもしれない。そんな無防備な表情を人に見られてしまった恥ずかしさ。
 ドアを閉めて、そそくさと帰ろうとした。
 すると閉めかかったドアが再び開いて先ほどの女性が、
「小坂先生ですわよね?」
と呼びかけてきた。
「えっ」
小坂は驚いて、己の名を呼ぶ者の顔を確かめようと自らの顔を上げた。
 女の顔に見覚えがあった。神崎の妻だ。高校生の時に見たことがあった。印象は十年前と変わっていなかった。年を重ねているはずだが、年月のせいで容貌が衰えたというよりは、むしろ色気の凄みが増しているというように感じた。年がいくつになるのだろうか。校長とさして変わらないはずなのに。美魔女だ。化粧のせいだろうか。真っ赤な口紅。取って食われそうだ。
 すごい色気だな。喰われたい。
 反射的に思い、ずん、と下半身が熱くなった。
 小坂は慌てて自分の思いを打ち消した。
 バカな。校長の奥さん相手に、何を考えているんだ。
 しかし目の前の女の薄手のドレスの胸は、せり出してむき出しだ。
 むしゃぶりつきたい。
 小坂は、ごくりとつばを飲みこんだ。
 禁欲がすぎた。いつもはなんとも思わない、女性に性欲を感じるなんて。いつもはなんとも? そうだったか? いや僕はゲイじゃないし。反応してしまうのは仕方ないじゃないか。
 それに特に、こういう性欲を持て余したような年増の女に襲われたい願望があるのかもしれない。いやいや、そんな悪趣味。退廃が過ぎる。悪照の母で酷い目にあったばかりなのに。懲りてなさすぎじゃないか。
 校長が「オナニー禁止だぞ」と何度も毎日言ったせいだ。その言いつけを忠実に守っていた。今日のために我慢したのだ。「久しぶりに、じっくり可愛がってやるから」と言ったから。楽しみにしていたのだ。期待はマックスだった。
 だから、こんなお化けみたいに塗りたくった年増の女にも反応してしまってバカみたいだ。そう冷静になろうとするのだが、うまくいかない。
 女は言う。
「宅は、急用ができて出かけたんですの。すぐ戻りますから、どうぞ家に上がって、待っていてくださいな」
丁寧にお願いされたので、小坂は、逃げ帰ることもできなくなり、家に上がって待つことになってしまった。魅入られたように、抵抗できなくなっていた。女郎蜘蛛の巣に絡めとられたように。拒否できなかった。
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