パスコリの庭

リリーブルー

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第七章

守る

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 確かなものに、触れていない不安感。揺らぐ、不安感。
「あなたはそれでいいの?」
「いいとは思わない」 

 一縷の望み。
 つかんだ縄の切れる。
 l'uccisero:cadde tra spini: 誰かが殺した。いばらの中に落ちた。
 つかんだ縄の切れる。
 tra spini: いばらの中に。

「あなたは血まみれで」
「俺は痛まない」

 あなたはそれでいいの? 
 それでいいなら、いいんだ。
 僕には何も言うことはない。
 僕の出る幕じゃない。

「言わぬが花ってこともある」
「だったら、一人でそうやって我慢してればいいだろう」
もう言うことはない、弓弦さんに言うことはなかった。

「君の羽がもげている」
弓弦さんは、僕の背に、ぼんやりと腕を伸ばし、つぶやいた。
 僕はくるっと反転して、背を守るようにして叫んだ。
「そうしたいやつはそうすればいい、でも僕は嫌だ。僕は、そんな軽々しく、肉体関係を持ちたくないんだ」
僕は、ふるえる唇で言った。その話題を出すのが怖かったからだ。自分の気持ちを見るのが怖かった。
「軽々しくだって? いつ俺が軽々しくした?」
弓弦さんが僕の顔を見た。僕は弓弦さんの顔を睨み付けた。怒りで頭が割れそうだった。
「あなたは、勝手にすればいい」
弓弦さんは、僕の言い放った言葉の後、しばらく黙ってから、静かに問うた。
「何か、知っているのか?」
僕は逆にどきっとした。僕の発言が、弓弦さんの禁忌に触れたらしい。静けさが流れた。
「何を、守っているの?」
僕は、彼が真実を話すことをかたくなに拒むのは、何かを守っているからなのではないかと感じて尋ねた。彼は、答えた。
「羽、君の羽」
「気味悪いこと言うなよ」
僕は、言った。弓弦さんは、僕の後ろの宙を見ていた。

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