男色 和泉式部日記

リリーブルー

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ほととぎす

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 ほととぎすは、旧暦五月に入って鳴き始める。それまでは忍び音という。

──ほととぎすの忍び音を聞く、最後のチャンスです。

 そう言ってやったけれど、電源が入っていないのか届かなくて、留守番メールのセンターに蓄積された。翌日になって、返事が来た。

──これからは、忍び音でなく、堂々と鳴くことでしょう。

 二三日して、彼は、忍んでやってきた。堂々とやってきたようには見えない。
 僕は、出張の準備をしていた。
「なかなか来られなくて」
彼は弁解したが、つまり、僕のことをそんなに思っているわけじゃないということだろう。だから、用事を言い訳に、敦道君が僕と寝たがっているのを無視して、明かした。


 その朝

──珍しい仕打ちですね。せっかく会ったのに、何もないなんて。ひどいなあ。

とあった。確かに、せっかく来てくれたのに、ひどいと思っただろうな、と可哀想になった。

──せっかく会ったのに、二度と会えなくなってしまうこともあるのだから。珍しくもないですよ。

と返事した。


翌日

──今日は出張先ですか? いつ帰られますか? 遠くだと思うと寂しいです。

とあるので

──そんなふうに言われると、五月雨のように思い乱れてしまいます。

と返事して、二三日位して帰って、敦道君から

──ずっとお会いしていないので伺いたいのですが……。この間は、僕だけが求めているみたいで、恥ずかしかったです! 忘れることができるかと、わざと連絡しなかったのですが、今日は気持ちに負けました。僕の気持ち、わかってください!

とある。返事に

──あなたは強いから負けるとも思えません。連絡が途絶えがちなのは、あなたも、いろいろとお忙しいからでしょう。

と言っておいた。


 敦道君は、いつものように、おしのびで、やってきたらしい。僕は、もしかしたら、来るかもしれないとは思っていたが、疲れて眠ってしまっていて、気づかなかった。
 翌朝見ると、

──開かずの扉を前にして、まさにこれがあなたの心だ、と思いました。自分が哀れです。

とメールが入っていた。え、昨夜来てくれたんだ? と僕は驚いた。

──開けようともしないで、どうしてわかりますか? 疑わずに、僕の心を見てほしいです。

と返事をした。
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