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第七章 悠久
鬼
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「ごちそうさま」
「「「ごちそうさまでした」」」
「ごちそうさま?」
俺や三人が食事の後に『ごちそうさま』と言っていた事に、ライは不思議そうな顔をしていた。
「食べ始める時にも『いただきます』って言ってただろ? あれと一緒で、みんなに『ありがとう』って事だよ。ご飯をありがとうって思いながら、言えばいいのさ」
「うん、わかった」
ライの見た目とのギャップには、まだ慣れないが、少しずつ慣れていくだろう。
「さて、夕飯も食べ終わったし、寝る前に軽く運動しようか」
「「「軽く?」」」
「あぁ、遊びみたいなもんだな」
「「「………」」」
「おいおい、そんなに警戒するなよ」
俺は、嗤い顔で三人に微笑む。
「絶対、遊びじゃないでしょ……」
「あの顔は、ある意味私達と遊ぼうとしてます……」
「ゾクゾクしますね」
三人が何やら呟いているが、寝る前の軽い運動の為、そこまで激しく動くつもりはない。
「『鬼ごっこ』をしようか」
「「「鬼ごっこ?」」」
「あぁ、俺が『鬼』になるから、三人はこの闇に紛れて隠れるなり、逃げるなりすればいい。ある程度時間がたったら、俺が追いかける。そして、俺に捕まらなければいいだけだ。遊びだろ?」
俺が、そう説明すると三人は若干の警戒をしながらも、頷いていた。
「ヤナ、わたしは?」
「ライは、ヤナビを残していくから、空間魔法でどんな事が出来るのかヤナビにお話ししてくれ」
「うん」
「いい子だ。ヤナビ、俺が『鬼』になっている間、ライの空間魔法の詳細をなるべく聞き出してやってくれ」
「承知しました、マスター」
俺は、形状変化で『黒炎の自動人形』を一体創りだした。そして、その一体にヤナビをかけると、姿が変わっていった。
「……家庭教師?」
「しかも、エロい方のです」
「……何故?」
「ライ様に、色々聞きながら、この世界の事も教えて差し上げようかと」
「……セアラの事を、もう忘れたのか?」
「……今度は、加減します」
俺とヤナビは、何故か嗤っているセアラを見て、お互い冷静になった。
「さぁ、始めようか『鬼ごっこ』を。三人が逃げてから十数えたら、追いかけるからな」
「不安しかないけど、いいわよ」
「何故か、毛が逆立ちますが、行きます」
「とても、良いゾクゾク感です」
セアラの手遅れ感に、心が折られそうになりながらも、俺は開始を告げた。
「それでは、開始!」
「「「はい!」」」
三人は、俺の声を聞くやいなや野営地囲む森へと飛び出していった。
「いぃち、にぃい、さぁん」
俺は数を数える
「しぃ、ごぉ、ろぉく」
『鬼』のイメージを膨らませ
「しぃち、はぁち、きゅうぅ」
細部まで記憶の限り思い出しながら
「じゅう」
俺は『鬼』に成った。
「……怖い……」
「ライ様、大丈夫ですよ。あの『鬼』は、悪い子を探してますから、ライ様は安心です」
ライが、ヤナビにしがみついているが、ヤナビの言う通り、良い子にしていれば、問題ないのだ。
俺は神出鬼没を全力で発動し、自分は気配を消しながら三人の気配を探った。
そして、俺は闇夜の森へと歩き出した。
「悪い子はいねがぁ」
そして、暫くのすると森から悲鳴が上がった事は言うまでもない。
そして、その夜の神火の馬車内では、三人の呻き声が度々聞こえた。
「ナマが……」
「来ないで……」
「悪い子でごめんなさい……」
俺が、その呻き声を聞いて若干やり過ぎたかなと思っていると、ライが目を開けてソファーに座っていた俺見ていた。
「どうした? 眠れないのか?」
「うん」
