19 / 37
父、あけぼの荘に帰還す。
7
しおりを挟む
食べ終わって、半分寝たままのちびの世話を直也と一緒にやって、幼稚園に送り出す。
「お父さん、ちびたちを連れて行って?ついでに幼稚園の先生にも挨拶してきてね?」
「ああ。わかった」
幼稚園は、目と鼻の先にある。
以前は保育所に通わせていたが、この春に近所に幼稚園ができたから転園させたということだ。
準備のできたちびどもと手を繋いで家を出た。
「いってきまーす!なーあんちゃん!」
「直あんちゃん!いってくるー!」
玄関の前で見送る直也に、いつまで経ってもちびたちは手を振る。
「いってらっしゃーい!海人、陸人!」
ぶんぶんと手を振る直也の姿に、明希子の姿が重なった。
じわりと、目頭が熱くなった。
「父ちゃんどうしたの?」
「とーちゃん?どっか痛いの?」
「ち、違うわ!おら、行くぞ!」
ちびたちを無事に幼稚園に放り込み、担任の中園先生にも初めて挨拶ができた。
入園式は海の上だったからな…(つか、転園したことも知らなかったが)
悪人顔の俺にも怯むこと無く、中園先生はほんわかと笑っていた。
さすが…お若く見えるけどベテランなんだろうなあ。俺の顔くらいじゃ動じないようだ。
ふたりともとってもいい子ですって褒めてもらって。
おまけに…
「とってもよく秋津さんが面倒みていらっしゃって…」
なんて言われて…なんだかケツの座りが悪い。
直也が予め電話をしておいたんだろう。
話はスムーズに終わって、俺は幼稚園を後にした。
帰り際、中園先生は門まで見送ってくれた。
「お休みの日に、直也さんと秋津さんが海人くんと陸人くんを連れて歩いているのを見たことがあるんですけどね…まるで親子みたいで…」
「はあ…」
「お母様がいらっしゃらない分、ご家族で頑張ってらして…本当に若いのに頭が下がります」
「い、いえ…そんな…」
「だから、お父さんも安心してお仕事できるんですね」
そう言って、中園先生は園に戻っていった。
「親子、か…」
トボトボと歩きながら、あの光景を思い出した。
そう、あれは…
昔の俺たちの姿──
明希子がいて、俺がいて…
そして子どもたちがいて…
とても懐かしい風景
あけぼの荘に帰ると、直也が居間で繕い物をしていた。
どうやら雑巾を作っているようだ。
「直也…」
「あ、おかえり。ちゃんと中園先生に挨拶できた?」
「む?ああ…できた」
「そう。いい先生だったでしょ?」
「ああ…そうだな」
多少不器用ではあるが、運針は止まることがない。
「なあ…直也」
「んー?」
「秋津のどこが好きなんだ?」
「痛っーーーーーー!」
突然、直也が指に針をぶっ刺した。
「な、な、何を言い出すんだよっ!」
戸棚から出した絆創膏を貼りながらも、まだ焦ってる。
「へ、変なこと言わないでよね」
「変なことでもないだろう…つきあってるんだろう?」
「う…」
真っ赤になって俯いてしまった。
「…秋津は、おまえの病気のこと、知ってるのか?」
「うん…秋津さんがここにきた時、入院したから…知ってる」
「そうか…」
「ちゃんと…説明はしたよ…?」
恐る恐る、直也は視線を上げた。
「なんでわかったの…?」
明希子にそっくりだな…
ピンチになると、顔を真っ赤にして目が潤むんだよな。
「そんなもの、見ていればわかる」
「えっ…」
手を伸ばして、ぐしゃっと直也の頭を撫でた。
「…おまえが選んだんだ。俺は反対はしねえよ」
ポロリと、思ってもない言葉が出た。
「お父さん…」
でも、泣きそうになっている直也の顔を見たら、どうでもよくなった。
孫の顔が見れないのは残念だが、直也の身体のことを考えたら、端から期待はできなかった。
優也が居るし、それにちびたちが居るじゃないか。
「ただし、秋津が直也を泣かせたら、俺がぶん殴るからな」
「や、やめてよ!お父さんが本気で殴ったら、秋津さん死んじゃうよ!」
「お父さん、ちびたちを連れて行って?ついでに幼稚園の先生にも挨拶してきてね?」
「ああ。わかった」
幼稚園は、目と鼻の先にある。
以前は保育所に通わせていたが、この春に近所に幼稚園ができたから転園させたということだ。
準備のできたちびどもと手を繋いで家を出た。
「いってきまーす!なーあんちゃん!」
「直あんちゃん!いってくるー!」
玄関の前で見送る直也に、いつまで経ってもちびたちは手を振る。
「いってらっしゃーい!海人、陸人!」
ぶんぶんと手を振る直也の姿に、明希子の姿が重なった。
じわりと、目頭が熱くなった。
「父ちゃんどうしたの?」
「とーちゃん?どっか痛いの?」
「ち、違うわ!おら、行くぞ!」
ちびたちを無事に幼稚園に放り込み、担任の中園先生にも初めて挨拶ができた。
入園式は海の上だったからな…(つか、転園したことも知らなかったが)
悪人顔の俺にも怯むこと無く、中園先生はほんわかと笑っていた。
さすが…お若く見えるけどベテランなんだろうなあ。俺の顔くらいじゃ動じないようだ。
ふたりともとってもいい子ですって褒めてもらって。
