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ファートドラゴンと戦え!
一日目 ファートドラゴン現る!
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おならを英語にすると「Fart」で、読みはファートである。
沼津平成が引っ張り出してきたメモに、これが異常に臭いドラゴンと、若い青年が旅をする話がある。青年は大人に疲れて、世界に溺れてやつと手を組んだのである。
「これは、面白いぞ」と思った。
なんで今までかなかったんだろう。
というわけでこれを、今回この連作短編集の第一話にすると決まった。
社長はいった。「また佐藤くんは遅刻かね。去年までは遅刻した超過時間の統計ランキングは天野くんが一位だったんだけれどそれを上回るんだから大したもんだよね。しかもぶっちぎりで毎月二百分も三百分も差を離してる。これはもはや偉業としかいえないよ」
社長はそこで煙草から口を離した。愛用のセブンスターを、青いバケツに入れた。
線香花火のように淡く音を立てて、それから徐々に、姿を消していった。
どれだけの時が経ったろう。
老舗の吊り会社、典型的なブラック企業である竹本達也社長のかずすくない社員毎月三百四十分も遅刻とは、世も末なもんである。
竹本社長はこういうわけでいつも暇だ。その暇をほとんどは佐藤の意地悪に費やしている。
だからいつもよりかは佐藤の意地悪が短かった。
秘書の今田太郎が安堵のため息をついて下を向きかけたとき、ドンと大きな音がした。
本能的に振り向くと、竹本社長はいつになく憤慨していた。
「わからん! 今日、わしは、佐藤くんの家を訪ねてこよう」
竹本社長がずかずかと社屋を出ていくと、今田太郎氏はカラオケに駆け込んだ。
「わからん! といっている竹本社長は私はわからん! だよ。よし今日は尾崎豊でも歌って暇を潰そう」
今田の唯一の特技、それは歌だった。もしその歌を大手レコード会社のお偉いさんが聞いたら、
「なんでこんな才能を今まで私たちはほっといたんだ! 今すぐデビューさせよう」
と興奮したに違いない。
こうして会社の金を使い込んで作った一時間の休憩タイムが始まった。思ったより短かったように、彼には思えた。
*
そのころ竹本社長は非常にすっきりしていた。
顔を赤くした佐藤の母が竹本に頭をたれている。もともと佐藤一家は人なりには成功していて、一軒家に住んでいた。
しかし、次男の遥希が、とてつもない寝不足だったのである。
それが判明したのは遥希が六歳の時であった。
午後六時就寝、午前十時起床。人並み、いや人の何倍も睡眠時間はとってあるのに。
さすがに小学校に上がると、と思いそのリズムをなおすと急に寝不足になったのだ。
沼津平成が引っ張り出してきたメモに、これが異常に臭いドラゴンと、若い青年が旅をする話がある。青年は大人に疲れて、世界に溺れてやつと手を組んだのである。
「これは、面白いぞ」と思った。
なんで今までかなかったんだろう。
というわけでこれを、今回この連作短編集の第一話にすると決まった。
社長はいった。「また佐藤くんは遅刻かね。去年までは遅刻した超過時間の統計ランキングは天野くんが一位だったんだけれどそれを上回るんだから大したもんだよね。しかもぶっちぎりで毎月二百分も三百分も差を離してる。これはもはや偉業としかいえないよ」
社長はそこで煙草から口を離した。愛用のセブンスターを、青いバケツに入れた。
線香花火のように淡く音を立てて、それから徐々に、姿を消していった。
どれだけの時が経ったろう。
老舗の吊り会社、典型的なブラック企業である竹本達也社長のかずすくない社員毎月三百四十分も遅刻とは、世も末なもんである。
竹本社長はこういうわけでいつも暇だ。その暇をほとんどは佐藤の意地悪に費やしている。
だからいつもよりかは佐藤の意地悪が短かった。
秘書の今田太郎が安堵のため息をついて下を向きかけたとき、ドンと大きな音がした。
本能的に振り向くと、竹本社長はいつになく憤慨していた。
「わからん! 今日、わしは、佐藤くんの家を訪ねてこよう」
竹本社長がずかずかと社屋を出ていくと、今田太郎氏はカラオケに駆け込んだ。
「わからん! といっている竹本社長は私はわからん! だよ。よし今日は尾崎豊でも歌って暇を潰そう」
今田の唯一の特技、それは歌だった。もしその歌を大手レコード会社のお偉いさんが聞いたら、
「なんでこんな才能を今まで私たちはほっといたんだ! 今すぐデビューさせよう」
と興奮したに違いない。
こうして会社の金を使い込んで作った一時間の休憩タイムが始まった。思ったより短かったように、彼には思えた。
*
そのころ竹本社長は非常にすっきりしていた。
顔を赤くした佐藤の母が竹本に頭をたれている。もともと佐藤一家は人なりには成功していて、一軒家に住んでいた。
しかし、次男の遥希が、とてつもない寝不足だったのである。
それが判明したのは遥希が六歳の時であった。
午後六時就寝、午前十時起床。人並み、いや人の何倍も睡眠時間はとってあるのに。
さすがに小学校に上がると、と思いそのリズムをなおすと急に寝不足になったのだ。
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