10 / 37
海鳴り
10
しおりを挟む
それから2週間、俺は直也くんの代わりに民宿で働いた。
そりゃ、できないことだらけだったけど、優也よりはマシにできることだってあった。
チビたちの面倒を見ながら、民宿の仕事をして…
慌ただしく一日が過ぎていく。
「秋津さん!お疲れっ!」
全ての仕事を終えて、優也と晩酌する瞬間。
たまらなくビールが旨い。
「ねえねえ!直あんちゃん、明日帰ってくる!?」
陸人がくりくりの目で優也の顔を覗きこむ。
「うん。明日ね」
優也が嬉しそうに答える。
「やったー!なーあんちゃんのプリン食べたいー!」
海人がガッツポーズをしながら、食堂中転げまわる。
「こらっ!行儀悪い!」
べしっと海人のケツを叩くと、首根っこを掴んで起き上がらせる。
「ごめんなさぁい…」
「ほら、さっさと食う!」
急かさないとチビたちはいつまで経ってもご飯を食わない。
直也くんは、毎日こんなことやってるのか…
そら、熱出るわ…
陸人がお箸を持ったまま、俺の顔をじーっと見てる。
「なんだよ?」
「駿あんちゃん、ここに住むの?」
「えっ?」
「僕、駿あんちゃんと一緒に、毎日寝る!」
「あっ…ズルい!僕だって秋津あんちゃんと一緒に寝るもん!」
「ずるい!俺だって、秋津あんちゃんと…!」
優也が言ったところで、べしっと後ろ頭を叩いてやった。
「いってー…」
「ほら、お前がそんなんだから、チビたちこんななんだろ?」
「そんなってなんだよお!」
涙目になりながら怒ってるけど、しらね。
「ほら、チビども。さっさと食え。お客さんたちが風呂から上がってくるだろ…」
「はあ~い」
「ねえ!駿あんちゃん!僕と寝ようね?」
「僕だもん!」
「どうでもいいから食えや!」
次の日、お客さんを送り出してから、直也くんを迎えに行った。
病室で、すっかり準備を整えた直也くんは、俺達を見つけると微笑んだ。
まぶしい…笑顔。
直也くんの荷物を持って、皆で歩き出す。
車に乗り込むと、海人と陸人は直也くんに抱きついて離れない。
苦しそうにしながらも、直也くんはとっても嬉しそうで。
ぎゅっと二人を抱きしめていた。
あけぼの荘についたら、直也くんを自室へ連れて行く。
「病院でたっぷり寝たから、いいよ…」
そう言って嫌がる直也くんを、無理やりベッドに寝かす。
「無理したら、俺、東京帰るよ?」
そう言って笑ったら、直也くんの目が大きく見開かれた。
遠くで、海人と陸人の笑い声が聴こえる。
優也の顔を見たら、こくんと頷いた。
「あのね…直也くん…俺…」
直也くんがじっと俺を見つめる。
真っ直ぐな眼差しを、俺は受け止めた。
「ここに住んじゃだめかな…?」
優也にはもう話してあった。
漁師の仕事を手伝いながら、民宿の仕事もする。
つまり…この家の住み込み従業員になる。
東京に居る両親にも電話で話してある。
この家の親父さんは連絡が取れないから、連絡が取れ次第、話をする予定だ。
後は、直也くんの答えだけだった。
「え…?秋津さんが、ここに住むの…?」
「うん…ここで、働きたいんだ。直也くん、どうかな…?」
「秋津さん…」
「直也くんが反対なら、俺…」
「そっ…そんなわけ無いじゃんっ」
直也くんは飛び起きて、布団をぎゅっと掴んだ。
「もう…死ぬのやめたの?」
恐る恐る聞いてくる声に、笑顔で答えた。
「うん」
「秋津さん…」
がばっと直也くんが俺に抱きついてきた。
「えっ…」
「ちょ、直也っ…」
「う…うえぇ…よ、よかったぁ…」
直也くんが声を上げて泣きだした。
「駿さん、死ななくてよかったぁ…」
ぎゅうっと抱きしめられると、直也くんの襟足からいい匂いがした。
ぼぼっとほっぺたが熱くなる。
あのときのこと、思い出した。
夢の中の…直也くんのキス。
