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第四章 自由な旅路
敢えて空気は読まない
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「そろそろ、いいんじゃない? 治ったんでしょう?」
シラユキがジト目で俺を見てくるが、抱きついているのはルイであって、俺ではないと声を大にして言いたい。
「ルイ? 治った……よな?」
「チッ……治ったよぉ」
ルイの何だか暗黒面を一瞬見た気がしたが、俺は全力で見なかった事にした。
「ルゥゥイィイイ! よかったぁああ!」
「ごふ!……喜ぶのはいいけどな? 俺ごと抱きつくな……苦しいわ」
「ヤナもよかったぁああ! あんたもあんなになって、死ぬかと思ったじゃないぃい!」
「「げふ!」」
俺とルイが、アリスに鯖折りをくらい悶絶していると、コウヤの叫びが聞こえた。
「こっちは、割と結構ピンチなんですけどぉおお!」
「「「忘れてた」」」
「酷い!?」
実際、結構コウヤは苦戦していた。既に瘴気纏いの怪物になってしまっているAランク冒険者のエドリックは、明らかに盗賊頭よりも強かった。地力の実力が高かった為に、瘴気纏いになった際も強くなるのかもしれない。
そして、その様子を見て俺もコウヤと共に、瘴気纏いエドリックを相手取った。
「くっ! 流石Aランク冒険者だなっと!」
「あぁ! 結構レベルも上げて強くなったと思ったんだけどっね! こいつは、一人じゃまだ無理!」
俺は、コウヤにエドリックの事を、掻い摘んで話した。コウヤは顔を歪めて、明らかに魔族に対する怒りとエドリックに対する同情で、感情が揺れていた。
「ヤナ! 元に戻す方法は、あるのかい!」
「生きてるうちに元に戻ったのは、一度だけアシェリが成功させている。ああなる前に、瘴気の腕輪を斬り落とすことだっと!」
「っと! 腕輪は……さっき自分で外して、壊してたよ!」
「俺が殺った瘴気纏いの怪物になっちまった盗賊頭と……同じだな! ぐっ!」
「殺ったって、人を…?」
コウヤが一瞬固まって、俺を見る。
「あぁ……同じ様に瘴気の腕輪を装備して怪物になった盗賊の頭をな。斬ったあと、元の人間に戻ったよ」
「そうか……」
「死んだら戻るらしい」
俺はネミアさんに頼まれていた事を、ずっと戦いながら考えていた。
『どっちにしろ救ってください』
殺すにしろ、腕を斬り落とすにしろという事だろう。
もう元に戻す手段は、息の根を止めるしか残ってない。
「死ぬしか元に戻す事が出来ないなら、やる事は一つだろう?」
俺は、覚悟を決めた。
「ルイ! こいつは、死なないともう元に戻らない! 今からこいつの息の根を止める! 俺がアメノのクソジジイに、息の根を止められた時のこと覚えてるか!」
「え!? あっ、うん! 覚えてるよ!」
「「「は?」」」
「アメノ様……何してるんですか……」
ルイ以外の勇者達は驚き、ミレアさんが呆れている。
「今から、こいつの心臓を止める! 死んだら、身体が戻る! だが、こいつが俺と同じなら、魔力が抜け切る前に回復が出来る筈だ!」
「ふふ!『普通』じゃないね!」
「あぁ!『普通』こんなことしねぇよ! ハッハッハ!」
「ねぇ?笑う内容?」
「いや…正直内容だけ聞くと、ドン引きだけど?」
「ルイまで、笑ってる…」
「ルイ様…もうこちらには戻って来れないのですね…」
俺は心臓を一突きするべく、狙いを定めようとするが中々動きが速く、狙いが定まらない。
「ちょこまか動きやがって!」
そんな時に、アシェリから呼出がかかってきた。
「『ヤナだ! どうした!』」
「『アシェリです! 浜辺にキングクラーケンと更に瘴気纏い個体も同時に現れて、防衛側が持ちこたえらそうにありません!』」
「『くそ! 次から次へと!』」
「『あと、人魚のネミアさんですが、彼女が何か『見つけた!』と叫びながら何処かへ駆け出して行きました! エディスさんは、彼女を追いかけて行きました!』」
ネミアさんは何かを、『見つけた』らしい。彼女が短時間しか出来ない足を使ってまで、駆け出す何かとは何だ。
「『アシェリ! 今何処にいる!』」
「『ネミアさんに高い所はないかと聞かれて、浜辺の監視塔の一番上にいますが何か?』」
「『しまった! ここか!』」
ネミアさんは高台から、ここの場所を見て探していたのだろう。
「ヤナ君!」
その時、エディスさんの俺を呼ぶ大声がした。咄嗟にそちらを向くと、エディスさんの前をネミアさんがエドリックに向かって、走っていた。
「エド! もうやめてぇ!」
俺はネミアさんからエドリックを挟む形で反対側にいた為に、間に合わなかった。
ネミアさんが近づいて来ていることに気付き、エドリックは後ろを振り向いた。
そして、悲劇は起こった。
「グルアァアアア!」
「ごふっ……エド……もう……やめて……貴方は、あんな魔族になんかに……負けないで……」
エドリックの腕が、ネミアさんの胸を貫いた。
そして、ネミアさんの言葉をきき、エドリックは一瞬硬直した。そして、ネミアさんはその瞬間に、口から血を流しながらエドリックに口づけをした。
「……グ……グガァアアアア!」
エドリックの目からは涙が流れ、誰が聞いても心が締め付けような慟哭が、その場に響き渡った。
そして、みんながその悲劇の光景に心を痛めている中、そっと俺はエドリックに近づき背後から心臓を貫いた。。
「「「空気読め!?」」」
勇者達の失礼な発言はスルーして、ルイを呼ぶ。
「ルイ急げ! ネミアさんを回復だ! まだ魔力が残ってる! まだ、完全に死んでないぞ!」
「わかったよ!」
ルイが駆け寄ると同時に、エドリックの全身とネミアさんの貫かれた胸の傷を『神火の清め』で、瘴気を浄化する。
そして、心臓を貫いた瘴気纏いエドリックが徐々に元の身体に戻っていく。心臓を貫かれて、徐々に身体が死んでいく。
「……早く……早く……戻った! 今だ! ルイ! エドリックもだ!」
「任せてぇ! えぇえええいい!」
ルイの回復魔法によって、一足先に回復したネミアさんが、倒れているエドリックに抱きつく。
「エド! 目を覚まして! お願い……また私に、貴方の笑顔を見せて……」
ネミアさんが、エドリックに優しい口づけをした。
「……ん……ネ……ミア……? 何故ここに……」
「エド!」
ネミアさんがエドリックに、泣きながら再び抱きついた。
「普通逆だよな? 口づけで起こすのは」
俺は笑いながら、隣のルイに話しかける。
「まぁ、いいんじゃない? これも、ふふ」
ルイもつられて笑っていた。
すると、突然エドリックが大声で叫ぶ。
「そうだ! ゲッソは何処にいる!」
「ゲッソさんなら、瘴気纏いキングクラーケンの担当職員ですから、今は浜辺の前線で指揮をとっていると思いますよ?」
エディスさんが、エドリックさんに当たり前のことを告げた。
「あ……あいつは……魔族だ! 俺達の船を、あいつが大渦で大破させたんだ!」
全員が驚きと共に、浜辺の方向を見た時、ここからでも見える程の瘴気纏いキングクラーケンの巨大な身体が姿を現した。
シラユキがジト目で俺を見てくるが、抱きついているのはルイであって、俺ではないと声を大にして言いたい。
「ルイ? 治った……よな?」
「チッ……治ったよぉ」
ルイの何だか暗黒面を一瞬見た気がしたが、俺は全力で見なかった事にした。
「ルゥゥイィイイ! よかったぁああ!」
「ごふ!……喜ぶのはいいけどな? 俺ごと抱きつくな……苦しいわ」
「ヤナもよかったぁああ! あんたもあんなになって、死ぬかと思ったじゃないぃい!」
「「げふ!」」
俺とルイが、アリスに鯖折りをくらい悶絶していると、コウヤの叫びが聞こえた。
「こっちは、割と結構ピンチなんですけどぉおお!」
「「「忘れてた」」」
「酷い!?」
実際、結構コウヤは苦戦していた。既に瘴気纏いの怪物になってしまっているAランク冒険者のエドリックは、明らかに盗賊頭よりも強かった。地力の実力が高かった為に、瘴気纏いになった際も強くなるのかもしれない。
そして、その様子を見て俺もコウヤと共に、瘴気纏いエドリックを相手取った。
「くっ! 流石Aランク冒険者だなっと!」
「あぁ! 結構レベルも上げて強くなったと思ったんだけどっね! こいつは、一人じゃまだ無理!」
俺は、コウヤにエドリックの事を、掻い摘んで話した。コウヤは顔を歪めて、明らかに魔族に対する怒りとエドリックに対する同情で、感情が揺れていた。
「ヤナ! 元に戻す方法は、あるのかい!」
「生きてるうちに元に戻ったのは、一度だけアシェリが成功させている。ああなる前に、瘴気の腕輪を斬り落とすことだっと!」
「っと! 腕輪は……さっき自分で外して、壊してたよ!」
「俺が殺った瘴気纏いの怪物になっちまった盗賊頭と……同じだな! ぐっ!」
「殺ったって、人を…?」
コウヤが一瞬固まって、俺を見る。
「あぁ……同じ様に瘴気の腕輪を装備して怪物になった盗賊の頭をな。斬ったあと、元の人間に戻ったよ」
「そうか……」
「死んだら戻るらしい」
俺はネミアさんに頼まれていた事を、ずっと戦いながら考えていた。
『どっちにしろ救ってください』
殺すにしろ、腕を斬り落とすにしろという事だろう。
もう元に戻す手段は、息の根を止めるしか残ってない。
「死ぬしか元に戻す事が出来ないなら、やる事は一つだろう?」
俺は、覚悟を決めた。
「ルイ! こいつは、死なないともう元に戻らない! 今からこいつの息の根を止める! 俺がアメノのクソジジイに、息の根を止められた時のこと覚えてるか!」
「え!? あっ、うん! 覚えてるよ!」
「「「は?」」」
「アメノ様……何してるんですか……」
ルイ以外の勇者達は驚き、ミレアさんが呆れている。
「今から、こいつの心臓を止める! 死んだら、身体が戻る! だが、こいつが俺と同じなら、魔力が抜け切る前に回復が出来る筈だ!」
「ふふ!『普通』じゃないね!」
「あぁ!『普通』こんなことしねぇよ! ハッハッハ!」
「ねぇ?笑う内容?」
「いや…正直内容だけ聞くと、ドン引きだけど?」
「ルイまで、笑ってる…」
「ルイ様…もうこちらには戻って来れないのですね…」
俺は心臓を一突きするべく、狙いを定めようとするが中々動きが速く、狙いが定まらない。
「ちょこまか動きやがって!」
そんな時に、アシェリから呼出がかかってきた。
「『ヤナだ! どうした!』」
「『アシェリです! 浜辺にキングクラーケンと更に瘴気纏い個体も同時に現れて、防衛側が持ちこたえらそうにありません!』」
「『くそ! 次から次へと!』」
「『あと、人魚のネミアさんですが、彼女が何か『見つけた!』と叫びながら何処かへ駆け出して行きました! エディスさんは、彼女を追いかけて行きました!』」
ネミアさんは何かを、『見つけた』らしい。彼女が短時間しか出来ない足を使ってまで、駆け出す何かとは何だ。
「『アシェリ! 今何処にいる!』」
「『ネミアさんに高い所はないかと聞かれて、浜辺の監視塔の一番上にいますが何か?』」
「『しまった! ここか!』」
ネミアさんは高台から、ここの場所を見て探していたのだろう。
「ヤナ君!」
その時、エディスさんの俺を呼ぶ大声がした。咄嗟にそちらを向くと、エディスさんの前をネミアさんがエドリックに向かって、走っていた。
「エド! もうやめてぇ!」
俺はネミアさんからエドリックを挟む形で反対側にいた為に、間に合わなかった。
ネミアさんが近づいて来ていることに気付き、エドリックは後ろを振り向いた。
そして、悲劇は起こった。
「グルアァアアア!」
「ごふっ……エド……もう……やめて……貴方は、あんな魔族になんかに……負けないで……」
エドリックの腕が、ネミアさんの胸を貫いた。
そして、ネミアさんの言葉をきき、エドリックは一瞬硬直した。そして、ネミアさんはその瞬間に、口から血を流しながらエドリックに口づけをした。
「……グ……グガァアアアア!」
エドリックの目からは涙が流れ、誰が聞いても心が締め付けような慟哭が、その場に響き渡った。
そして、みんながその悲劇の光景に心を痛めている中、そっと俺はエドリックに近づき背後から心臓を貫いた。。
「「「空気読め!?」」」
勇者達の失礼な発言はスルーして、ルイを呼ぶ。
「ルイ急げ! ネミアさんを回復だ! まだ魔力が残ってる! まだ、完全に死んでないぞ!」
「わかったよ!」
ルイが駆け寄ると同時に、エドリックの全身とネミアさんの貫かれた胸の傷を『神火の清め』で、瘴気を浄化する。
そして、心臓を貫いた瘴気纏いエドリックが徐々に元の身体に戻っていく。心臓を貫かれて、徐々に身体が死んでいく。
「……早く……早く……戻った! 今だ! ルイ! エドリックもだ!」
「任せてぇ! えぇえええいい!」
ルイの回復魔法によって、一足先に回復したネミアさんが、倒れているエドリックに抱きつく。
「エド! 目を覚まして! お願い……また私に、貴方の笑顔を見せて……」
ネミアさんが、エドリックに優しい口づけをした。
「……ん……ネ……ミア……? 何故ここに……」
「エド!」
ネミアさんがエドリックに、泣きながら再び抱きついた。
「普通逆だよな? 口づけで起こすのは」
俺は笑いながら、隣のルイに話しかける。
「まぁ、いいんじゃない? これも、ふふ」
ルイもつられて笑っていた。
すると、突然エドリックが大声で叫ぶ。
「そうだ! ゲッソは何処にいる!」
「ゲッソさんなら、瘴気纏いキングクラーケンの担当職員ですから、今は浜辺の前線で指揮をとっていると思いますよ?」
エディスさんが、エドリックさんに当たり前のことを告げた。
「あ……あいつは……魔族だ! 俺達の船を、あいつが大渦で大破させたんだ!」
全員が驚きと共に、浜辺の方向を見た時、ここからでも見える程の瘴気纏いキングクラーケンの巨大な身体が姿を現した。
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