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83話 共闘

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 ギールスがほぼ無傷でいる事に対して、

「先陣切っておいて大した戦果も挙げられねぇのかよ」
「うるせぇ。戦ってみりゃあいつの厄介さが分かるぞ」
「そうかよ」

 構えるリュウガ。

(死の気配を常に纏っていやがるな。どんなに速く攻撃してもその攻撃を殺されちゃ意味ないな。そりゃ厄介って言う訳だ)

 ギールスが纏う死の気配を視て龍帝の言葉の意味を理解する。それでも、

(俺ならギールスをぶった斬れる)

 出会い頭の死双閃により右腕を斬り落とす事に成功している。しかし、それは死双閃の特性のおかげでしかない。雷速の二連撃による一撃目で死の気配を斬りギールスの守りをなくした所で二撃で本体に攻撃を届かせる。これによりリュウガはギールスの右腕を斬り落とした。だがそれはつまり、死双閃でなければギールスには攻撃が届かないということだ。ギールスが纏う死の気配を排除してもすぐに新しく死の気配を纏っている。普通に死の気配を排除してからの攻撃では死の気配を新たに纏う速度に勝てないために攻撃は届かないのだ。おまけに、

「回復するのか」

 ギールスは斬り落とされた事により失くした右腕を既に修復していた。本当なら先程の攻撃で決着を付けてしまいたかったがそんなに甘い相手ではない事は分かっていた。それでも相手の手数を減らせば有利になるので右腕を斬り落としたのは悪くなかったが治されてしまった。

「俺を殺すなら一撃で脳か心臓を破壊する事だな。手足は勿論臓器も魔力さえあれば修復は可能だ」
「説明ありがとよっ!!」

 斬りかかるリュウガであるが、

「お前の能力は俺を殺す可能性を秘めているがそれ以外の身体能力スペックは恐れるに足らんな」
「なっ!?」

 空間転移により背後を取られるリュウガ。反応して振り返ろうとするも、

「終わりだな」

 死そのものであるギールスの右手が背中に触れる。

(ヤベェ!!)

 触れられた瞬間にゾクッ!! っと悪寒が駆け巡り離れる。

(はぁ、はぁ、離れるのが後少しでも遅かったらヤバかったんじゃねぇか)

 内心冷や汗ダラダラどころか嫌な汗が体からドッと流れる。そんなリュウガを見てギールスは、

(何故死なない?)

 心臓に近い位置に触れたのだから龍帝の時とは違い即死のはずであったがリュウガは何故か無事で疑問に思う。しかし、すぐに気づく。

(そうか。奴は死の気配を視る目を持っている。多少は耐性を持っているという事か)

 と納得する。

(しかし、あの様子を見るに完全耐性という訳ではないな。即死しないだけであって死にはするのだろうな)

 ニヤリと笑う。

「少し驚いたが耐性があるならその耐性を超えれば良いだけの話だな」

 右手を突き出して死の気配を解き放つ。範囲、速度共に避けるのは厳しいと判断してリュウガは斬る事で攻撃を回避するがそれが隙となる。

(今度は触れるのではなく掴んでしまえばそれで終わりだ)

 触れるだけだと逃げられるために掴む事を選んだギールス。攻撃を捌くためにリュウガは空間転移で背後を取ったギールスに気づいていない。そのままリュウガは頭を掴まれてしまうかに見えたが、

『豪雷一閃』

 雷速の一閃がギールスを襲う。

「ぐっ、おおおお!!!!」

 初めての悲鳴がギールスから発せられる。

「リュウガを殺す事に躍起になってオレ様から目を離すとは冥府の王は戦闘経験がないと見えるな」

 ニヤニヤと笑いながら龍帝が言う。初めてダメージを与えた時よりも大ダメージを与えられたのはギールスがリュウガに意識を向けていたのもあるがギールスに攻撃を通す方法をより強固なものにしたのもある。

(空間ごと相手を雷撃で焼く。これなら死の気配関係なくギールスに雷撃が通るな)

 空間ごと雷撃で焼くという至難の技で龍帝はギールスに攻撃を通す事に成功していた。

「俺に攻撃を通したのは見事だがまだ完璧じゃないな?」

 雷撃によるダメージも修復させてギールスは龍帝に問いかける。龍帝はそれについて答えない。しかし、実際その指摘は正しい。今までやったことのない技の使用は魔力の使用も大きい上にまだまだ攻撃のクオリティが低い。豪雷一閃は雷速の斬撃で相手を焼き斬るのだがギールスに直撃させたにも関わらず両断する事が出来なかった。

(質は上がってきている。だが雷神竜モードを維持しないといけねぇが魔力量の心配が出てきたな)

 空間ごと相手を攻撃するのには雷神龍モードでなければならないのだがこのモードを維持するのには莫大な魔力を有するのだ。おまけに空間ごと相手を攻撃する技自体も魔力消費が激しいのだ。このままでは厳しいのが現状であるのだがそれを表情に出す訳にはいかないのだ。しかし、何も手がない訳ではない。

(気は乗らねぇがな)

 気は乗らないが負けるよりはマシだと考え龍帝はリュウガの隣へと移動する。

「何だよ?」
「神の力を借りて勝つのとオレ様と協力して勝つならどっちがマシだ?」
「お前と協力するのが何億倍もマシだね」
「だろうな。合わせてやる。お前は死の気配をギールスから剥がせ。その後はオレ様がやる」
「分かった。しくじるなよ」
「誰に言ってんだ。任せておけ」
「話は纏まったか?」

 2人の会話を止めずにいたギールスは会話が終わると同時に攻撃を仕掛ける。その攻撃をリュウガは捌くとそのままギールスの防御を剥がす。その瞬間に龍帝が攻撃を叩き込む。

「ぐっ!!」

 ギールスから苦悶の声が上がる。

(ここまで来るのに一切の協力をしなかった奴らのくせに何でこうも息が合うんだよ!!)

 ギールスはリュウガと龍帝が一層、二層、三層の自分の所に来るまで協力しているのを見てない。せいぜいが二層から三層に来るためにリュウガの力を頼った程度だ。一回殺し合いをしているのだ。仲が悪くて当然。そもそも力量を考えれば当然とはいえ仲が悪い2人を送り込むのは不自然だったがここまで息が合うなら納得する。リュウガが死の気配による防御を剥がして龍帝がギールスを攻撃する。2段階の工程があり無駄が多いのだが雷速で攻撃が出来る龍帝は防御が剥がれた瞬間には攻撃を当てて来る。おまけに雷による感電により動けなくなるとリュウガも防御を剥がすだけでなく攻撃してくる。

(フルールドリスが来るまではを出す気はなかったんだがな)

 ギールスから死の気配が噴出する。それもかなりの量だ。

「この!!」

 自分たちを襲う死の気配を斬り払うリュウガであったが、

「今まで本気じゃなかったのかよ!!」

 今まではギールスから放たれていた死の気配であったが地面からも噴き出してきたのだ。

(冥府はギールスの庭である以上自由に出来るのも道理だな)

 本気になったギールスによる死の気配にリュウガたちは覆われてそのまま死ぬかに思えたが、

「ようやく来たな」

 リュウガたちを覆う死の気配を打ち消したのは、

「お久しぶりですね」

 グレーストと共に現れたフルールドリスであった。

「久しぶりだな。そしてだ」

 ギールスとの死闘も決着が近い。
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