俺以外の四人は、横並びにベッドを配置している。最初は二段ベッドを創ろうかと思ったが、ヤナビがライは空間拡張も出来ると聞き出した為、神火の馬車内部の空間をライの魔法で広げていた。
そのため、四人並びでライとアシェリをエディスとセアラが挟むベッドに配置で寝ていた。俺は反対側に置いてあるソファーを寝るときに、形状変化でベッドに創り変える事にしていた。
横並びにしないのは、何故か背中がぞわっとしたからだ。
三人は、『鬼ごっこ』から帰ってくると、良い就寝前の運動になったらしく、ベッドに横になるとすぐさま泥のように眠った。
「闇夜で突然、アレが目に前に現れたらと思うと……流石、鬼畜マスター」
ヤナビの賛辞に気を良くしていると、そのままの姿でいたらライが怯えるので、気に入ってたが泣く泣く解除したのだ。
その後、ライもベッドに横になったが、眠れなかった様だ。
「ちょっと、待ってろ」
俺は立ち上がり、ライのベッドの横に椅子を持って移動した。
「ほら、ここに居てやるから目を瞑れ」
「うん」
俺の方を向きながらライは横になり、目を瞑った。
「大丈夫、大丈夫」
俺はそう小さく呟きながら、ライの肩をトントンと優しく叩きながら寝かしつけた。
暫くするとライの寝息が聞こえ始めた。
「お兄ちゃんの次はパパですか、マスター」
「悪神がパパよりマシだろ」
「まだ、未経験なのにぃ」
「……さぁ、俺も寝よう」
最後にヤナビに、心を砕きにかかられながら、俺もソファーをベッドに変えて横になった。
「おやすみ」
「おやすみなさい、マスター」
ヤナビの優しい声を聞きながら、俺は目を閉じ眠りについた。
そして、全員寝息が聞こえ始めた頃、ヤナビの呟きが静かに響いた。
「あなたが救われる事を、周りも願っていますよ」
迷宮都市国家デキスへと向かう旅の初日の夜は、静かに更けていくのであった。
「おはよう、さぁ今日も張り切っていこうか!」
「「「……はい……」」」
「ぬみゅい」
夜明け前に全員を起こし、いつものランニングを開始する。
今日からライも、朝飯前のランニングは開始する事にした。流石に俺たちにはついてこれない為、ヤナビをサポーターにつけてゆっくりと自動運転する神火の馬車を追う形で走らせた。
「ねぇ? 何故あなた……また『鬼』なの?」
「主様、いじめですか?」
「私、良い子になりますよ?」
三人が、何故かクレームをつけたそうな目を俺に向けているが、俺は全く意に介さず説明をする。
「昨日の『鬼ごっこ』でさ、いつも以上に三人が真剣に逃げるもんだから、これはやっぱり効果的なんだなと。だから、これで朝の走り込みも三人を追いかけたらいいんじゃないかなと思ってさ」
「「「………」」」
そして、朝のランニングを始めたところ、予想通り三人はいつも以上に一生懸命走っていた。
「悪い子はいねぇがぁ」
「「「いやぁあああ!」」」
そして、暫く三人を嬉々として追いかけていると、偶々通りかかった冒険者のパーティに俺が魔物と間違えられ、討伐対象になりかけた。その結果、三人とその冒険者パーティにこっ酷く説教を食らった事で、『鬼ごっこ』は禁止になった。
「調子に乗って、ごめんなさい……」
「マスター……」
「ヤナ、悪い子?」
俺が正座で説教を受けていた所に、ヤナビとライが追いついてきて、ヤナビは呆れながら、ライは不思議そうな顔で呟いていた。
迷宮都市国家デキスまでの道中は、こんな事故がありつつも、ライの基本的な戦闘訓練をヤナビに任せ、俺と三人は毎朝、限界まで|神火の肉体改造器具と神火の重石帯を負荷をかけ直し、戦闘訓練を続けた。
勿論、夕食後は『鬼ごっこ』を再度行った。夜の森なら、迷惑が掛からない筈だと俺が押し切り開催していた。
三日目の夜に、ライも『鬼ごっこ』に参加させた。
「ヤナ! 嫌い!」
