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第四章 【覇闘】直前狂騒曲
錬装者煉獄篇⑨何とも歪んだ優越感…でも、無いよりマシだろッ!?
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予想だにし得なかった来訪の意思を伝えた後、たっぷり5秒間の間を措いて神田口女史は茶目っ気たっぷりに冬河黎輔に問うた。
「Is it ok,Mr.Fuyukawa?」
これにNOと答える男…それはもはや、オトコではない…。
「イ…イエスぅッッ!!」
「よかった…聖団の未来のためにも、あなたとはぜひ一度お会いしておかなきゃと思っていたのよ…もちろんあまりいいカタチとはいえないけれど、何とかこのマイナスの出来事をプラスに転化していかないと…ね。
──それでは何かそちらから聞いておきたいことはあるかしら?」
「……」
聞いておきたいこと…いきなりそう言われても、あの聖団本部に君臨する謎の美女と邂逅できるとの〈朗報〉でぼうっと霞んだ頭ではまともな質問はできそうにない…。
『…ホントに心の底から興味があるのは桂城兄妹と聖団との関わりだけなんだが、これは土曜日のお楽しみでいいや…。
そもそもが、美人に美人の話を振るのは失礼ってもんだしな…!』
──という訳で、彼の返事はこうなった。
「いいえ…今は特にありません…」
ふふふ、とまたしても刺激的すぎる含み笑いを繰り出していたいけな少年の鼓膜と股間を攻撃した美しき魔女は完全勝利で終えたこの会話を次のように締めくくった。
「そうよね、何しろ今は錬装者の威信を賭けた覇闘を控えてるんですものね…。
…ごめんなさいね、まさにいざ出陣という時に集中力を乱すような電話を掛けてしまって…」
「いいえ、何をおっしゃるんですかッ!
悪いのは全て、首督としての自覚を忘れ果てて自堕落で不摂生な生活を続けた挙句、あたかも天罰のように皆さんの前でブザマな醜態を晒すに至った冬河恒典本人ですッッ!!
この愚か者の(イカれた)頭を治療して下さる神様のような秘密施設の方々にはもちろん感謝の言葉しかありませんが、もし叶うのであればこの機会にその(腐りきった)人間性にもメスを入れて頂ければほんとうにありがたいのですが…」
「ほほほほ…まあ、黎輔クンってなかなか毒舌家なのねえ…。
まさに恒典首督がいつもぼやいてらしたその片鱗を垣間見た思いだわ…。
でもお兄様が出征中の現在、たった一人の血を分けた肉親なんですからどうか仲良くして下さいね…。
──それでは繰り返すけれど戦いの前の貴重な時間に長々とお話してホントにごめんなさいね…。
それでは今日のあなたの…そして中国支部の勝利を陰ながら祈っているわ…。
じゃあ、土曜の夜にお逢いしましょう…失礼します」
この別れの挨拶への返事も忘れて呆然としている相手を慈しむかのような沈黙が10秒あまり続いた後に不意に電話は切れたのであるが、夢現の状態で虚空を見上げる少年の心を領しているのは、“ひねくれた恋愛至上主義者“ともいうべき彼らしい感慨であった。
『神田口さん、とうとう剛駕のゴの字も口にしなかったな…。
やっぱり〈備前の覇王〉は自分以外のみんなが気付いていたとおり、SNSでしか相手にしてもらえない言葉のゴミ箱でしかなかったんだ…。
だが、それに引き換えこのオレさまは…!
敵に勝つより味方に勝て…もちろんそんな諺無いけど、何かもう今のオレのココロん中、ヤベえ全能感で満ち満ちてる…!!
この勢いで覇闘にブチ当たりゃ、まさにそっちの方面でも新境地が摑めそうだ…。
──これまで、憧れの存在はみんな文字通り手の届かない場所にしかいなかった…。
りさらさんと…そして未だ見ぬ弓葉ちゃんは異世界へ行ってしまうし、聖蘭様は元々住む世界が違う大スターだしな…。
まあ〈夢のお告げ〉が真実なら一縷の望みはあるけど聖団とホントに繋がりを持つことになるのか定かじゃないし、しかも仮に兄さんが聖団長ということにでもなりゃ芸能事務所そこのけの鉄壁のガードで囲い込んで、聖団員に指一本触れさせるどころかお披露目すら許さねえだろうしな…。
でも、今日この日、オレは人生に希望を得たッ!
