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第二十二章

イケメン教師、麓戸の店から帰ろうとする

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「今日は、僕、もう帰ろうと思います」
小坂が冷めた気持ちでそう言って立ち上がると、麓戸はうろたえたように、
「あ、もうこんな時間か」
と時計を見て応えた。
 夜が更けていた。時計の針が静かに時の経過を告げていた。全てが過ぎ去っていく。何か虚しくて悲しくて涙が滲んだ。
「泊まっていってもいいんだぞ? 泊まってくか?」
麓戸が小坂の顔を覗きこむようにして聞いてきた。
「いえ、帰ります」
小坂はプイと顔をそむけた。弱気な涙を見られまいと背を向けた。
「じゃあ、これ。プレゼントだから」
麓戸が貞操帯を渡そうとしてきた。
「せっかく作っていただいて申し訳ないのですが、受け取れません。僕、こういうの、もうやめようと思います」
小坂は言って唇を強く結んだ。
「こういうのって? ああ、貞操帯は、つらいよな。オデトの気にいるかなと思ったんだが。うん、そうだな。身体にもよくない。精神的にもよくない」
麓戸は、小坂の機嫌をうかがうように、そそくさと貞操帯をしまった。
「さよなら」
小坂は、小さくそう言って帰ろうとした。
「まさか、また戻ってこないわけじゃないよな?」
麓戸の声が背後から追いかけてきた。戻らないつもりだった。でもそう言ったら引き止められる。だから何も答えなかった。デジャヴ。同じようなことが何回もあった気がする。なのに繰り返してしまう。こんなこと何回繰り返したら気がすむんだ。お前、バカだろう。学習能力ないのか。相手も悪いがお前も悪いよな。自ら危険な人間に吸い寄せられてるんだから。気づかないってこともあるだろうけど、気付いてるんなら離れろよ。自分をののしる心の声は誰のものだろう。優柔不断。
 見捨てられ不安が襲ってきた。引き止めてほしい。捨てられたくない。弱気な自分。
「オデト、何か言いたいことがあるなら言えよ。何か俺に聞きたいこととか」
麓戸が、少しいらだったような声で言った。
「聞きたいこと……?」
「何かあるだろう。何でそうやって黙って行ってしまうんだよ」
麓戸のとり残されたくないというような悲痛な声の響きに小坂は動揺した。
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