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第二十三章

ことの顛末 2

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 学校で村田に、周りに人気のない頃合いを見計らって話しかけた。
「ご家族は、元気?」
なんと聞こうか迷ったが、人に聞かれても大丈夫なように、あたりさわりのない言葉を選んだ。
「ああ、それな。オデちゃんの子でなくて、がっかりだよ」
村田は、心底がっかりだというように大げさなゼスチャーで示した。
「そうか」
人に聞かれはしまいか気になって、小坂は短く答えた。
「オデちゃんも、がっかりした?」
村田が聞いた。
「うん、まあな」
麓戸からDNA鑑定を渡された時には、驚きがまさっていた。それまでは、今後のことをあれこれ考えて不安になっていたから、正直ほっとした気持ちも大きかった。
 実感がわかなかったし、嘘かもしれないという疑いの気持ちもあったけれど、もし本当に子どもができるのかと思えば、嬉しくもあり、楽しみでもあったので、がっかりした気持ちもあった。
 しかし、麓戸の前で、がっかりするのは気が引けた。麓戸のことは恋人のように思っているし、相手が麓戸の元妻なので、いいような悪いような決まりの悪いような、照れ臭さ、恥ずかしさがあった。
 いくら麓戸が恋人だといっても、麓戸との間に子ができるわけでないから、麓戸も知っている元妻なら、子を産んでもらう相手としては最適だったのかもしれないと今なら思う。それでも麓戸は、離婚しているのだから、元妻に、いい感情を持っていないかもしれず、もしそうなら良くないことだった。
 一番問題なのは、自分が、村田母に脅されて無理矢理されたということにあった。そんな風にされた村田母のことが好きになれるわけがなかったし、そもそも好みではなかった。
 ただ、麓戸仕込みの性技に、ハマったといえばハマってしまった。女性とできないのでは、という不安も、多少拭われた。麓戸に、女となんて無理に決まっていると散々言われていたので、なんとかできたことにほっとしたし、自信もついた気がする。
 それにしても、無理矢理されたことが傷になっていたし、もともとトラウマ があったところに、赤ん坊ができたからといって、努力して村田母を愛せるようになるとも思えなかった。できれば会いたくない。だが、呼び出されて誘われては3Pなどしていた時は、それはそれで苦しいような興奮があった。
 もう戻りたくない、これでよかったんだ、と思うが、倒錯した行為自体には興味があって、もうできないのは惜しいような気もした。かといって、村田母に誘われても、もうごめんだった。
「そっか。そうなんだ? よかった。母ちゃんに言っとく」
「え……」
そんな未練があるようなことを伝えられて、また誘われたらどうしよう。校長には、けじめをつけろと厳しく言われたのだ。
「大丈夫だよ。なんか母ちゃん結婚するし」
小坂の不安を見てとったのか、村田が言った。
「悪照君も、いっしょに住むのか? その……赤ん坊のお父さんと」
「あぁ、それね、気が進まないんだよね。だから俺は、麓戸父さんと住むかも」
「えっ」
それはショックだった。近いうちに麓戸とまたいっしょに住めるかも、と期待を抱いていただけに。
「新婚の邪魔したら悪いじゃん。ま、わかんないけど」
やっぱり自分は一人ぼっちじゃないか。
「よかったな。お父さんと住めることになって」
呆然として悲しみを隠しながら村田に言った。
「まだ、わかんないけどさ」
悪照は嬉しそうにはにかんだ。いつのまにか年相応の、いや、年よりいくぶん幼いような少年の表情になっていた。
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