おまけに…
「とってもよく秋津さんが面倒みていらっしゃって…」
なんて言われて…なんだかケツの座りが悪い。
直也が予め電話をしておいたんだろう。
話はスムーズに終わって、俺は幼稚園を後にした。
帰り際、中園先生は門まで見送ってくれた。
「お休みの日に、直也さんと秋津さんが海人くんと陸人くんを連れて歩いているのを見たことがあるんですけどね…まるで親子みたいで…」
「はあ…」
「お母様がいらっしゃらない分、ご家族で頑張ってらして…本当に若いのに頭が下がります」
「い、いえ…そんな…」
「だから、お父さんも安心してお仕事できるんですね」
そう言って、中園先生は園に戻っていった。
「親子、か…」
トボトボと歩きながら、あの光景を思い出した。
そう、あれは…
昔の俺たちの姿──
明希子がいて、俺がいて…
そして子どもたちがいて…
とても懐かしい風景
あけぼの荘に帰ると、直也が居間で繕い物をしていた。
どうやら雑巾を作っているようだ。
「直也…」
「あ、おかえり。ちゃんと中園先生に挨拶できた?」
「む?ああ…できた」
「そう。いい先生だったでしょ?」
「ああ…そうだな」
多少不器用ではあるが、運針は止まることがない。
「なあ…直也」
「んー?」
「秋津のどこが好きなんだ?」
「痛っーーーーーー!」
突然、直也が指に針をぶっ刺した。
「な、な、何を言い出すんだよっ!」
戸棚から出した絆創膏を貼りながらも、まだ焦ってる。
「へ、変なこと言わないでよね」
「変なことでもないだろう…つきあってるんだろう?」
「う…」
真っ赤になって俯いてしまった。
「…秋津は、おまえの病気のこと、知ってるのか?」
「うん…秋津さんがここにきた時、入院したから…知ってる」
「そうか…」
「ちゃんと…説明はしたよ…?」
恐る恐る、直也は視線を上げた。
「なんでわかったの…?」
明希子にそっくりだな…
ピンチになると、顔を真っ赤にして目が潤むんだよな。
「そんなもの、見ていればわかる」
「えっ…」
手を伸ばして、ぐしゃっと直也の頭を撫でた。
「…おまえが選んだんだ。俺は反対はしねえよ」
ポロリと、思ってもない言葉が出た。
「お父さん…」
でも、泣きそうになっている直也の顔を見たら、どうでもよくなった。
孫の顔が見れないのは残念だが、直也の身体のことを考えたら、端から期待はできなかった。
優也が居るし、それにちびたちが居るじゃないか。
「ただし、秋津が直也を泣かせたら、俺がぶん殴るからな」
「や、やめてよ!お父さんが本気で殴ったら、秋津さん死んじゃうよ!」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームに転移したけど無理ゲー過ぎて笑える(仮)
鍋底の米
BL
ある日、高校からの帰り道、とある事故に巻き込まれたせいで、おれは異世界に転移させられた。
『ハーレム学園 どきどき♡サバイバル ~乙女の本気モード~』
そこは、乙女ゲームの世界であった…
称号:聖女? いや、おれ男だし。
しかもなんといきなり2作目? ふざけんな!
突然迫る命の危機?! ハードモード過ぎるだろ!!
—— どうやらこれは、ただの恋愛ゲームではなさそうだ…。
------------------------------------------------
ファンタジー色強め。
だが、BL。されど、BL。
けれど、R18指定はしておりません。
ゲームのタイトルがアレですが、
学園物ではありませんし、
カップリングも固定です。
この時点でかなり読者層が狭まると思います。
それでもオッケーよ、と受け入れてお付き合い頂けると嬉しいです。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
モラトリアムの俺たちはー
木陰みもり
BL
《あらすじ》
高校3年の春、陽介の止まっていた時間は動き出した。
8年前、突然陽介の前から消えた幼馴染で、大切な「Sub」、柊 晴陽。
彼は何の前触れもなく、
陽介の高校に「Normal」の新任教師としてやってきた。
「自分はNormalである」と説明する晴陽に動揺を隠しきれない陽介は、
真相を突き止めるため、晴陽に会いに行く。
ーーこの新任教師は、陽介の大切なSubなのか、それとも…
8年前、柊晴陽の身に起きた出来事をきっかけに、
Dom/Subという第二の性に向き合い、悩み、
自分の特異的な性質に、彼らは向き合っていくことになる。
【Dom高校生:椎名陽介】と【Sub教師:柊晴陽】が織りなす
重くて甘い、愛の物語ーー
★暴力的表現や、性的描写を含みます。
突然そういったシーンに突入する場合があるので、
心構えをお願いします。
★ご都合主義なところが多いと思いますが、広い心で読んでいただけたら幸いです
★更新は毎日21時更新を予定しています。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる