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父、あけぼの荘に帰還す。
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「秋津くんは…奥さんは?」
「えっ…」
素っ頓狂な声を出すと、真っ赤になって直也を見た。
直也も真っ赤になって秋津を見ている。
「……?」
「ま、まだ結婚は…」
「そうなのか?彼女はいないのか?こんな田舎じゃ、結婚相手なんぞ見つからんだろう」
「い、いえ、その…」
もじもじと二人で黙り込んでしまって、話が進まない。
「あっ…ち、チビたち迎えに行ってくる!」
「あっ…そうだね!もう幼稚園終わっちゃう!よろしく!駿さん!」
なんて話を切り上げて、秋津はさっさと食堂を出ていった。
「なんだ…?」
「お、お父さん、お風呂でも入る?」
「何でこんな昼間に入るんだ」
「あ~じゃあ、お父さんの部屋準備してくる…」
俺は滅多にここには帰ってこないが、夫婦の部屋だった場所はずっとそのままにしてある。
「いや、ベッドのシーツくらい自分で準備するからいい」
そういうと、直也は居心地悪そうに座り直した。
「なんだ。さっきから…なにかあるのか?」
「うっ…ううん!なんでもないっ…」
小さな頃からこういうところは変わっていない。
これは、隠し事をしている時のキョドり方だ。
「お父さんに何を隠している」
ぎくっと直也は俺を見上げた。
「な、なんにも隠してないよお…」
変な汗までかいているじゃないか。
わかりやすいことこの上ないな…
「あれっ…この靴…父ちゃん!?」
厨房から声が聞こえた。
「おお…優也!」
声を掛けると、バタバタと食堂に優也が駆け込んできた。
「えっ…なんで?帰ってくるって連絡あったっけ?」
どうやら外で仕事でもしていたようで、防寒着を着込んでいる。
相変わらず日に焼けて…いい漁師っぷりだ。
髪はちょと茶色すぎるようだが…
この野郎、色気づきやがったな?
「連絡するのを忘れた。今日から一週間、居るから」
「えっ!?たった一週間なの!?」
「しょうがないだろう。今回は日本に寄港しただけだから…」
そう。今回の航海は終わっては居ない。
まだまだ先の話だ。
今回は横浜から神戸から日本各地の港を回るので、その間陸の家族の元に帰れるよう休暇の申請をしておいた。
でも、居られるのはたったの一週間だ。
「本格的に帰ってこられるのは半年先だな」
「またぁ…ほんっと長いよねえ…」
「しょうがないだろう。世界一周する船なんだから」
「そうだけどさぁ…」
今は厳冬期だから、宿は休んでいる。
あけぼの荘の中は閑散としている。
でも、こいつらの様子を見ていると、どうやら上手いことやっているようだ。
「何か変わったことはあるか?」
優也に尋ねると、にやりと笑って直也の方を見る。
「言ったの?もう」
「ばっ…ばかっ!黙ってろ!」
「…なんのことだ?」
「なんでもないっ…」
直也は怒ったように食堂を飛び出していった。
「なんなんだあいつは…」
「ぶふぉっ…」
優也は笑いを堪えて苦しそうにしている。
「優也?」
「い…いや、なんでもない…ひぃ…」
こいつは一旦笑いだしたら暫く止まらないから放っておくしかない。
なんだか…今回の帰国はざわざわするな…
一体何だと言うんだ。
食堂を出て部屋に荷物を入れた。
夫婦で使っていた部屋は、相変わらず何も変わっていない。
ベッドにはシーツも布団もなかったから、布団部屋まで取りに行った。
「あ、お父さん、これ使って?」
直也と優也が追いかけてきて、新品の布団とシーツを持ってきてくれた。
「おお…豪勢じゃないか」
「うん。秋津さんが入ってから、だいぶ手が回るようになったからね」
「そうか…」
なんとなく、秋津のことを話しているときの直也にデジャブを感じる。
どこかで見た風景だ。
どこであったか。はて。
部屋に戻りベッドメイキングをしていると、なにやら外が騒がしい。
「えっ…」
素っ頓狂な声を出すと、真っ赤になって直也を見た。
直也も真っ赤になって秋津を見ている。
「……?」
「ま、まだ結婚は…」
「そうなのか?彼女はいないのか?こんな田舎じゃ、結婚相手なんぞ見つからんだろう」
「い、いえ、その…」
もじもじと二人で黙り込んでしまって、話が進まない。
「あっ…ち、チビたち迎えに行ってくる!」
「あっ…そうだね!もう幼稚園終わっちゃう!よろしく!駿さん!」
なんて話を切り上げて、秋津はさっさと食堂を出ていった。
「なんだ…?」
「お、お父さん、お風呂でも入る?」
「何でこんな昼間に入るんだ」
「あ~じゃあ、お父さんの部屋準備してくる…」
俺は滅多にここには帰ってこないが、夫婦の部屋だった場所はずっとそのままにしてある。
「いや、ベッドのシーツくらい自分で準備するからいい」
そういうと、直也は居心地悪そうに座り直した。
「なんだ。さっきから…なにかあるのか?」
「うっ…ううん!なんでもないっ…」
小さな頃からこういうところは変わっていない。
これは、隠し事をしている時のキョドり方だ。
「お父さんに何を隠している」
ぎくっと直也は俺を見上げた。
「な、なんにも隠してないよお…」
変な汗までかいているじゃないか。
わかりやすいことこの上ないな…
「あれっ…この靴…父ちゃん!?」
厨房から声が聞こえた。
「おお…優也!」
声を掛けると、バタバタと食堂に優也が駆け込んできた。
「えっ…なんで?帰ってくるって連絡あったっけ?」
どうやら外で仕事でもしていたようで、防寒着を着込んでいる。
相変わらず日に焼けて…いい漁師っぷりだ。
髪はちょと茶色すぎるようだが…
この野郎、色気づきやがったな?
「連絡するのを忘れた。今日から一週間、居るから」
「えっ!?たった一週間なの!?」
「しょうがないだろう。今回は日本に寄港しただけだから…」
そう。今回の航海は終わっては居ない。
まだまだ先の話だ。
今回は横浜から神戸から日本各地の港を回るので、その間陸の家族の元に帰れるよう休暇の申請をしておいた。
でも、居られるのはたったの一週間だ。
「本格的に帰ってこられるのは半年先だな」
「またぁ…ほんっと長いよねえ…」
「しょうがないだろう。世界一周する船なんだから」
「そうだけどさぁ…」
今は厳冬期だから、宿は休んでいる。
あけぼの荘の中は閑散としている。
でも、こいつらの様子を見ていると、どうやら上手いことやっているようだ。
「何か変わったことはあるか?」
優也に尋ねると、にやりと笑って直也の方を見る。
「言ったの?もう」
「ばっ…ばかっ!黙ってろ!」
「…なんのことだ?」
「なんでもないっ…」
直也は怒ったように食堂を飛び出していった。
「なんなんだあいつは…」
「ぶふぉっ…」
優也は笑いを堪えて苦しそうにしている。
「優也?」
「い…いや、なんでもない…ひぃ…」
こいつは一旦笑いだしたら暫く止まらないから放っておくしかない。
なんだか…今回の帰国はざわざわするな…
一体何だと言うんだ。
食堂を出て部屋に荷物を入れた。
夫婦で使っていた部屋は、相変わらず何も変わっていない。
ベッドにはシーツも布団もなかったから、布団部屋まで取りに行った。
「あ、お父さん、これ使って?」
直也と優也が追いかけてきて、新品の布団とシーツを持ってきてくれた。
「おお…豪勢じゃないか」
「うん。秋津さんが入ってから、だいぶ手が回るようになったからね」
「そうか…」
なんとなく、秋津のことを話しているときの直也にデジャブを感じる。
どこかで見た風景だ。
どこであったか。はて。
部屋に戻りベッドメイキングをしていると、なにやら外が騒がしい。
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