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75話 龍帝vs風翔龍

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 5年後に控える神との戦いに備えて龍帝カンムルは戦力増強のために名持ちの龍の1人である風翔龍テンペストの下へと向かって行った。

「オレ様としては両方に会いに行ってもいいのに翁め」

 龍帝としては風翔龍テンペストだけでなく金剛龍テンガンにも会ってみたかったが、

「たまには運動しないと神と戦う時に動けんからのう」

 と言うので翁には金剛龍の方を任せたのだ。

「まぁ、引きこもり同士意気投合するだろ」

 と悪態を吐きながら雷速で移動して着いたのは風翔龍の住処である常に風が吹き荒れるハリケン渓谷だ。

「相変わらずうざったい風だな」

 小さく呟く。

「だったら来んなよ」

 ボサボサのグレー髪の優男が龍帝の真上に現れた。この男が風翔龍テンペストだ。

「色々と事情があるんだよ。簡単に説明するが神との戦いがあるから戦力がいる。お前も手を貸せ」
「へぇ? 面白い冗談だ。神との戦いとか胡散臭ぇな」
「信じる信じないはどうでもいいが手を貸せ。お前みたいな奴でも戦力は多いに越した事がないんだよ」
「断ったら?」
「半殺しにする」

 バチバチ!! と雷が龍帝から漏れ出る。

「最近人間に負けた雑魚がいるらしいぜ」

 その言葉を言った瞬間に雷が風翔龍を襲う。

「だったらその雑魚に負けるお前はゴミだな」
「負ける理由も道理もないな」

 背後に回り風を纏った手刀で首を狙った攻撃を龍帝は前を向いたまま片手で捕まえる。

「負ける理由は簡単だ。お前が弱いからだ」

 風翔龍を掴んだまま最大威力の雷撃を自分ごと叩き込んだ。脱出したい風翔龍であるが龍帝は決してそれを許さない。

「このまま灰になるまで雷を落とし続けてやるよ」

 戦力として引き入れる風翔龍を殺そうとする龍帝。

(この程度で死ぬならいらねぇ。このまま何も出来ねぇなら殺してやるよ)

 元々自分1人でも充分だと思ってる龍帝。それでも戦力の増強のために動いているのは大神ゼーリオ以外の神の邪魔が入らないようにするための露払いが必要だからだ。しかし、それは最悪、自分と龍神の末裔であるリュウガがいれば何の問題もないと思っている。それ思うぐらいには龍帝はリュウガの実力を買っているのだ。そんな龍帝の一撃を喰らっている風翔龍は、

「流石は龍神に最も近い龍だけあるな」

 そう言ってほくそ笑む。

(この気配は!?)

 龍帝は瞬時に距離を取る。

「何だぁ? ビビったか?」
「テメェ、その気配は神に近いな。いつからその領域に踏み込んだ」
「お前が覇龍を殺した時だよ。お前に出来るなら俺にも出来るに決まってんだろ。そもそも龍皇、龍帝、覇龍の称号なんてものはすぐに手に入るつまんねぇものだから挑戦しなかっただけなんだよ。格上を気取っているようだがお前と俺は同格・・・・いや、俺のが上なんだよ」

 その言葉に呆れてしまう龍帝。

「ハッ! 神の領域に踏み込んでいる事は確かに凄いがオレ様のが強い。何せオレ様は龍神に認められているからな!」

 龍帝は体を雷へと変換して神の気配を漂わせ始める。

『モード雷神龍』

 となり龍帝は雷速で風翔龍に襲いかかる。反応出来ずにそのまま猛攻を喰らい続けるなんて事はなく風翔龍はえげつない速度の風を纏う事でその攻撃を弾く。それどころか雷そのものである龍帝に傷をつけた。

「隙だらけだな」

 ほんの一瞬であった隙を風翔龍は見逃したりせずに攻撃を仕掛けて龍帝の首に傷をつけた。

(神の気配・・・・つまりは神の力を行使してるようなもんだから雷という現象であっても攻撃が当たる訳か)

 首に決して軽傷とはいえない傷があるも冷静に分析する。

(まぁ向こうもオレ様と同じで風そのものになれたとしてもオレ様の攻撃を喰らう。結局はどっちの魔力が多く身体能力が高いかって勝負か)

 正直言って龍帝は自分が負ける事など考えていない。風翔龍が神の領域に足を踏み入れていたことには確かに驚いたがそれだけだ。

(実戦から遠ざかってるだけの引きこもりがオレ様より強い訳ねぇ!)

 極太の雷を風魔龍目掛けて落とす。しかし、

(避けるか。まぁ、雷には電荷誘導ストリーマーがあるからな実力がある奴らにはわかってる攻撃だからな。実際にリュウガも避けてるし。風魔龍が避けれるのは道理だな)

 自分の攻撃を避けられているにも関わらず余裕がある。

(向こうの攻撃速度はオレ様よりも遅いから当たる訳がねぇしやっぱり負ける事はねぇな)

 何度考えても龍帝は自分の勝利を疑う事がなかった。そんな龍帝の余裕さが気に食わない風翔龍は、

「その余裕がいつまで続くかな!」

 竜巻が発生してその中心に龍帝は巻き込まれるが瞬時に脱出する。だかそんな事は風翔龍も予測済みであった。というよりも雷速で動く龍帝の動きを制限するために竜巻を発生させたのだ。

(どんなに速く動いても制限されたら捉えられる!)

 名持ちの龍であっても斬り落とすほどの風を纏った手刀。竜巻に気を取らせてからの背後からの奇襲は完璧であった。

(あばよ!!)
 
 殺意を込めた手刀であるがそれを龍帝は難なく避ける。

「さよならだ!!」

 龍帝は手を雷刀へと変化させて抜刀術の構えを取って風翔龍の真下にいた。

『豪雷一閃』

 龍帝最強の一撃が風翔龍を襲う。その一撃により渓谷に吹き荒れる竜巻が消し飛んでただの渓谷となるのであった。それだけ強力な一撃であったが、

「死にかけだな。ざまぁみろってんだ」

 龍帝の言う通り風翔龍は死にかけのボロボロであった。

「何だぁ?! 今の技は。電荷誘導ストリーマーがなかったぞ」
「常時雷となっている俺の雷刀による攻撃だから電荷誘導が発生しないんだよ。そもそも今のオレ様は電荷誘導を発生させずに移動出来るんだよ」
「さっきは発生してただろうが」

 風翔龍が言うように先程龍帝が移動した際は電荷誘導が発生していた。

「さっきのはわざとだよ。オレ様の移動、攻撃には必ず電荷誘導が発生すると思えばお前は油断するだろう? 実際お前は避けられなかったしな」

 ようは龍帝の掌の上だったという訳である。

「それじゃあオレ様の勝ちだからお前にはゼーリオクラス以外のザコ神の相手をしてもらうぜ」
「わかったよ。負けたいじょうは言う事を聞いてやるよ」

 こうして風翔龍の協力を得ることに成功するのであった。
 
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