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第45話 けたたましく喧しく汽笛の如く

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『改造と言えば、某仮面を被ったライダーが代表かな。あの変身ポーズは、勿論カッコいいし。カンのボディにも、ベルトの印刷でも入るのかな?』
  
「それ単なるデザインカァアアン!? 意味ないやつぅううう!?」
  
『それに悪の組織に改造されながら、正義のヒーローとして戦うという、過酷な運命を背負ってるところが、また惹かれるんだよねぇ。この場合も、魔王軍統領である魔王自ら改造手術を受ける訳だから、その浪漫はカンもクリアしてるよね』
  
「何に対してのクリアカァアアン!? あ! ちょ!? 待つのだ!? あかんて! 穴はあカァアァアン!?」

 作業台に乗せられたカンに殺到する機械の腕達は、その手に様々な工具を持っており、有無を言わさず、カンに工具を振るっていた。

 魔王はその様子を見ながら、作業台を作動させる操作パネルの上で、指先を踊らせる様に操作していた。

 その姿は、まるで一流の指揮者のようであり、その指が奏でる操作音は、まるでオーケストラの様であった。

『カンを改造している最中の魔王の姿は、今のままでも十分カッコよく魅力的だけどね。きっと、そういう姿を部下達に見せなかったんだろうね。上司の意外な一面、所謂ギャップ萌えかな』
  
アガガガガ魔王の事よりも!? カィイイイン我の心配をするのだ!?」

『どこかインテリな部分を併せ持つ魔王と言うのは、やっぱり格好良いと思うよ。単に、幹部達が弱くて勇者の魅惑チャームの術にでも、やられちゃったんだろうね』
  
グカカカギガ我無しで話を進めるな!? カィィィイイイン無視しないでお願い!?』
  
 カンは、魔王の手により改造物理されてしまった。その改造物理は苛烈を極め、魔王の手腕を持ってしても成功するかどうかのギリギリの境界線を、行ったり行ったりしていた。

 操作パネルを操作する魔王の指先にも、緊張が走る。魔王の額には、大粒の汗が光っていた。
  
クギャキャピカ頑張れ!頑張れ!頑張れ!!?」
  
「馬鹿者! 騒ぐな! あ……しっぱ……成功したぞ!」

 若干、魔王の言葉には、ほんのひと握りの罪悪感を乗っていたが、強引に〝成功〟と言い切った。
  
「本当だろうな!?」
  
「勿論だ! 魔王を馬鹿にするでない……ぞ?」
  
「目をそらした上に疑問系ではないカァアアァアアン!?」
  
「兎に角だ! もう良いから、勇者のとこに行ってこい! 面倒だから、帰ってこなくて良いからな!」

 そして作業台の上にだけ、魔法陣が展開し、光が溢れ出した。
  
「いきなり転送陣カァアアアン!?」
  
 かくしてカンは、魔王に改造された挙句に勇者の元へと送られた。数奇な運命にて、再び勇者とカンは出会うことになるのだろうか。

『昼間に日差しが出て、気温があったかいとついついウトウトしちゃうよねぇ。カンの事を観るのは、録画にしておいてお昼寝してこようかな』
  
「我の姿を録画で観られるとか、初耳なんだが? せめて、我にもっと興味をもて」
  
『おや? 魔王軍の魔王自ら改造された為に、モンスターとして勇者と寝取り合戦することになった変態カンが、何かな?』
  
「わざわざ説明しなくても、分かっておるわ。その後、転移と称して捨てられたのだがな……」
  
『続きの物語が、酷くなさけないね。同情してあげなくてもなくはない様な気がしてもしなくても良い感じだね』
  
「表現がカオスでわからんが、結局我に興味をなくした感じになっておるではないか」 
  
「そんなどうでも良いことは置いといて、カンは勇者のとこに転送させられたんだろ?」

 いつもの塩対応のイチカだったが、一応カンに今の状況を問いかけた。
  
「コノヤロウ……まぁ、そうだな。おそらくここは、勇者が野営している場所の様だ。あのクズ勇者の姿は見えぬが、声は野営のテントから聞こえておるからな」
  
『ふむふむ。で、カンは今何してるの? ねぇねぇ、何してるの? 勇者にどんな風に、使われているの・・・・・・・? くふふ』

 口から笑いが漏れるイチカ。
  
「我に聞かずとも、見えておるのだろうが!」
  
『あぁあぁ、またそんな大声出したら……バレちゃうよ?』
  
「しまっ……」
  
 カンが大声でいきなり叫び声を上げたため、勇者のハーレムパーティーは見張り役以外の者達も一斉にテントの中から飛び出してきた。
  
「なんだ? 今、声が聞こえたと思ったんだけど」

「勇者様、私の気の所為かも知れませんが、コレから声が発せられた様に聞こえたのですが……」

 見事なプロポーションに、本当に着る者がいたのかと驚くほどのビキニアーマーを装備した美女が、警戒しながらもソレを指差した。
  
「えっと……コレが声を?」

 訝しげに、ソレをみる勇者天翔龍。
  
 カンは、勇者に気付かれまいと必死に声を殺していた。しかし、改めて気付いてしまったのだ。

 今の己に課せられた役割が、何なのかであるかを。
 
「ピィイイ! お湯が沸いたのヤカァアアアアン!」

 焚き火の上にセットされ、湯を沸かしていたヤカンから、カンの魂の叫びがあがった。

 湯を沸かし、それを知らせねば気が済まないと言わんばかりに、カンは叫んだのだ。

 
「は!? 我は一体、何を……」

『ヤカンとしては、正しい行動だと思うよ』
  
「「「ヤカンが喋ったぁあああ!」」」

 そう、カンは魔王により〝喋る空き缶〟から〝喋るヤカン〟へと改造されていたのだった。
  
「ピィイイイイイ沸いたヤカァアアアアン!?」
  
『悲鳴も、ちゃんと細かくバージョンアップしてるのね』

 ヤカンのカンの悲鳴は、勇者の野営地に汽笛の如く、鳴り響いたのだった。
 
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