結果、ライに号泣され、嫌われました。
「ごぶへぁら!」
俺は地に四つん這いになり、項垂れた。
「倒れない男が、倒れたわね」
「完全に心が折れてそうですけど」
「ヤナ様が、結局悪い子でしたね」
そして、『鬼ごっこ』は完全禁止になり、俺はライの機嫌を直すのに三日間を要した。
「ライちゃん、そろそろ許してあげてくれない?」
「組手の時に、目が死んでいる主様は逆に怖いんです」
「ほら、ヤナ様、いつもの台詞で許しを請わないと」
「ライ! 何でもするから、許して!」
「ライ様、マスターの『何でもする』獲得ですね。大事にして、ここぞと言う時に使いましょうね」
「うん、わかった。ヤナ、いいよ」
そして、俺はライとヤナビがヒソヒソと話している様に絶句しながらも、許された事に喜んだ。
「あれを、チョロいって言うんですよ」
「うん、わかった、ヤナビ先生」
「……ヤナビ……先生だと……?」
俺は喜び一転して、ライの言葉に戦慄していた。
「何を驚いているんですか、マスター。勿論、礼儀作法も私は指導している訳ですから、私のことをライ様が『先生』と呼んでも不思議ではないでしょう」
「そうだよ」
「確か、教えて貰う人に敬意を払うのは良いことだよな……いいんだよな? いいのか? まぁ、いいか」
「ほら、チョロい」
「うん」
そして、七日目の昼に目的地へと辿り着いた。
「ここが、迷宮都市国家デキスか」
堅固な高い壁に囲まれ、異常に丈夫そうな門を見て、俺は呟いた。
『本当に行くの?』
「勿論じゃ! もう幾らここで待ってても、妾の元に来てくれぬ! ならば自ら探しに行くまでじゃ!」
『それに気付くの、遅すぎない?』
「……此処まで、本当なら来て欲しかったんじゃもん!」
『じゃもんて……まぁ、いってらっしゃい』
「いってくるのじゃ!」
そして、転移陣が光だし一人の幼女が、地上へと転移した。
『でもあの姿で、本当に良かったのかな?』
悠久の約束を信じる者の物語
時間という壁により別れを告げた二人の物語
開幕のベルが鳴り
幕が上がり始めた
「「「ごちそうさまでした」」」
「ごちそうさま?」
俺や三人が食事の後に『ごちそうさま』と言っていた事に、ライは不思議そうな顔をしていた。
「食べ始める時にも『いただきます』って言ってただろ? あれと一緒で、みんなに『ありがとう』って事だよ。ご飯をありがとうって思いながら、言えばいいのさ」
「うん、わかった」
ライの見た目とのギャップには、まだ慣れないが、少しずつ慣れていくだろう。
「さて、夕飯も食べ終わったし、寝る前に軽く運動しようか」
「「「軽く?」」」
「あぁ、遊びみたいなもんだな」
「「「………」」」
「おいおい、そんなに警戒するなよ」
俺は、嗤い顔で三人に微笑む。
「絶対、遊びじゃないでしょ……」
「あの顔は、ある意味私達と遊ぼうとしてます……」
「ゾクゾクしますね」
三人が何やら呟いているが、寝る前の軽い運動の為、そこまで激しく動くつもりはない。
「『鬼ごっこ』をしようか」
「「「鬼ごっこ?」」」
「あぁ、俺が『鬼』になるから、三人はこの闇に紛れて隠れるなり、逃げるなりすればいい。ある程度時間がたったら、俺が追いかける。そして、俺に捕まらなければいいだけだ。遊びだろ?」
俺が、そう説明すると三人は若干の警戒をしながらも、頷いていた。
「ヤナ、わたしは?」
「ライは、ヤナビを残していくから、空間魔法でどんな事が出来るのかヤナビにお話ししてくれ」
「うん」
「いい子だ。ヤナビ、俺が『鬼』になっている間、ライの空間魔法の詳細をなるべく聞き出してやってくれ」
「承知しました、マスター」
俺は、形状変化で『黒炎の自動人形』を一体創りだした。そして、その一体にヤナビをかけると、姿が変わっていった。
「……家庭教師?」
「しかも、エロい方のです」