そりゃ、できないことだらけだったけど、優也よりはマシにできることだってあった。
チビたちの面倒を見ながら、民宿の仕事をして…
慌ただしく一日が過ぎていく。
「秋津さん!お疲れっ!」
全ての仕事を終えて、優也と晩酌する瞬間。
たまらなくビールが旨い。
「ねえねえ!直あんちゃん、明日帰ってくる!?」
陸人がくりくりの目で優也の顔を覗きこむ。
「うん。明日ね」
優也が嬉しそうに答える。
「やったー!なーあんちゃんのプリン食べたいー!」
海人がガッツポーズをしながら、食堂中転げまわる。
「こらっ!行儀悪い!」
べしっと海人のケツを叩くと、首根っこを掴んで起き上がらせる。
「ごめんなさぁい…」
「ほら、さっさと食う!」
急かさないとチビたちはいつまで経ってもご飯を食わない。
直也くんは、毎日こんなことやってるのか…
そら、熱出るわ…
陸人がお箸を持ったまま、俺の顔をじーっと見てる。
「なんだよ?」
「駿あんちゃん、ここに住むの?」
「えっ?」
「僕、駿あんちゃんと一緒に、毎日寝る!」
「あっ…ズルい!僕だって秋津あんちゃんと一緒に寝るもん!」
「ずるい!俺だって、秋津あんちゃんと…!」
優也が言ったところで、べしっと後ろ頭を叩いてやった。
「いってー…」
「ほら、お前がそんなんだから、チビたちこんななんだろ?」
「そんなってなんだよお!」
涙目になりながら怒ってるけど、しらね。
「ほら、チビども。さっさと食え。お客さんたちが風呂から上がってくるだろ…」
「はあ~い」
「ねえ!駿あんちゃん!僕と寝ようね?」
「僕だもん!」
「どうでもいいから食えや!」
次の日、お客さんを送り出してから、直也くんを迎えに行った。
病室で、すっかり準備を整えた直也くんは、俺達を見つけると微笑んだ。
まぶしい…笑顔。
直也くんの荷物を持って、皆で歩き出す。
車に乗り込むと、海人と陸人は直也くんに抱きついて離れない。
苦しそうにしながらも、直也くんはとっても嬉しそうで。
ぎゅっと二人を抱きしめていた。
あけぼの荘についたら、直也くんを自室へ連れて行く。
「病院でたっぷり寝たから、いいよ…」
そう言って嫌がる直也くんを、無理やりベッドに寝かす。
「無理したら、俺、東京帰るよ?」
そう言って笑ったら、直也くんの目が大きく見開かれた。
遠くで、海人と陸人の笑い声が聴こえる。
優也の顔を見たら、こくんと頷いた。
「あのね…直也くん…俺…」
直也くんがじっと俺を見つめる。
真っ直ぐな眼差しを、俺は受け止めた。
「ここに住んじゃだめかな…?」
優也にはもう話してあった。
漁師の仕事を手伝いながら、民宿の仕事もする。
つまり…この家の住み込み従業員になる。
東京に居る両親にも電話で話してある。
この家の親父さんは連絡が取れないから、連絡が取れ次第、話をする予定だ。
後は、直也くんの答えだけだった。
「え…?秋津さんが、ここに住むの…?」
「うん…ここで、働きたいんだ。直也くん、どうかな…?」
「秋津さん…」
「直也くんが反対なら、俺…」
「そっ…そんなわけ無いじゃんっ」
直也くんは飛び起きて、布団をぎゅっと掴んだ。
「もう…死ぬのやめたの?」
恐る恐る聞いてくる声に、笑顔で答えた。
「うん」
「秋津さん…」
がばっと直也くんが俺に抱きついてきた。
「えっ…」
「ちょ、直也っ…」
「う…うえぇ…よ、よかったぁ…」
直也くんが声を上げて泣きだした。
「駿さん、死ななくてよかったぁ…」
ぎゅうっと抱きしめられると、直也くんの襟足からいい匂いがした。
ぼぼっとほっぺたが熱くなる。
あのときのこと、思い出した。
夢の中の…直也くんのキス。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる