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序章

9 門出

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本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい


4/13 5:00   【別パート】

時は同日の早朝  

王都の東側城下町
王都内でもひと際目立つ神秘的な造りをした建物

『大聖堂』

ここは
祈る者
迷える者
救いを求める者
教えを乞う者

それらを寛大な心で導き救う、、と言うスタンスでは無く

民の集いの場であり子供達の憩いの場
相談役、及び王や貴族相手へのご意見番
軽い怪我の治療から揉め事の交渉
稀に騎士達に混って魔物の討伐までも担っている

住民達からの人望は厚く、王都にとって無くてはならない場所と言えるだろう


「シエル~起きなさ~い」

「シエル~たまには入口くらい掃除しなさ~い」


「シエル~」

大聖堂の主である神父ゼブラは一人娘を起こす為に声を上げる

年齢は不明だが見た目的にも還暦の60歳程度といった所
背丈の高さは無く160cm弱、白銀髪で人の良さそうな人相
恐らく王都内で最も好かれている人物であり、頼りにされている人物
勿論、王からの信頼も絶大で直々に命を受ける事もあるのだが

肝心の娘からの返答は無い

コンコン  コンコン

聖堂の入口から音がする

「おはようございます、ゼブラ様」

「ああ、シフか  今日も早いね ありがとう」

神父からシフと呼ばれたのはオレンジ色の髪が綺麗に外ハネしたくせ毛の青年
16歳の時から10年間シエルに使えている従者である

「シエル様は  あ~、いつものですかね?」

「いや、今日はお城に呼ばれていたから起きているとは思うんだけど」

「困りましたね、今更駄々っ子ですか? シエル様~!おはようございま~す、自分もう来ましたよ~」

「お~いシエルや、シフを待たせるんじゃないよ~ お~い」
二人は目的の部屋付近まで歩きながらわざとらしく声のボリュームを上げ

呼びかけ続けると


ガチャン!


ツカツカツカツカ


「おはよう 起きt?」

「シエル様おh!」

ゼブラ、シフの両みぞおちへと低身長からのアッパー気味のフックが決まった


「るっせぇんだよ!てめぇら」

ショートに整えられた銀髪 

「朝っぱらから何回呼んでんだ? なんだ?ニワトリか?」

エルフ顔負けの整った顔立ち

「王が呼んでるからってめんどくせぇ化粧してんだろうが? あ?」

大きく透けるような水色の瞳

「シエル様、、でしたら服装もキッチリして下さ、、あああああ」
従者の脛が小さなつま先でコンされる

「だから白いスカート履いてんだろが?よく見ろ? てめぇはさっさと飯作れ」

王都の大神官と呼ばれる神父ゼブラの一人娘

「シエル、白いスカートを履けば正装だと思うのはやめなさい」

「ぁ?クソジジイ、てめぇが用意したドレスなんて着れる訳ねぇだろが!?」

口がめっぽう悪く王都では有名な名物巫女と言われている

「お前も良い年なんだからドレスくらいは着れるようになりなさい」

「着付けの話じゃねぇっつの」

「はぁ、、あのドレスは国からの献上物だ 私が買った訳じゃないから」

「知ってる知ってる」

「高価な物なんだよ?  ほら!綺麗じゃないか?もったいない」
神父は部屋を覗き、飾られたシンプルな物を眺める

「はっ!痴女かよ」

「シエル、今日はお城に行くんだからちゃんとした格好向かわないといけないんだよ?」

「だ~から!綺麗な清純そうなの着てんだろうが!」

それほど高くない身長の神父だが重要な事なのだろう
「いい加減にしなさい!? 今日は大事な日なんです!」
軽く膝を折り、真剣な表情で目線を合わせる

「その子供扱いで目線合わせんのやめろ 殺すぞ?」

「うおお」
シエルの容赦無い目つぶしを咄嗟にかわす

「ちっ」

「あぶないあぶない、全く何が気に入らないのか、難しい年頃なのかな?  出来る限りで良いから教えてくれないか? それと舌打ちは止めなさい?」

「   はぁ」



・・・



・・・



・・・



「サイズがあわね~んだろがああああ!」


巫女は一頻(ひとしき)り暴れまわると聖堂の入口に向かい
情報共有用の掲示物が貼られた立札へ雑に書き示す


『神父は本日体調不良によりお休みです』





身長 151cm(自称)


年齢 35歳


犯罪級の合法ロリである







4/13 5:20

「シエル様、来る時に卵を頂いて来ましたので、これで」

目玉焼きが2つ乗っただけの朝食

「ん    美味い美味い」
それをフォークで切り分け、白身を黄身に付けてから頬張る

「恐らく本日の説明、重要点については大臣のフォメット様がお話すると思うのですが~ シエル様、、」

むぐむぐ むぐむぐ

「 んだよ?」

「キレ散らかさないで下さいね?」
従者は湯を沸かしながら巫女の方向を見ずに答える

むぐむぐ

「なんかあんのか?」

コトン

「聞く話によると結構な曲者っぽいんですよね~」
食後の安物コーヒーをシエルの前へ置く

「はっ、場くらい弁(わきま)えるっつの」

「エーーー本当に本当ですよ?」

もう10年来の付き合いの仲
シフはシエルの口の悪さ、横暴な態度で唯一辞めなかった見所のある男だ
忠告くらいは一応頭の隅にでも留めておこう

、、くらいは考えてくれていると思いながら
「もうすぐ迎えが来ると思いますのでそろそろ出ますよ?」
従者は洗い物を済ませてからテキパキと身支度をする

「はぁ、天下無敵の巫女様呼びつけてるくせに早朝とはな  はえぇつの クソ」

「いや、世間の巫女様って普通朝早いんじゃないですかね? イメージですけど」

「めんどくせ」

「外套は俺が持って行くので先出てて下さい」

「はいはい」



(なんとなく用件はもう想像付いてんだよな)



外へ出ると通りには
「お待ちしておりました、巫女様」
人目が付く様な装飾が満遍(まんべん)に散りばめられた馬車が既に止まっており
使いの者が3人整列している

(移動手段に無駄遣いとか むしり取るぞ?人件費の無駄遣いが)

「ん、はいはい 早くからご苦労さん」
不愛想という程でも無いがにこりともせず、早々に豪華な馬車へと乗り込む

「お忘れ物はございませんでしょうか?問題無ければ出発致しますが?」

「あぁ!待って下さ~い 自分も乗りますので~」
小さいのが乗り込む姿が見えたのだろう、荷物を抱えた従者が駆けて来る


「  閉めて良いぞ」


若干の間はあったものの、その一言で躊躇無く閉じるドア
「待って!初対面の人達にそういうノリは分からないからやm」
をギリギリで手を伸ばし止めたのだが
「な˝っ!ちょっ 痛い、挟んでる、痛い痛い!挟んでるから!」
一回『しっかり』と閉まったからこそ

内側からの悪意を感じざるを得ない

「嘘嘘、乗せてやって」

軽口が聞こえ、再び扉が開いたので

「いやいや、嘘じゃなかった!嘘じゃなかったですよ~」
挟まれた手を擦りながら乗り込んだ

「ほらぁ、周りの方々も困惑してますから~」

「ん、はいはい」
適当な返事をする巫女は不貞腐れた様に窓の外へと目を移す





(八つ当たりでもしなきゃやってられるかよ)





城へは馬車で15分程
途中関所を通ってから10分
門をくぐり
部屋へ通され10分


「関所から10分とかなんだよクソが、なげぇっつの」
(やっと着いたわね)
シエルはキリっとした表情で見事な悪態を吐く

「あの、、多分じゃなくても思ってる事と言ってる事が逆になってませんか?」
従者は鏡越しに巫女を見てから再び着ている軽装に装飾を施し始める

「ここまで時間無駄にして、、なんで手紙だけで済ませらんねぇんだろうなぁ?」

「もう、ここまで来てるんですから今更ぶ~垂れないでくださいよ~」
フォーマルに見えなくも無い上着を一旦羽織らせ、バランスを見てから小さなコサージュを細い腰元に当て
「うん、こんな感じですね オッケーです」
応接間での仕上げを終える

「ん、あぁ世界一可愛いシエル様の完成か」

「   アァ、エェ ソウデスネ」
(本当に見た目が可愛らしいので反論出来ないけど何でそういう事言えちゃうかな~)


そして


やっとの事で大広間へと通された

「、、広間まで10分歩くとか無いよな?」

「しっ! もう騎士様達がいらっしゃるので謹んで下さい」

「は~~~い」
シエルは逆撫でする様な返事で返す

「はぁ~ お願いしますよ~?」




こういった感じで

従者の苦労は続く
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