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少年
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旧暦十月。月がとても明るく澄んでいる。カーテンをあけて、光を招きいれる。敦道君の身体が窓から差し込んでくる月の光に照らされて、美しい起伏を見せているのを、僕は眺めていた。眠っていると思った彼も、目をあけて、僕の姿を見るともなしに見ている。
翌朝、
──腕枕にも今朝は霜がおりて冷たくて
僕は、先にメールを打った。だいぶ後になって
──それでも君が恋しくて
と送信されてきた。少しして、少年が手紙を持ってきた。
「僕が間違えて、敦道さんの携帯を持って行ってしまって。信じられないやつだって、すごくしかられました。おかげで和泉さんに先をこされたって。」
手紙を見ると
──昨夜の月はきれいでしたね。君の姿も。霜のように煌いて。と伝えたいのだけど手段
がない!!
僕は、笑って返事をしたためる。
──まどろみもせず一夜ながめた月の姿、君の姿が偲ばれます。
昨夜の敦道君の姿を思い浮かべ、陶然となる。ふと、少年のほうを見ると、心なしかしょげた顔して待っている。
「ねえ、君は敦道君にひどく責められたの?」
「ええ」
悲しそうな顔をする。うつむいた顔が可愛い。為尊さんがいたころは、確かに少年という感じだったけれど、今は青年になりかかっていた。為尊さんが生きていた頃も思っていたけれど、この子って敦道君とどんな関係なんだろう? ちょっと疑えるよな。
「いつもは可愛がってくれるのに?」
「はい」
「へえ、そうなんだ?」
僕が意味深に笑うと、慌てて
「あ? えっ?! いえ、そんなことないです」
赤くなって否定した。もっとからかってやりたい気もしたけど、あんまりふざけると、また敦道君に誤解されかねないから、やめておいた。
僕は、続けて
──霜も煌く朝日に、溶けはじめています。お使いの子も許してあげて。
と書き上げて少年に渡した。
返事が来て
──今朝君が、したり顔でメールをよこしたかと思うと憎らしい。この少年殺してしまおうか。朝日に消えるはずの霜だけど、なかなかとけませんよ僕の怒りは
うわあ、鳥の次は、少年か! だんだん過激になっていっている。言葉だけとは言え、大丈夫だろうか、と以前のフライドチキンを思い出した。
思ったのだけれど、ひょっとして、あの子、僕にからかわれたことを、彼に言ったのでは? それで、余計、彼はおかんむりなのかも。そして……僕は今日の、敦道君の名前を出したときの少年の表情を思い出した。僕といる時間より、あの子といる時間の方がずっと長いのだ。やはり、僕にするように、あの子とも? ひどく責められた、か。僕は自分で言った言葉に、どきどきした。
敦道君、激しいというか、情熱的だからな……とそこまで思った時、絡みつく彼の肢体の感覚が想起されて、僕は少しぼうっとなった。
──敦道君との間をとりもってくれた、あの子を生かしておけないなら、あなたは、もう手紙を持って行かせることもできませんよ。
──なるほど。君がそういうなら殺さないことにしよう。ところで腕枕は忘れたようですね。
──人知れず心にかけて忍ぶのを、忘れたと思うの?君の腕枕を。
──僕が何も言わなかったら忘れていたくせに、僕の腕枕を。
翌朝、
──腕枕にも今朝は霜がおりて冷たくて
僕は、先にメールを打った。だいぶ後になって
──それでも君が恋しくて
と送信されてきた。少しして、少年が手紙を持ってきた。
「僕が間違えて、敦道さんの携帯を持って行ってしまって。信じられないやつだって、すごくしかられました。おかげで和泉さんに先をこされたって。」
手紙を見ると
──昨夜の月はきれいでしたね。君の姿も。霜のように煌いて。と伝えたいのだけど手段
がない!!
僕は、笑って返事をしたためる。
──まどろみもせず一夜ながめた月の姿、君の姿が偲ばれます。
昨夜の敦道君の姿を思い浮かべ、陶然となる。ふと、少年のほうを見ると、心なしかしょげた顔して待っている。
「ねえ、君は敦道君にひどく責められたの?」
「ええ」
悲しそうな顔をする。うつむいた顔が可愛い。為尊さんがいたころは、確かに少年という感じだったけれど、今は青年になりかかっていた。為尊さんが生きていた頃も思っていたけれど、この子って敦道君とどんな関係なんだろう? ちょっと疑えるよな。
「いつもは可愛がってくれるのに?」
「はい」
「へえ、そうなんだ?」
僕が意味深に笑うと、慌てて
「あ? えっ?! いえ、そんなことないです」
赤くなって否定した。もっとからかってやりたい気もしたけど、あんまりふざけると、また敦道君に誤解されかねないから、やめておいた。
僕は、続けて
──霜も煌く朝日に、溶けはじめています。お使いの子も許してあげて。
と書き上げて少年に渡した。
返事が来て
──今朝君が、したり顔でメールをよこしたかと思うと憎らしい。この少年殺してしまおうか。朝日に消えるはずの霜だけど、なかなかとけませんよ僕の怒りは
うわあ、鳥の次は、少年か! だんだん過激になっていっている。言葉だけとは言え、大丈夫だろうか、と以前のフライドチキンを思い出した。
思ったのだけれど、ひょっとして、あの子、僕にからかわれたことを、彼に言ったのでは? それで、余計、彼はおかんむりなのかも。そして……僕は今日の、敦道君の名前を出したときの少年の表情を思い出した。僕といる時間より、あの子といる時間の方がずっと長いのだ。やはり、僕にするように、あの子とも? ひどく責められた、か。僕は自分で言った言葉に、どきどきした。
敦道君、激しいというか、情熱的だからな……とそこまで思った時、絡みつく彼の肢体の感覚が想起されて、僕は少しぼうっとなった。
──敦道君との間をとりもってくれた、あの子を生かしておけないなら、あなたは、もう手紙を持って行かせることもできませんよ。
──なるほど。君がそういうなら殺さないことにしよう。ところで腕枕は忘れたようですね。
──人知れず心にかけて忍ぶのを、忘れたと思うの?君の腕枕を。
──僕が何も言わなかったら忘れていたくせに、僕の腕枕を。
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