我が愛しき神田口礼奈様!
──不肖・冬河黎輔、本日の覇闘の勝利、貴女に捧げますッッ!!!」
「Is it ok,Mr.Fuyukawa?」
これにNOと答える男…それはもはや、オトコではない…。
「イ…イエスぅッッ!!」
「よかった…聖団の未来のためにも、あなたとはぜひ一度お会いしておかなきゃと思っていたのよ…もちろんあまりいいカタチとはいえないけれど、何とかこのマイナスの出来事をプラスに転化していかないと…ね。
──それでは何かそちらから聞いておきたいことはあるかしら?」
「……」
聞いておきたいこと…いきなりそう言われても、あの聖団本部に君臨する謎の美女と邂逅できるとの〈朗報〉でぼうっと霞んだ頭ではまともな質問はできそうにない…。
『…ホントに心の底から興味があるのは桂城兄妹と聖団との関わりだけなんだが、これは土曜日のお楽しみでいいや…。
そもそもが、美人に美人の話を振るのは失礼ってもんだしな…!』
──という訳で、彼の返事はこうなった。
「いいえ…今は特にありません…」
ふふふ、とまたしても刺激的すぎる含み笑いを繰り出していたいけな少年の鼓膜と股間を攻撃した美しき魔女は完全勝利で終えたこの会話を次のように締めくくった。
「そうよね、何しろ今は錬装者の威信を賭けた覇闘を控えてるんですものね…。
…ごめんなさいね、まさにいざ出陣という時に集中力を乱すような電話を掛けてしまって…」
「いいえ、何をおっしゃるんですかッ!
悪いのは全て、首督としての自覚を忘れ果てて自堕落で不摂生な生活を続けた挙句、あたかも天罰のように皆さんの前でブザマな醜態を晒すに至った冬河恒典本人ですッッ!!
この愚か者の(イカれた)頭を治療して下さる神様のような秘密施設の方々にはもちろん感謝の言葉しかありませんが、もし叶うのであればこの機会にその(腐りきった)人間性にもメスを入れて頂ければほんとうにありがたいのですが…」
「ほほほほ…まあ、黎輔クンってなかなか毒舌家なのねえ…。
まさに恒典首督がいつもぼやいてらしたその片鱗を垣間見た思いだわ…。
でもお兄様が出征中の現在、たった一人の血を分けた肉親なんですからどうか仲良くして下さいね…。
──それでは繰り返すけれど戦いの前の貴重な時間に長々とお話してホントにごめんなさいね…。
それでは今日のあなたの…そして中国支部の勝利を陰ながら祈っているわ…。
じゃあ、土曜の夜にお逢いしましょう…失礼します」
この別れの挨拶への返事も忘れて呆然としている相手を慈しむかのような沈黙が10秒あまり続いた後に不意に電話は切れたのであるが、夢現の状態で虚空を見上げる少年の心を領しているのは、“ひねくれた恋愛至上主義者“ともいうべき彼らしい感慨であった。
『神田口さん、とうとう剛駕のゴの字も口にしなかったな…。
やっぱり〈備前の覇王〉は自分以外のみんなが気付いていたとおり、SNSでしか相手にしてもらえない言葉のゴミ箱でしかなかったんだ…。
だが、それに引き換えこのオレさまは…!
敵に勝つより味方に勝て…もちろんそんな諺無いけど、何かもう今のオレのココロん中、ヤベえ全能感で満ち満ちてる…!!
この勢いで覇闘にブチ当たりゃ、まさにそっちの方面でも新境地が摑めそうだ…。
──これまで、憧れの存在はみんな文字通り手の届かない場所にしかいなかった…。
りさらさんと…そして未だ見ぬ弓葉ちゃんは異世界へ行ってしまうし、聖蘭様は元々住む世界が違う大スターだしな…。
まあ〈夢のお告げ〉が真実なら一縷の望みはあるけど聖団とホントに繋がりを持つことになるのか定かじゃないし、しかも仮に兄さんが聖団長ということにでもなりゃ芸能事務所そこのけの鉄壁のガードで囲い込んで、聖団員に指一本触れさせるどころかお披露目すら許さねえだろうしな…。
でも、今日この日、オレは人生に希望を得たッ!
我が愛しき神田口礼奈様!
──不肖・冬河黎輔、本日の覇闘の勝利、貴女に捧げますッッ!!!」
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