「……何故?」
「ライ様に、色々聞きながら、この世界の事も教えて差し上げようかと」
「……セアラの事を、もう忘れたのか?」
「……今度は、加減します」
俺とヤナビは、何故か嗤っているセアラを見て、お互い冷静になった。
「さぁ、始めようか『鬼ごっこ』を。三人が逃げてから十数えたら、追いかけるからな」
「不安しかないけど、いいわよ」
「何故か、毛が逆立ちますが、行きます」
「とても、良いゾクゾク感です」
セアラの手遅れ感に、心が折られそうになりながらも、俺は開始を告げた。
「それでは、開始!」
「「「はい!」」」
三人は、俺の声を聞くやいなや野営地囲む森へと飛び出していった。
「いぃち、にぃい、さぁん」
俺は数を数える
「しぃ、ごぉ、ろぉく」
『鬼』のイメージを膨らませ
「しぃち、はぁち、きゅうぅ」
細部まで記憶の限り思い出しながら
「じゅう」
俺は『鬼』に成った。
「……怖い……」
「ライ様、大丈夫ですよ。あの『鬼』は、悪い子を探してますから、ライ様は安心です」
ライが、ヤナビにしがみついているが、ヤナビの言う通り、良い子にしていれば、問題ないのだ。
俺は神出鬼没を全力で発動し、自分は気配を消しながら三人の気配を探った。
そして、俺は闇夜の森へと歩き出した。
「悪い子はいねがぁ」
そして、暫くのすると森から悲鳴が上がった事は言うまでもない。
そして、その夜の神火の馬車内では、三人の呻き声が度々聞こえた。
「ナマが……」
「来ないで……」
「悪い子でごめんなさい……」
俺が、その呻き声を聞いて若干やり過ぎたかなと思っていると、ライが目を開けてソファーに座っていた俺見ていた。
「どうした? 眠れないのか?」
「うん」
俺以外の四人は、横並びにベッドを配置している。最初は二段ベッドを創ろうかと思ったが、ヤナビがライは空間拡張も出来ると聞き出した為、神火の馬車内部の空間をライの魔法で広げていた。
そのため、四人並びでライとアシェリをエディスとセアラが挟むベッドに配置で寝ていた。俺は反対側に置いてあるソファーを寝るときに、形状変化でベッドに創り変える事にしていた。
横並びにしないのは、何故か背中がぞわっとしたからだ。
三人は、『鬼ごっこ』から帰ってくると、良い就寝前の運動になったらしく、ベッドに横になるとすぐさま泥のように眠った。
「闇夜で突然、アレが目に前に現れたらと思うと……流石、鬼畜マスター」
ヤナビの賛辞に気を良くしていると、そのままの姿でいたらライが怯えるので、気に入ってたが泣く泣く解除したのだ。
その後、ライもベッドに横になったが、眠れなかった様だ。
「ちょっと、待ってろ」
俺は立ち上がり、ライのベッドの横に椅子を持って移動した。
「ほら、ここに居てやるから目を瞑れ」
「うん」
俺の方を向きながらライは横になり、目を瞑った。
「大丈夫、大丈夫」
俺はそう小さく呟きながら、ライの肩をトントンと優しく叩きながら寝かしつけた。
暫くするとライの寝息が聞こえ始めた。
「お兄ちゃんの次はパパですか、マスター」
「悪神がパパよりマシだろ」
「まだ、未経験なのにぃ」
「……さぁ、俺も寝よう」
最後にヤナビに、心を砕きにかかられながら、俺もソファーをベッドに変えて横になった。
「おやすみ」
「おやすみなさい、マスター」
ヤナビの優しい声を聞きながら、俺は目を閉じ眠りについた。
そして、全員寝息が聞こえ始めた頃、ヤナビの呟きが静かに響いた。
「あなたが救われる事を、周りも願っていますよ」
迷宮都市国家デキスへと向かう旅の初日の夜は、静かに更けていくのであった。
「おはよう、さぁ今日も張り切っていこうか!」
「「「……はい……」」」
「ぬみゅい」
夜明け前に全員を起こし、いつものランニングを開始する。
今日からライも、朝飯前のランニングは開始する事にした。流石に俺たちにはついてこれない為、ヤナビをサポーターにつけてゆっくりと自動運転する神火の馬車を追う形で走らせた。
「ねぇ? 何故あなた……また『鬼』なの?」
「主様、いじめですか?」
「私、良い子になりますよ?」
三人が、何故かクレームをつけたそうな目を俺に向けているが、俺は全く意に介さず説明をする。
「昨日の『鬼ごっこ』でさ、いつも以上に三人が真剣に逃げるもんだから、これはやっぱり効果的なんだなと。だから、これで朝の走り込みも三人を追いかけたらいいんじゃないかなと思ってさ」
「「「………」」」
そして、朝のランニングを始めたところ、予想通り三人はいつも以上に一生懸命走っていた。
「悪い子はいねぇがぁ」
「「「いやぁあああ!」」」
そして、暫く三人を嬉々として追いかけていると、偶々通りかかった冒険者のパーティに俺が魔物と間違えられ、討伐対象になりかけた。その結果、三人とその冒険者パーティにこっ酷く説教を食らった事で、『鬼ごっこ』は禁止になった。
「調子に乗って、ごめんなさい……」
「マスター……」
「ヤナ、悪い子?」
俺が正座で説教を受けていた所に、ヤナビとライが追いついてきて、ヤナビは呆れながら、ライは不思議そうな顔で呟いていた。
迷宮都市国家デキスまでの道中は、こんな事故がありつつも、ライの基本的な戦闘訓練をヤナビに任せ、俺と三人は毎朝、限界まで|神火の肉体改造器具と神火の重石帯を負荷をかけ直し、戦闘訓練を続けた。
勿論、夕食後は『鬼ごっこ』を再度行った。夜の森なら、迷惑が掛からない筈だと俺が押し切り開催していた。
三日目の夜に、ライも『鬼ごっこ』に参加させた。
「ヤナ! 嫌い!」
結果、ライに号泣され、嫌われました。
「ごぶへぁら!」
俺は地に四つん這いになり、項垂れた。
「倒れない男が、倒れたわね」
「完全に心が折れてそうですけど」
「ヤナ様が、結局悪い子でしたね」
そして、『鬼ごっこ』は完全禁止になり、俺はライの機嫌を直すのに三日間を要した。
「ライちゃん、そろそろ許してあげてくれない?」
「組手の時に、目が死んでいる主様は逆に怖いんです」
「ほら、ヤナ様、いつもの台詞で許しを請わないと」
「ライ! 何でもするから、許して!」
「ライ様、マスターの『何でもする』獲得ですね。大事にして、ここぞと言う時に使いましょうね」
「うん、わかった。ヤナ、いいよ」
そして、俺はライとヤナビがヒソヒソと話している様に絶句しながらも、許された事に喜んだ。
「あれを、チョロいって言うんですよ」
「うん、わかった、ヤナビ先生」
「……ヤナビ……先生だと……?」
俺は喜び一転して、ライの言葉に戦慄していた。
「何を驚いているんですか、マスター。勿論、礼儀作法も私は指導している訳ですから、私のことをライ様が『先生』と呼んでも不思議ではないでしょう」
「そうだよ」
「確か、教えて貰う人に敬意を払うのは良いことだよな……いいんだよな? いいのか? まぁ、いいか」
「ほら、チョロい」
「うん」
そして、七日目の昼に目的地へと辿り着いた。
「ここが、迷宮都市国家デキスか」
堅固な高い壁に囲まれ、異常に丈夫そうな門を見て、俺は呟いた。
『本当に行くの?』
「勿論じゃ! もう幾らここで待ってても、妾の元に来てくれぬ! ならば自ら探しに行くまでじゃ!」
『それに気付くの、遅すぎない?』
「……此処まで、本当なら来て欲しかったんじゃもん!」
『じゃもんて……まぁ、いってらっしゃい』
「いってくるのじゃ!」
そして、転移陣が光だし一人の幼女が、地上へと転移した。
『でもあの姿で、本当に良かったのかな?』
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